「第三者」による客観的な評価

06:青木 輝勝-4

●大切なのは「見たい」という気持ち

福田:画像が進化したらもっとすごいことになりそうですね。
青木:DMDに関して言えば、確かに映像の質としてはまだまだという段階ではありますが、一方でこのつたなさが実は意外と高いポイントになっていることが徐々にわかってきました。
福田:というのは……。
写真青木:中 途半端にリアルだと人はキモチ悪いと感じるのですが、このくらいつたない絵だとむしろ楽しく見ることができます。超リアルな映像といかにもアニメ的な映像 の中間に位置する中途半端なリアルさはかえってキモチ悪いという現象は「不気味の谷」と呼ばれ学術の世界ではよく知られています。もちろん、映画の『アバ ター』くらいにリアルになれば話は別ですが、それには相当に時間がかかるでしょうね。
もうひとつの利点は、アニメが誰にとっても見る気になりやすいものだということです。これはコミュニケーションにとって非常に重要です。
福田:というと……。
青木:以前、人がどうやって笑うかを筋肉の動きなどから検証するために観客にカメラを装着し、プロの芸人と、大学の落 語研究会の学生にお笑いをやってもらうという実験をしたことがありました。すると、面白いことがわかったのです。プロの芸人の場合、登場した瞬間から観客 は笑う準備をしていたのです。対して学生が演者の場合は期待感が少ないせいか、面白いことを言うまで一切の筋肉が動きませんでした。つまり、内容的な差以 上にプロの芸のほうが笑いを取りやすいのは、笑いの準備があらかじめできているか否かによる部分も大きかったのです。
写真福田:面 白いですね。その気があるか否かで理解度も違ってしまうといえば、我々が取り組んでいる帳票やカタログもそうかもしれません。見た瞬間に読む気が失せるよ うなものは、初めから拒絶反応が起きてしまうので、大切な情報には読ませる工夫が必要だと活動しているのですが、先生の研究と共通するものを感じます。
青木:コミュニケーションには準備体操がとても大事ですし、コミュニケーション成功の是非はそこで9割方決まってしまうような気がします。だから見やすさや伝わりやすさはとても重要なのではないでしょうか。
福田:お話を伺っていて、UCDAのコミュニケーションに対する姿勢は間違えていないのだと勇気づけられました。ありがとうございました。
青木:ありがとうございました。
―― 一見まったく異なるようなDMDの研究とUCDAが、実はコミュニケーションという意味では同じものを目指していることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

――身体とコミュニケーションのお話を関連付けながら非常に示唆に富んだ話を伺うことができました。本日はありがとうございました。

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