「第三者」による客観的な評価

21:長谷部剛-3

日経の文字が小さい理由とは

福田:文章をわかりやすくするためのルールや社内教育はあるのですか。
長谷部:よく、記事は中学生レベルで……といいますが、日経では高校生レベルと教えられる。だから、難しい原稿になる(笑)。
福田:経済記事は専門用語がありますし、カタカナ語も多いですよね。
長谷部:たしかに難しいんですけど、できる範囲でわかりやすくするべきだと思うんです。以前、長い連載を担当した とき、130〜140行の記事を書くのに漢字の比率を3割くらいにしてわかりやすくしようと試みたことがあります。今社内では、遅ればせながら委員会をつ くって「やさしさ革命」に取り組んでいます。
福田:他紙では、高齢化を見据えて文字を大きくしていますが、そのあたりはいかがでしょう。
長谷部:うちは文字が小さいんですよね。読売さんは1ページ当たりの段組が14段だけど、うちは15段。それで、 1段当たりの文字数は11文字で同じですから、当然、文字は小さくなります。他紙が文字を大きくし始めたときに、うちも取り組まなくては、と、読者の声を 聞いてみました。すると、反対の声が多く、情報量が減るのは困る、と。読売新聞と同じくらいの文字の大きさにすると、情報量が2割近くは減ると思います。
福田:それをカバーしようとすると、今度は紙が増える。
長谷部:あるいは一本の記事の字数を少なくするかです。そうすると物足りない。トレードオフなんです。
写真福田:最後に、UCDAの活動についてご意見を伺わせてください。
長谷部:保険の通知物やパンフレット、約款などをわかりやすくする取り組みをなさっていますが、同じように難しく て使いにくいものに、取扱説明書がありますよね。ある人によれば、専門の技術者が書いているから、わかりにくいと言っています。本当は同じ専門家でも、 ユーザビリティの専門家が書くべきだと。日本の家電メーカーがAppleに勝てないのもそういうことなのかなという気がします。供給者目線ではなくユー ザー側の目線に立つという、根っこのところから変えないといけないと、UCDAさんの活動を知って勉強になりました。そのためには、日本企業の文化を変え なくてはいけないのかもしれません。
福田:おっしゃるように、国際競争に勝つには、生活者目線とわかりやすさが大事になってきますね。しかし、官公庁 の指導要綱が厳しすぎたり、あれこれ書いておかないとリスクになってしまうという問題もあります。たとえば、椅子の説明書に「踏み台にしてはいけない」と 書いておかないと、ユーザーが踏み台にして椅子が引っ繰り返ったときにクレームが来かねない。約款にしても取扱説明書にしても、生活者保護を考えるあま り、情報過多になって読みにくくなってはいけません。そのバランスが難しいですね。UCDAの活動がそのお役に立てればと思っています。
長谷部:ぜひ、がんばってください。
福田:本日はどうもありがとうございました。

プロフィール/長谷部 剛(はせべ・つよし)

青森県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同年日本経済新聞社入社。長年、経済記者として第一線で活躍し、秘書室長、経済部長、経営企画室長を歴任した後、2012年より現職。編著に『2020年からの警鐘』(日本経済新聞社)などがある。

保護中: UCDAトーク

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