「第三者」による客観的な評価

23:久世和資-4

●「わかりやすさ」がもたらす成果とは

福田:私たちの活動であるユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)について、お考えをお聞かせいただけないでしょうか?
写真久世:デザインの視点で「生活者が理解しやすい情報」のデザインに取り組み、生活者の暮らしの質を高める活動をされている点など、よりスマートな都市づくりにつながる取り組みだと感じています。
ITの視点で、IBM技術者の最高職位である「IBMフェロー」として日本IBMの東京基礎研究所で活躍している浅川智恵子のチームが、ウェブ・アクセシ ビリティの研究開発を行っています。例えば、ウェブページ制作者が自分のウェブページのアクセシビリティやユーザビリティをチェックすることができるツー ルを開発しました。視覚障がい者の音声ブラウザーによるアクセスのしづらさや、ロービジョン・ユーザーの実際の見え方をシミュレートして表示する機能を提 供することによって、色のコントラストを強くしないと見えにくいといったウェブページ制作者がアクセシビリティやユーザビリティの問題を直観的に理解する ことができることを可能にしました。
福田:私たちも、色弱者の方にも見やすいデザインであるとか、誰にでもやさしいコミュニケーションのあり方を目指 しています。そのなかで、わかりやすさを数値化するというとんでもないことをしています。例えば、A4の紙面に文字量が19%以上印刷されていると見づら いというように、ソフトウェアで計測した数値を、生活者のテストを繰り返すことで基準化していくわけです。
久世:デザインというのも重要な視点ですね。デザインを数値化することで「わかりやすさ」の基準を示していく、このような取り組みは、いままで取り組んだところはなかったでしょうね。UCDAさんの取り組みは、私たちにもとても勉強になります。
写真福田:あ る保険会社で、お客様に送付する通知物をわかりやすく改善したら、苦情が25%減って資料請求が8%伸びたそうです。このように、わかりやすさを数値化 し、それに基づいて直せば良くなるという成果は次々に得られています。データを紙に印字するシステムを変えようとすると数億円いや数十億円かかってしまい ますが、デザインを変えることは数十万円でできます。デザインを変えるだけで、受け手の心理が好意的に変化して、さらに経費削減にも役立つことを確信しま した。これまで、コールセンターのコスト増加に苦労されてきた企業が、お客様中心の考え方で情報をわかりやすく改善していくという取組みを、積極的にされ るようになってきました。今後は、さらに一歩先を行って、先ほどおっしゃったビッグデータのお話のように、わかりやすさが購買意欲などに結びつくかどう か、予測することが必要になってくる気がします。
久世:これは、とても興味深い取り組みですね。企業も、昨今のソーシャル・メディアやスマートフォンの普及に伴 い、顧客が求める価値をいち早く製品やサービスへと反映させる必要が出てきています。わかりやすいコミュニケーション実現に、アナリティックスから得られ る洞察や行動予測を活用し、より良好なコミュニケーションを実現することも可能になってくるでしょう。
福田:私たちだけの知見では限界がありますので、文系・理系の研究者の方々や企業の皆さんのお力をお借りして、わ かりやすいコミュニケーション社会の実現を進めていきたいと考えています。IBMさんともぜひ一緒に「わかりやすさ」について研究をして、役に立つサービ スを開発していければいいですね。
久世:わかりやすいコミュニケーション社会の実現。根幹には共通の想いがあるように感じます。本日お越しいただいているスペースは、意見交換の場としても活用していますので、今後ともよろしくお願いいたします。
福田:本日はお忙しいところどうもありがとうございました。

プロフィール/久世和資(くせ・かずし)

1959年兵庫県生まれ。87年筑波大学大学院工学研究科博士課程修了。同年日本アイ・ビー・エム入社。プログラミング言語、オブジェクト・テクノ ロジー、パーベイシブ・コンピューティング、ソフトウェア・テクノロジー、サービス&ソフトウェアの各担当を経て、2004年東京基礎研究所所長および理 事に就任。05年より執行役員。06年テクノロジー・プロジェクト担当。07年イノベーション・サービス担当、サービス・イノベーション研究所長、08年 未来価値創造事業担当、09年開発製造担当、12年研究開発担当。

保護中: UCDAトーク

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