「第三者」による客観的な評価

03-3:企業と生活者双方に役立つ「わかりやすさ」

文章DC9開発者座談会 第3回(最終回)

文章の「わかりやすさ」は、企業と生活者双方に役立つ

日本語部会メンバーが「文章DC9ヒューリスティック評価法」開発の背景と意義について、ジャーナリスト、文章改善コンサルタント、編集者の視点から解説します。

永井順國 UCDA理事/元読売新聞論説委員/政策研究大学院大学客員教授
小田順子 UCDA賛助会員/文章改善コンサルタント/(株)ことのは本舗代表取締役
村上 健 UCDA運営会員/編集者
八杉淳一 UCDA事務局長

コメント:座談会に寄せて
元原利文  UCDA理事/元最高裁判所判事/弁護士

 03-3:企業と生活者双方に役立つ「わかりやすさ」

ビフォアアフターを検証
改善後は、正解率9割に

八杉 「文章DC9ヒューリスティック評価法」(以下、「文章DC9」)によるもう一つの改善例をご紹介します。
UCDAは、一般社団法人日本損害保険協会(以下、損保協)のプロジェクト「よりわかりやすい募集文書(重要事項説明書)・説明のあり方に関するタスク フォース」(以下、募文TF)に参加し、重要事項説明書における情報の精査とデザイン・構成に関する課題を整理して、改善案を作成しました。
写真永井 UCDAは、保険会社及び販売代理店、専門家、生活者など、さまざまな異なる立場の意見を集めて、日本語部会、アナザーボイスによる評価・分析をしましたね。その結果、3者共通して最大の問題点と認識したのは「情報量の多さ」でした。
契約概要と注意喚起情報の重複が情報量とわかりにくさを拡大していること、また、その情報量の多さが、文字の小ささ読みにくさの要因にもなっていることがわかりました。現行の重要事項説明書は、1、2ページ読むのもつらい印象がありましたね。
小田 はい。私も2ページ目くらいで頭が痛くなってきました(笑)
八杉 われわれの計算だと20ページになる文章量が16ページに詰め込まれており、これを半分にしました。文字数 でいうと5万5千文字を1万2千文字にしたわけです。ふつう、20分で読める文字数がおよそ1万2千文字。改善前のものは、全て読むのに1時間半ほどかか りました。20分以上はどんなに頑張っても読めないのですから。
小田 情報量を減らすと、読みやすくなる分、文章のわかりにくさがクローズアップされましたよね。そこで、文章の 改善案も作りました。改善前のものは、文章の難易度が高校生レベルでしたが、改善後は中学3年生レベルです。よく、「文章は、中学生にもわかるように書 け」などと言いますよね。
永井 改善した文章を目にして、損保協の方々が、まるで霞が晴れたような顔をされていたのが印象深かったですね。 文の長さにしても情報の提示順(あるいは「表現方法」でも)にしても、「文章DC9」の評価項目は言われてみれば当たり前のことなのだけれど、自分たちは それまで気づいていなかったと。
八杉 金融機関の方が書いた文章と、われわれのような部外者が「こうしたらどうか」と提案した文章とは違ってきます。今回提案した文章はかなりわかりやすくなっていたので、約款上で変えられない部分を除いて、すべて直してもらうことができました。
永井 約款などの法令にダイレクトに関わる部分については、ノータッチなんですが、考え方によっては法令の記述自体に問題があるのではないでしょうか。正確であることを求めすぎて、かえって理解しにくい文章になってしまう傾向があると思います。
写真小田 例えば「ご契約のお車」という言葉が頻出するのですが、これはアナザーボイスでも「くり返しがしつこい」「まわりくどい」「慇懃無礼(いんぎんぶれい)な感じ」といった指摘があった部分です。でも、法令で決まっているから変えられないということでした。
八杉 しかし、法律や国に届け出る制度と絡む重要事項説明書のような硬い文書の改善をしていただけたのは、「文章DC9」の客観性や基準があったからこそです。そうでないと、難しい文章を書く方たちを動かせなかったのではないかと損保協や高松市の改善で感じています。
村上 損保協の重要事項説明書については、改善後に行った生活者28人による検証作業でも、かなりいい結果が出ていますね。

八杉 生活者に改善後の重要事項説明書を読んでもらいました。読む速度を測ったり、ある項目を見つけ出すことができる かを質問したり、さらに内容が理解できたかを試すために、実際に保険金が支払われるか否かを答えてもらう作業を行いました。答えを見つけ出すまでの時間は 3割〜4割短縮され、設問への正解率は4割から9割にアップしました。わかりやすさを数値化したところ、改善後は5点満点で2.5点アップしました。

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