UCDAアワードは2009年に、設立間もないUCDAが、生命保険の「ご契約内容のお知らせ」を事前の公表なしに内容の「わかりやすさ」について評価、発表したことから始まります。
そして、2010年にUCDAアワードとしてスタートし、今年で10回目を迎えます。
今回、実行委員長の在間稔允(UCDA理事長)と、副委員長の内藤純一氏(元 金融庁 総務企画局長)がUCDAアワードの歩みや金融業界と「わかりやすさ」の課題について対談いたしました。

UCDAアワードのきっかけは生命保険業界

― 「ご契約内容のお知らせ」は毎年7000万件以上が生命保険契約者に送付される非常に重要な通知物です。
いままでこのような通知物を「わかりやすさ」の専門家と生活者が評価をしたことがなかったということ、第三者評価機関が突然発表したということで、生命保険業界では大きな反響をよびました。
その翌年、21社の生命保険会社のエントリーによって、UCDAアワード2010がスタートしました。

内藤:当時、生命保険・損害保険業界は保険金不払い問題を経て、お客様に契約内容を「わかりやすく」伝えることを模索していました。
同じ目的の対象物を「わかりやすさ」の基準で個別に評価をして表彰する制度はありませんでしたし、評価結果をもとに改善を促すことを目的としたUCDAアワードは、他の表彰制度と違っていましたね。

― この10年間で、保険会社への苦情件数は、確実に減っていますが、金融商品全体で見るとそれほど減ってはいません。内藤さんには、UCDAアワード2011で「契約者保護と金融行政」というタイトルで基調講演をしていただきましたが、当時を振り返ってみていかがですか。

2007年に金融商品取引法が施行され、金融商品を販売する機関は顧客に対して説明責任を果たすように定められました。この事態を金融機関は重く受止めて、免責のために一から十まで説明をするようになり、顧客が2時間以上も説明を受けるなどというケースが出てきた。これではリスクの免責が目的で、金融機関本位であり顧客本位ではないと不満が噴出しました。

また、金融機関は、複雑な商品ほど利益が大きいから売りたい。するとパンフレットや目論見書も複雑な内容になる。
そんな時にUCDAが「わかりやすく」情報を伝えようと言い出しました。

「わかりやすさ」の波及は金融業界へ

― 当時の金融商品は、FXに代表されるような為替のデリバティブ商品が主役でした。一般の人たちには複雑でわかりにくい商品のため、苦情が殺到しました。現在は、外貨建て一時払い保険の苦情件数が増えています。

金融庁は「顧客本位の業務運営」の中で、「重要な情報のわかりやすい提供」と言っています。これを言い換えれば、「わかりやすく」説明できる商品を開発すればいいということになります。
最近では、一般の人たちに「わかりやすい」商品が出てきました。「積み立てNISA」や「iDeCo」で、長期積み立て分散投資というものです。

― 低金利や年金問題で老後に不安を持つ人が増えています。
金融業界においても、ビジネスモデルの変化や顧客の変化にいかに対応していくかが問われていますね。

金融業界の中でも、情報のユニバーサルデザイン化が遅れている分野がまだまだ多いと思います。
顧客本位の業務運営においては、情報を「わかりやすく」説明することが大切です。
パンフレットや帳票などを「わかりやすく」することはもちろんですが、契約者への教育も、業界や個社で取り組んでいくべきだと思います。

これからの10年も、「わかりやすさ」をアプローチする

UCDAが「わかりやすさ」についてアプローチし続けることで、UCDに取り組む企業が増えていくでしょう。みんながUCDに取り組めば、販売する商品自体が「わかりやすく」なってくる。資産運用に詳しくない人にも「わかりやすい」商品が最近増えてきているのは、UCDAの活動が少しずつ浸透しているのではないかと思います。

― その他にも、共済、食品、通信、資源エネルギー、医薬など生命・財産に関わる重要な情報を扱っている業界もこれからです。UCD化に取り組んで損はない、むしろ得をすることが多いので、ぜひ取り組んで欲しいと思います。

これからもアワードは続きます。社会環境の変化、顧客の変化の中で、生活者の視点に立った「わかりやすさ」は重要です。今年は10周年ということで、会場は新たに神田明神ホールに移ります。UCDAも新たな気持ちでこれからの10年に臨みたいと思います。

本日はどうもありがとうございました。