サイトアイコン 一般社団法人 ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会

第18回:「お客様が手に取りたくなるデザインにしたい」

販売員にも顧客にもわかりやすいパンフレットを目指して

三菱UFJ投信株式会社

商品情報サービス部 ドキュメンテーショングループ
マネジャー 黒須 紀美子 氏(写真 左)

商品情報サービス部 ドキュメンテーショングループ
主任 児玉 朝 氏(写真 右)

2012年10月18日収録

「何だろう。おもしろそう」
興味をひくデザインにリニューアル

——2012年のUCDAアワードに参加いただきありがとうございました。「投資信託パンフレット部門 情報のわかりやすさ賞」受賞おめでとうございます。今回、参加された経緯からお聞かせください。

児玉 UCDAアワードで初めて投信のパンフレット部門が新設されたというご案内をいただき、社内で「ぜひエントリーを考えてみては」との声が上がりました。これまでファンドの運用実績について評価をいただく機会はありましたが、お客様がご覧になるパンフレットについて第三者評価をいただくのは初めてでしたので、ぜひ参加してみようということになりました。お客様の声や専門家のお話も聞けるということで、大変興味を持ちました。

——今回のアワードにご参加いただいた2アイテムはどの様な商品ですか。ポイントを教えて下さい。

児玉 今回、受賞いたしました「夢実月」については、以前はビジュアルや中面もおとなしい感じでしたが、商品の人気はあり、取り扱う販売会社さんも増えてきておりましたので、デザインを一新し、中面もかなり力を入れてデザインしました。

黒須 以前はシンプルなレイアウトでしたが、がらっと変わりましたね。

児玉 リニューアルに際して、印刷会社さんだけではなく、デザイン会社さんにも入って頂きました。もうひとつの商品「アジアンスパイス」も、設定当初はデータがたっぷり入った冊子版を作ったのですが、もう少しポイントを絞り、ページ数の少ないリーフレット版にリニューアルしました。今回は外国債券ファンドが対象だったので、デザインや見栄えに力を入れてわかりやすさを目指したものを、両方出してみようと考えたわけです。

——お二人がディレクションをされたのですか?

児玉 リニューアルでは、両方に関わりましたが、いろいろな関係部署と連携し、営業セクションの意見も聞きました。

——デザイン制作に女性が関わられているように感じます。表紙の雰囲気も、やはり女性を意識して作られたのかなと。

黒須 ぱっと見て、「何だろう」と思わせるような。

児玉 銀行のラックにあったら、「おもしろそうだな」と手にとって開いていただけるようにビジュアルに力を入れました。

黒須 2つのファンドをエントリーして、なぜ「夢実月」のほうが受賞できたのか、社内で話し合いました。専門家評価ではそれほど差はなかったようなのですが、「Another Voice」での評価が高かった理由は商品性のわかりやすさにあったのかなと思います。単一国の債券で、その国の特徴を伝えて……という。「アジアンスパイス」は、もう少し商品の仕組みが複雑だったので、商品性をより分かりやすく伝える工夫があれば良かったのだろうと思いました。

「Another Voice」で、一般の声を聞けたのが収穫に

——受賞に対する社内外の反応はいかがですか。

黒須 まず社内報で取り上げました。初エントリーで受賞できるとは、正直、考えていなかったので、とても嬉しいですね。三菱UFJフィナンシャル・グループでは、ユニバーサルデザインの取り組みに力を入れており、帳票を見直すなどの動きがあるのですが、先日グループ内の勉強会があった際に、取り組み事例の1つとして、今回の受賞を紹介させていただきました。他社と比較するうえでの評価基準や、わかりやすさについてどのように取り組めばいいかがよくわからなかったので、今回参加させていただいて、今後のメルクマールが明確になりつつあると思います。第三者の目で評価していただくのは非常にありがたいですね。

