「第三者」による客観的な評価

21:長谷部剛-2

デジタルの良さ、紙の良さ

写真福田:先日、電車に乗って日経新聞を読んでいたら、隣に座った男性が、iPadで日経の電子版を読んでいるわけですよ。時代が変わったなと思いました。今は電車で週刊誌を読む人の姿は少なくなり、皆、携帯電話をさわっていますよね。これからの情報伝達はどうなるとお思いですか。
長谷部:実際、うちの電子版の契約数は伸びています。3年で22万部になりました。紙の新聞が300万部ですから、10分の1に満たないわけですが、近いうちに30万くらいいくと思います。
福田:デジタル化と若い世代の活字離れはどうなんでしょう。
長谷部:これは明らかにありますね。慶応大学のマスコミ志望の学生を対象にした講座で、1年だけ教えたことがあるんですが、新聞を読んでいる受講生が2人しかいない。マスコミ志望でですよ。
福田:でも、日本では電子書籍の普及がさほどではありませんし、紙媒体も残っていくと思います。
写真長谷部:そ うですね。紙の新聞と電子版と、両方のいいところを活かしていきたいですね。僕は編集者の経験が長いので、編集者の目から見ますと、基本的に電子版という のは刻々と変わるニュースの速報なんです。これはこれで速報性の良さがあるのですが、その日の最大のニュースは何なのかがわからないのです。一方、紙の新 聞なら、トップ記事がひと目でわかります。編集作業の課程で、価値判断して記事の大きさを変えているわけです。これがなくて、ただニュースを速報として流 すのであれば、新聞社ではない普通のニュースサイトと差別化ができません。新聞社は価値判断してニュースを見せていくところに意義があると思います。記者 に対して、口を酸っぱくして言ってきたのは、自らぶれない問題意識や価値観を持ち、何をこの記事で言いたいかを考えることが大事だということです。たとえ ば、社説では消費税引き上げの必要性を説き、編集紙面では消費税が上がったら市民生活が困難になるという記事があふれていたら、読者はどっちなんだろうと 思いますよね。速報性ではテレビやネットのニュースサイトに軍配が上がるけれど、新聞の意義は、価値判断を提供できることだと思うのです。それから、ネッ トでニュースをチェックする人は、自分の興味あるニュースしか見ないけれど、新聞は、興味があってもなくても、紙面をめくると見出しが全部目に入ってき て、そこで物を考えられる。自分の興味と関係ないところで、ああ、こういうことが起きているのだなと、社会への関心が広がるのではないでしょうか。もちろ ん、デジタルの媒体がどんどん普及すると思いますけど、紙の新聞もなくしてはいけない、と思っています。こういう伝え方をしないと、物を考える人がいなく なってしまう気がします。
福田:デジタルですと、日本の新聞だけでなく、世界の新聞が即座に手に入るという利点はありますよね。

長谷部:たしかに、それはありますね。

保護中: UCDAトーク

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