●コミュニケーションの齟齬がコストを生んでいる
福田:他に「わかりやすさ」についてご提案はありませんか?
金巻:目下いろいろなデータを集めているところです。例えば、アメリカの国立保険医療科学学院の報告によれば同国 の医療事故の70〜80%はコミュニケーションの欠如が原因だそうです。また日本の不動産取引のトラブル原因は圧倒的に「重要事項の不告知を含む重要事項 説明書」の不備によるものだそうです。コミュニケーションの齟齬がいかに社会にコストを生むかを知る非常に興味深いデータと思います。わかりやすさという のは経営に関わる問題だと考えれば、改善の得意な日本人のことですから、必ずホスピタリティとして輸出可能なものになるはずです。コストそのものにメスを 入れるのではなく、コストの発生源である「わかりにくさ」にメスを入れるということが大事だと思います。
福田:「見やすく、わかりやすく、伝わりやすく」というコミュニケーションの視点からのコストダウンというのは新 しいですね。UCDAは、デザイン的なことで、「お客様の立場を考えたわかりやすいものに」という視点でスタートしましたが、おっしゃるように、経営その ものに関わるという新しい視点からも取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。
プロフィール/金巻龍一(かねまき・りゅういち)
早稲田大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科博士前期課程修了。日本ビクター、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)等を経て、プラ イスウォーターハウス コンサルタント入社。アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービスに統合後、2003年より戦略コンサルティンググループを統括、専務取締役兼日本IBM執行役員。2010年に日本IBMへ統合、執行役員戦略コ ンサルティンググループ統括。2012年日本IBM常務執行役員 就任。
専門領域は、グローバル化戦略、マーケティング戦略、企業統合マネジメント、プロフェッショナル人材管理、法人営業改革。主な著書は、「企業統合」、「カ リスマの消えた夏」。慶應義塾大学 SDM(System Design & Management)大学院 特別研究教授