「第三者」による客観的な評価

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03-1:その文章、何とかしたい!-2

03-1:その文章、何とかしたい!

直木賞作家が書いたパソコン
マニュアルがわかりやすい理由

写真村上  ある出版社で、素粒子や遺伝子論など、難しいけれど一般の人が知っておくべき最先端の自然科学の本が企画されたことがありました。ところが、日本の学者で は執筆者が見つからない。論文は書けても、一般の人にわかりやすく面白く書ける人がいなかった。仕方なく海外の出版社と提携して、イギリスとアメリカの学 者に書いてもらうことになったというのです。欧米の学者の多くは、一般の人に向けて語るのも自分たちの仕事だと思っていますし、それだけのスキルを持って います。日本では、『生物と無生物のあいだ』を書いた福岡伸一さんのような方は数少ないですね。
永井 16年ほど前、パソコンのマニュアルを直木賞作家の海老沢泰久さんが書いて評判になりました。『これならわ かる パソコンが動く』というタイトルで、門外漢が書くから、専門用語をほとんど使わない。普通、マニュアルを作成するメーカーの人間は理系の専門家で、 「これくらいのことはわかっているはず」という前提で書いてしまう。それを文系の人間が書いたところに意味がある。専門家は、難しいことを難しく、やさし いことも難しく書きがちですから(笑)。
写真小田  「要するに」の後が、やたら長い文章があったり(笑)。こんなこともありました。専門家が書いた原稿の手直しをしたときのことです。元の原稿は、いきなり 専門用語の定義を延々と書き、その後、それらの用語を使って本題の説明をしていました。学術論文形式ですね。しかしそれでは、用語定義の時点で、読む意欲 が失せてしまう。ならばと、本題を進めながら登場した専門用語を説明する形式に書き換えるよう提案したのです。読者に敢えて疑問を抱かせ、次の1文でその 疑問の答えを示すことで、先を読みたくなる……という、ビジネス書のようなスタイルです。しかし、専門家からは「元の方がわかりやすい」と言われてしまい ました。理屈は正しくとも、読み手の立場を考えていないのですね。
八杉 「どうして専門家が書くとわかりづらいのか」ということは、UCDAでは重要なテーマになっています。作家 が書いたパソコンのマニュアルがわかりやすいのは、書いたご本人がパソコンのことをわからないからなのです。人にやさしいのがユニバーサルデザインである なら、弱者の視点でわからない立場の人が書くのがいちばんやさしいのでは。わからない人の気持ちがわからない専門家には、どこが問題なのか理解できないと いうことですね。

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