「第三者」による客観的な評価

20:塚越敏彦-3

●国際社会では中国人の積極性を見習うべき

福田:経済が発展するにつれ、世界一の工場といわれた中国が世界一の消費国といわれる時代に変わってきましたね。
塚越:中国の内需を取り込まないと、日本は少子高齢化ですから、このままでは 未来はないと感じます。互恵関係というか、いかにうまく付き合っていくかが課題でしょう。
写真福田:中国人と付き合う上で何がポイントになりますか? たとえば、中国人とコミュニケーションを取るには、必ず会食しますよね。契約書を交わしても紙切れ1枚で信用されない。一緒に食事をして友だちになることが最低限、求められます。
塚越:結婚して親戚になれば信頼は強い ですね(笑)。それはさておき、発想の違いを理解することが大切。たとえば、日本人はショートレンジで物事を考えて細かいことを気にするけれど、中国人は ロングレンジで考えてアバウトなので、齟齬をきたすことがあるんです。見た目が似ているから同じような発想をするかというと、相当、違いますね。単一民族 で何千年もやってきた島国の日本と、広い国土で外敵が侵入し、異民族もいる国とでは考え方が違ってくる。そこを理解しないといけない。また、われわれは シャイで自分の意見を言わずに横並びでいこうとするけれど、中国の場合、人口が多く競争が激しいので、それでは落伍してしまう。非常に積極的です。日本人 は中国語を勉強していても、流ちょうにしゃべれないと恥ずかしがるけれど、中国人は片言の日本語でどんどん話しかけてきます。「沈黙は金」とか「以心伝 心」というのは日本的発想で、国際社会じゃ通用しません。日本 国内で中国的なコミュニケーションをすると嫌われるかもしれませんが、国際社会を相手にする場合には、 見習う点がある という気がします。グローバル化の中 では積極的に出ていかないと 、日本人はどんどん遅れを取ってしまいますよ。
福田:最後に、ユニバーサルコミュニケーションデザインに関して、お聞かせいただけますでしょうか。
写真塚越:保 険の契約書や裁判の判決書、電子機器の説明書など、分厚くてわかりにくいものを見やすくする活動はとても重要なことだと思います。それに加え、カタカナ文 字、とくにIT用語はわかりやすくならないでしょうか。若い人はわかると思うんですけど、アプリ、パケット、クラウド……次から次へと新しい言葉が登場し てくる。高齢化社会でもあり、なんとかしたいところです。日本語にはカタカナという便利な表音文字があるので、そのまま英語の発音をカタカナにしますが、 中国の場合、外来語も表意文字の漢字で 表現しなくてはなりません。そのため、IT用語も意味を考えながら漢字を当てはめます。典型的なのは、コンピュータが「電脳」。パソコンになると「個人電 脳」です。これは名訳だと思います。ダウンロードは「下載」、アプリは「応用軟件」。わが国でも、日本語に翻訳可能な言葉は日本語にできないでしょうか。

福田:私なども、何十年も前にコンピュータの教育を受けながら、ずっとサボっているので、IT用語には付いていけません(笑)。本日は興味深いお話をありがとうございました。

プロフィール/塚越敏彦(つかごし・としひこ)

東京都出身。1971年東京外国語大学中国語学科卒業、同年共同通信社入社。81年より北京特派員を務め、82年に旧ソ連のブレジネフ書記長死亡の スクープを北京より世界に発信し、日本新聞協会賞を受賞。上海支局長、北京支局長を歴任した後、2001年編集局次長を経て、05年にはアジア地区総代 表、中国総局統括として北京へ渡り、08年の帰国後は東京本社アジア地区総代表兼KK国際情報センター長を務める。

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