アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)
カスタマーリレーションサポート部長 木伏 和生 氏
聞き手:一般社団法人 ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘
契約内容の確認と新たな提案を
木伏 ありがとうございます。
——社内の反響はいかがでしたか?
木伏 表彰式に出席させていただいたことが、社内で毎週放映している「アフラックウィークリーニュース」というニュース番組で紹介されました。この番組は、役員も含め全社員が見ますので、多くの役職員に「おめでとう」と声をかけられました。また、社内報にも取り上げられ、社内的に広く認知されたのではないかと思っています。
——御社の総合通知は情報が充実している点が、評議員のあいだで非常に高く評価されました。契約者に満足してもらう情報というのは、企業にとってプラスの情報だけでなく、積極的には伝えたくない情報もあるのではないですか?
木伏 総合通知を当社では「アフラックメール」と呼んでいますが、このアフラックメールの目的は大きく分けて2つあると考えています。ひとつは、ご契約者の皆様に、契約内容をきちんとご理解いただくこと。もうひとつは、現在の保障内容がご自分のニーズに合っているかをご確認いただくことです。たとえば、古いタイプの保険ですと、先進医療の保障がないとか、ある年齢に達すると給付金が半額になってしまうということがあります。契約時には「65歳になると一部の保障が半額になります」とご説明していても、時間の経過とともに記憶が曖昧になることもあろうかと思います。そこで、アフラックメールのなかで「この保険は65歳になると一部の保障が半額になるタイプです」ときちんとお伝えし、さらに、不足している保障をカ バーする新たな保障をご案内させていただいています。
——若いときに契約したのと年齢が高くなってからでは、考え方や必要な保障内容が変わることもありますからね。私は義母ががんで亡くなったときにがん保険に入りましたが、御社では古くからがん保険を取り扱っていますよね。
木伏 当社が日本でがん保険を販売してから36年になります。当社のがん保険は終身タイプがほとんどで、一度ご契約いただくと一生涯の保障で、保険料も変わりませんが、その一方で医療技術がどんどん進歩していますので、ご契約時にはニーズに合っていた契約内容でも、10年、20年経って、いざ必要な時に必要な給付金が受け取れないケースも出てきます。そのような事態に備え、現在の契約内容に新たな保障をプラスしてはいかがでしょうか、というようなご案内をするわけです。
マーケティング部門が担当しお客様の声を反映
——御社の場合は契約者数も非常に多いですが、それゆえのご苦労はおありですか。
木伏 おかげさまで2千万件超、約1450万人の業界最多のご契約をお預かりしております。ほぼすべてのお客様に毎年アフラックメールをお送りしますが、一度に発送するのではなく、誕生月ごとに12分割して、毎月発送しております。それでも月に100万通以上になるわけですが。発送した後に電話でフォローしたり、お客様からのお問い合わせのお電話も頂戴しますので、一括発送ではなく分割発送することでコールセンターでの電話対応が十分可能になるというメリットがあると思います。
——総合通知に寄せられたお客様の声を反映なさることも多いんですか?
——他社では総合通知の作成を事務管理部門が担当していますが、御社ではカスタマーリレーションサポート部が担当部署なのですか?
木伏 そうです。当社ではマーケティング部門が担当です。もともとは契約管理部門が担当していましたが、2007年に総合通知としてのアフラックメールが誕生したときに、先ほど申し上げたように、契約内容の通知のみにとどまらず、現状に合った保障かどうかお客様にご確認いただき、もし合っていないようなら、新たな提案をしていかなくてはならない。そのためにはマーケティング部門が担当したほうがいいだろうということになったのです。このツールを使って、いかにお客様と接点を持つかが重要ですね。
失敗や指摘された点を「次」に生かしていく
——御社の総合通知は一方通行ではなくて双方向に思えます。
——これからは紙とデジタルが共存していくのでしょうね。
木伏 お客様にアンケートを取りましたら、年齢の高い方ほど紙でもらいたいというニーズは高い。一方、若い方の中には「Webだけでいい。紙はいらない」という方もいらっしゃいますので、これからはWebによる情報提供や利便性を高めていくことも重要だと思っています。
——ご苦労や失敗もありますか?
木伏 失敗は許されないので、誤植や校正ミスには十分に気をつけています。今年も改訂を進めていたアフラックメールの一部の資料の校正ミスが、印刷のギリギリのところで発覚して胸をなでおろしました。一部のチラシの印字が間違っていたのです。大慌てで社内を飛び回って、新たに作成しなおしたことがありました。それ以降、ミスを未然に防ぐように、校正の体制をさらに強化しています。
——取り組みに対して、今後の課題は?
木伏 コストの問題をどう解決するかですね。コスト削減できたとしても、お客様満足度が下がってはいけませんので、コストとCSの両立については、非常に悩んでいるところです。
——コストを安くして、しかもお客様の満足度を上げて、というバランスが難しいですね。
木伏 今回の受賞に際して、足りない部分もご指摘いただいて、「なるほど」と思いました。お客様にわかりやすいように、デザインを重視して作成してきたつもりですが、お客様にとっては逆にわかりにくかったり、導線がきちんと引かれていないなどのご指摘をいただきました。この指摘を活かすためにも通常よりも早く、デザインだけでも見直して反映させているところです。来年のUCDAアワードのエントリーに向けて最善を尽くします。ぜひ大賞を狙いたいですね。
一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