「第三者」による客観的な評価

03:永井 順國(前篇)-3

●教育の細分化が原因? わかりにくい契約書

写真永井:マニュアルと呼ばれるものが見づらい、わかりにくいという背景には、かなり構造的な問題があると私は考えています。契約書にも同じことがいえますね。
実は、その背景には教育の問題があるのです。今の高等学校教育では高校の1、2年で既に文系と理系に分けてしまい、大学入試に受かりやすいシステマ ティックな勉強をするようになっています。もちろん学ぶ科目も違うから、理系の人は文系のことを脇に置いたまま大学、大学院へと進んで企業に入ります。そ の彼らがマニュアルを書くのですから、共通言語を持たない文系の人には理解できないものになってしまう。逆に文系の人がマニュアルを書こうとしても、理系 の基礎的なことを知らないから良い文章を書けません。つまり、基礎教育の部分で既に共通言語を失ってしまっているが故の、非常に構造的な問題なのです。
福田:なるほど。私は文系ですから理系の学科は手抜きの勉強をしてきました。ご指摘の通りです。
永井:しかも学問研究の世界も専門化するに従いどんどん細分化していますから、領域が異なると専門家同士であっても共 通言語を持てない、会話が成立しないという現象が起きてきています。こうなってくると、細分化した研究ジャンルの領域を超えてクロスさせていかない限り、 社会全体に共通言語が生まれてこない。そうした状況が企業のマニュアルなどに現れているのではないかと思います。
写真福田:おっ しゃる通りですね。似たようなことは企業でもあるように思います。企業では営業に配属されればずっと営業ですし、工場に配属されればそのまま工場というの が普通で、ローテーションによる人事異動は少ないものです。従って専門家は育ちますが、総合力を持った人材の育成は非常に難しくなっているのが現実です。
社会も情報世界もボーダレス化しつつあるのに、企業の組織はどうしてもセクショナリズムが強く、セクションが孤立化するにつれ非常に動きの悪い会社に なってしまう。セクションという壁を壊してコミュニケーションをよくすれば、非常に高い利益を生める体質に変わっていけるのです。そのためにも、仕事の経 験を通して理解していけるように計画的な人材育成をと考えてきました。
永井:生きた経験ということですね。研修で教えてもらうのではなく、具体的に仕事をこなしていきながらポジションを変わっていくことによって理解することは、まさしく企業内教育の一環としてあると思います。

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