「第三者」による客観的な評価

05:矢口 博之-4

●使いやすさの指標をつくる「アイトラッキング」

写真福田:「アイトラッキング」とはどういうものなのですか?
矢口:簡単にいえば目を撮影し、どこを見ているのか視線を解析するシステムです。
福田:囲碁だったら、目の動きで、相手が次にどう打つか読めてしまいますね。
矢口:相手にこれをつけさせれば、何を考えているかバッチリわかってしまうでしょうね。絶対に次に打つところは見るはずですからね。アイトラッキングをつけた名人となら、弱い人でも勝てるかもしれません。
人間の行動というものは本当に正直なもので、何を見ているか、どこを見ているかがわかれば、何を考えているかがだいたい見当がつきます。
使いやすい帳票ならば、スーッと最後まで読んでいけて記入を終え、ポストに投函、と引っかかりなく出来るはずです。逆に「意味がわからない」「もう1回 読まなければ」と思ったら、その行動が目の動きで全部わかるはずです。わからないという行動がデータとして出てくるだろうということです。行動はウソをつ きませんからね。行動を観察すれば使いやすさの指標がつくれるにちがいない、というのが僕ら人間工学をやってきた立場からのアプローチなのです。
福田:なるほど。しかし、それをどう読み取るかも重要な課題になりそうですね。
写真矢口:囲 碁の場合、碁盤のここを見ているという視線解析データがあってもちゃんと知識のある方でないと形勢判断には生かせません。次の手を打ちたいから見ているの か、それとも相手に打たれたくないからその場所を見ているのかを判断するためには、囲碁がきちんとわかっていないとダメですよね。それと同じで帳票の視線 解析データもデザインの知識がある人が見ないとダメなわけです。
アイトラッキングで得た視線解析データをフォームアナリストで得たデザインの定石と合わせることで、使いやすい帳票についての知識を得られるのではない かと考えています。人間の行動と設計の定石の両方を組み合わせる、ということですね。これによって、生命財産にかかわる書類、例えば保険の帳票や証券など の、人間工学でいう安心、安全を目指そうというわけです。
福田:UCDAで追究している、人に伝わりやすくやさしいコミュニケーションと、まさに同じ狙いになりそうですね。
矢口:まさにそういったところでUCDAに参加させて頂いているのだと思っています。電子帳票や帳票自動読み取りシステムなどと違い、紙の帳票についてはあまり研究されていないので、今回の研究がきっかけになって使いやすい帳票が少しでも増えてくれればいいと思っています。

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