「第三者」による客観的な評価

17:松岡萬里野-2

●ISOでアクセシブルデザインを提言

福田:誰にでも使いやすいユニバーサルデザインは浸透していますよね。
松岡:家電製品業界では、そういうアプローチがだいぶ前からありました。洗濯機のデザインをフラットにして見た目 をきれいにしたら、目の不自由な人には境目がわからないなど、違う配慮が必要になります。1998年に、ISOにある消費者政策委員会の会議に参加したと きのことです。ちょうど私どもが「高齢者の不便さ調査」のようなアンケートをとっていたので、英訳して持参したところ、写真す ぐに反応がありまして、総会で提案するように言われ、翌年の総会で正式に名乗り出ました。ヨーロッパの委員から、障害者も対象にしてほしいとの意見があ り、高齢者と障害者に配慮した規格作りのガイドができました。その規格の作成時に「アクセシブルデザイン」という言葉を知りました。「バリアフリー」はバ リアがあるという前提だからダメだと。「ユニバーサルデザイン」はアメリカの言葉なので、ヨーロッパでは通じないんです。
福田:なるほど。この前、イギリス人にユニバーサルデザインについて一所懸命説明したんだけど、なかなか理解してもらえなかった理由がわかりました(笑)。欧米と比較すると、消費者問題に関して日本は進歩的なんですか。それとも遅れているんですか。
松岡:圧倒的に遅れていますね。消費者に対する認識が全然違うんですね。審議会で意見を言えば議事録に載せてはく れますが、政策的には無視されることが多い。一方、国際機関では、決定権はないものの、オブザーバーとして意見をかなり聞いてもらえます。ですから、 ISOでは消費者政策委員会の意見は非常に尊重されるんです。日本のように、大勢の中の少数ではなくて、別の監視機関、提言機関のようになっています。な かなか日本ではそういう立ち位置になれません。あとは、消費者団体が財政的に成立するのが日本では非常に難しいですね。海外は大きな財団が多額の寄付を し、個人の寄付もあるんですが、日本では民間の寄付も少なく、かつてのように補助金もなくて厳しい状況です。
福田:話は変わりますが、たとえば、食品トラブルが発生したときなどにトレーサビリティが重要な意味をもつようになりましたね。
松岡:以前は原産国表示という点で要求が強かったんですが、いまはもっと細かくなりましたよね。工業製品などはいろいろな国から部品が来ていますから、単純に原産国ではわからない。企業もリスク回避のために、部品ごとにトレーサビリティを実現できるようになってきました。

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