インタビュー
マニュライフ生命保険株式会社
スマートデザイン共創部(インタビュー当時)
部長 江野澤 和夫 氏(中央)
原田 砥甫 氏(左)
奥 宗人 氏(右)

動画「ナゼ?ナニ?ガイカ」とは

― 映像での「伝わるデザイン」認証取得第1号おめでとうございます。まずは認証取得した動画について教えてください。

江野澤:「ナゼ?ナニ?ガイカ」という動画は、全6本のシリーズになっています。映像認証を取得したのは、そのうちの1本、「外貨建保険って、良いの?悪いの?」というもので、初めて外貨建保険を検討する方を対象に、特徴を4つのポイントに絞って伝えています。

私たちの思いが伝わっているかを知りたかった

― なぜ今回、認証取得を考えたのですか。

江野澤:私たちはお客さまにわかりやすく情報を伝える手段として、動画を活用しています。これまで、動画コンテンツのわかりやすさを追求してきましたが、私たちがよいと思っているものがきちんとお客さまに伝わっているかどうか、検証が必要だという思いがあり、以前から、「動画にもわかりやすさの基準が欲しい」とUCDA様に相談をしていました。そうしたところ、2019年4月に映像認証制度が開始されたということで、真っ先にお願いしたわけです。
奥:お客さまアンケートを行っても、実際に内容が伝わっているのか、わかりやすく情報を届けられているのか確信が持てませんでした。そこで評価・認証していただくことで、判断ができるのではないかと思い、申請しました。

― 動画を改善する過程で大変だったこと、工夫したことはありますか。

原田:今回、外貨建保険のメリットとリスクをフラットに、可能な限り同じトーンでお伝えするという目標がありました。それは、リスクばかりを強調しすぎると、お客さまが尻込みしてしまい、検討すらしていただけないからです。重要なのは、お客さまが正しく判断できるよう分かりやすく情報提供することです。
ですが評価の中では、リスクがリスクに見えない、きちんと注意喚起すべきだという指摘がありました。私たちの伝えたいことと受け止める側のギャップを埋めるのに苦労しました。
江野澤:UCDA認証の基準は高く、簡単には達成できないというのが実感です。何度も指摘を受け、修正や調整に3ヶ月、トータルすると半年ほどかけ完成しました。
奥:今回、専門家や生活者から多くの指摘をいただきました。それだけ価値のある認証だと思います。改善過程でノウハウが身につきましたし、知見も広がったので、非常に意味のある時間でした。
江野澤:時間といえば、動画は紙媒体と違って「時間軸」があります。見ていただく時間の中で与えられる情報は限られています。伝えるべきことを選択して、テロップやアニメーション、イラストの使い方を細部まで配慮することが大変でした。

― 確かに、最初の動画と最終版では、見た瞬間にわかりやすくなったという感覚がありますね。いろいろとご苦労が伝わってきました。

原田:もともと外貨建保険を説明するコンテンツという位置付けですが、いちばん大切なのはお客さまに聞く姿勢になっていただくことです。興味がないのに一方的に伝えようとすれば拒絶されます。そこで、そもそも「外貨建保険って何?」という根本のところから始めて、まずはお客さまに関心を持っていただこうと考えました。

全社一丸で「わかりやすさ」に取り組む

― セットになる冊子も、「見やすいデザイン」を取得されていますね。今回UCDAアワード2019でも「生活者のタスクを支援する動画と帳票のコミュニケーションデザイン」でアワードを受賞しています。

江野澤:私たちは2015年から5年連続で何らかの賞をいただいてきましたが、今回初めて最優秀賞にあたるアワードをいただきました。前回、帳票の2つのカテゴリーで「情報のわかりやすさ賞」をいただいて、来年はアワードをと大きな期待を受けました。結果として受賞でき、肩の荷が下りた思いです。と同時に、次回に向けてさらに大きなプレッシャーをいただいたとも思っています。
なぜアワードに参加するのかというと、1つは私たちが作成している帳票やパンフレットがお客さまにきちんと伝わっているのかを検証する機会が欲しいからです。アワードでは専門家や生活者の客観的な評価を、レポートにしていただけることに非常に価値を感じています。もう1つは、他社の取り組みを身近に感じることに価値があります。客観的に他社と比較してもらうことで、私たちの取り組みは遅れていないかを確認することができます。

― アワード参加以外には、どんなことに取り組んでいらっしゃいますか。

江野澤:社内の職員にもアワード受賞を知らせ、わかりやすさへの取り組みを浸透させていきたいという思いから、社内イベントなども実施しています。2019年で3回目になり、今年初めてUCDA様にも展示で参加していただきました。
原田:社内に“わかりやすさ”を文化として定着させたいと思い、これまで開催してきました。回を重ねるごとに、様々な部門から参加者が増えており、少しずつわかりやすさが浸透してきているのかなと実感しています。


社内イベントの様子

― 印刷物や動画の制作体制について教えてください。

江野澤:私たちは何かわかりやすいものを作ろうと思ったとき、1つの部署だけで完結するということをしません。作成する部署、審査する部署、そして私たちのようなわかりやすさを推進する部署が、クロスファンクショナルな形で意見を交わしながらお客さまに伝わるわかりやすいものを作っていこうという体制ができています。私たちのチームにも、それぞれ役割があって、外部に注文して何かを作ってもらうだけではなく、それぞれのスキルを持ち合わせてプロトタイプを作り、社内ですぐに見直すことを行っています。
奥:広げるという意味では、今年UCDの社内研修を行いました。そこに集まったメンバーの中には、日頃制作に関わっていない者もいます。今後も多くの社員がUCDに触れる機会を設けていきたいと思っています。

― 同じゴールに向かって全社一丸という姿勢、そういう取り組みの集大成がアワードや認証取得に反映されているのですね。アワード受賞、認証取得に対して、社内でも反響はありましたか。

奥:パンフレットなどの募集資料の作成担当者が、「認証を取る以前のものはもうわかりにくくて見られない」と言っていました。UCDへの理解と関心の高まりの表れであり、わかりやすさへの思いを共有してくれているのが嬉しかったですね。
江野澤:営業担当者がエンドユーザーであるお客さまに見せて反応を聞き、それを私たちが次に生かしていくことが次の段階だと思っています。

「わかりやすさに終わりはない」が取り組みの中心にある

― 今後のわかりやすさへの取組目標をお聞かせいただけますか。

江野澤:マニュライフがグローバル全体でかかげているミッションとして、「あなたの未来に、わかりやすさを。」というのがあります。お客さまのニーズを第一に考えて、シンプルにわかりやすく説明することで、お客さまが簡単に明確な判断ができ、よりよい人生を送れるようお手伝いするということです。お客さまがストレスを感じることなく、正確に理解していただくための情報をしっかり提供していくことが、私たちの役割だと思っています。「わかりやすさに終わりはない」とUCDA理事の方がおっしゃっていましたが、それが私たちの取り組みの中心にあります。社内が一丸となって、上からも下からもわかりやすさについて考えていこうという枠組みができつつあります。

― 監督省庁や業界団体ではなく、「マニュライフ生命という会社が解説動画を作ったこと」にものすごく意義があると思います。商品を売ろうとしているのではなく、これから外貨建保険を考えようという人たちに対して、親切丁寧に伝えていく。貴社の中で、UCDという考え方を浸透させていきながら、よい企業ブランド作りの1つとして活用していただければ嬉しいです。

奥:保険というのは形がないので、形があるものによっていかにお客さまに安心していただけるかが非常に重要です。わかりやすさへの取り組みを通して、お客さまの信頼を深めていきたいと願っています。

― 本日はありがとうございました。