——何らかの方法で、改善前と改善後の効果検証をできるといいですね。ある保険会社さんが毎年実施するキャンペーンで調べたところ、不備率が半分になったと聞いています。

児玉 同じパンフレットでも、商品を選ぶ目的と、投資信託でお金を運用する目的とではまったく見方が違いますので、読みやすくなったことでより理解を深めていただくことはできても、購入の意思決定に直結したかどうか検証するのは難しいかなと思います。

黒須 投資信託をご購入いただこうと思っている方と、まったく投資信託に興味ない方でも違います。なかなか数字で評価するのは難しいところではないでしょうか。先日の評価結果分析セミナーで、「Another Voice」のレポートがありましたが、お客様が自分に必要な情報を見つけるまでの分析結果や、そもそも投資するときの心理からするとリスクをきちんと書 くべきだという分析は非常におもしろく、外部からの見え方を知るいい機会になりました。

児玉 たとえば表紙にリスクを大きく表示するのはデザイン的にもあまり良くないし、果たしてお客様がご覧になるだろうかと思っていたのですが、他社さんの資料では「Another Voice」でいい評価を受けていらしたので、きちんとお客様にも読んでいただけるのだと感じました。

お見た目の善し悪しだけでなく、見やすさ・わかりやすさを向上

——アワード後、デザイン改善への取組みはいかがですか?

黒須 以前から見た目も良くしたいというのはありましたし、文字が多いという意見は社内からも聞かれましたが、具体的にどう直したらいいかが難しくなかなか改善が進みませんでした。デザインは印刷会社さんにお願いしているので、プロの方がデザインしているという安心感もありました。しかし、今回の評価の中で減点の項目があり、色遣いなどもご指摘いただき、まだまだ足りないことがあると感じました。受賞後に社内で減点箇所を見直し、改善するきっかけになりました。

児玉  たとえば、図を改善したり、段組を増やしたり色の違いがわからない部分には白い線を入れたり、イラストと文字の重なりを正すなど、できるところから徐々に改善しています。また、11月から販売現場で使われる販売用資料のデザインを一部リニューアルしました。販売会社さんの審査部署から、「とても見やすくなり、お客様や販売員にも喜ばれる良いデザインですね」というご意見をいただきました。資料を良くしていこうという気持ちが部署の中で高まり、実際に取り組み始めたことが、今回のアワードに参加していちばん良かったことだと思います。

——色の組み合わせによっては色弱者の方が見えないなど、見た目だけでなく科学的にチェックして工夫することで、伝わりやすくなっていきますよね。

黒須 読みやすい書体として開発されたUDフォントは2年ほど前から取り入れていたのですが、色味までは十分に配慮できていませんでした。たとえばこのパンフレットの赤い部分が、色覚障がいをお持ちの方には黒っぽく見えると知った時は、ショッキングでした。

——最後に、UCDAにご要望はございますか?

黒須 「お客様目線」というとき、私どもにとっては販売会社さんもお客様であり、最終的に資料をご覧になる顧客もお客様です。まずは販売員の方に使い易いと感じていただけなければ始まらないという声もありますし、最終的に投資を判断するお客様にとってわかりやすいものを作らないといけないという声もあります。もちろん、どちらにとってもわかりやすくなることがベストですね。

児玉 販売員さんの声は営業から聞くことができますが、その先のお客様の反応までは調査しづらいです。今回はお客様の意見を聞けて有難かったです。

黒須 投資経験がなかったり、投資信託に関心がない方にも興味をもってもらえるのかなど、実態がつかみづらい部分を「Another Voice」では知ることができるので、今後も期待しています。あとは、同業他社さんの取り組みの様子を知ることができて、私たちもさらに良い資料をつく れるように頑張っていかなければという気持ちになりました。

児玉 それとUCDAさんの活動が広がってきているように思います。認知が広がることで賞の価値も上がるかと思います。次回のアワードでもぜひ評価していただきたいです。

——これからも研究・開発を進め、さらにUCDAの活動を広めていきたいと思います。
本当に今回はご協力いただき、ありがとうございました。

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