
― 大阪府健康医療部食の安全推進課様にて「食物アレルギーコミュニケーションシート」を制作され、「みんなのピクト」を採用いただきました。ご担当の小西様より制作の背景から「みんなのピクト」使用の経緯までお話を伺いました。
日本語だけに頼らないアレルギー情報提供の重要性
― 「食物アレルギーコミュニケーションシート」を制作された担当部署様のご紹介をお願いいたします。
小西:私ども「食の安全推進課」は食の安全・安心を確保するため、事業者への指導・消費者への情報提供を通じて府民の健康を守る取組みを主に担っています。各グループは、監視指導グループ、食品安全グループ、食品表示グループ等と分かれており、私は監視指導グループの総括をしております。主に食品関連施設の監視指導の総括です。
監視指導というと規制行政ですので厳しいイメージがあるかもしれませんが、規制だけでなく食品衛生に関する知識の向上のため、事業者や訪日外国人の方向けのリーフレット制作なども担当しています。去年は大阪府市共催でHACCP(ハサップ)のセミナーを10回実施し、普及啓発活動も行っています。
― 今回「食物アレルギーコミュニケーションシート」を制作された背景と目的について教えてください。
小西:食物アレルギーは命に関わる重要な問題であり、正確な情報伝達が不可欠です。訪日外国人の急増また2025年の大阪・関西万博の開催を見据え、より多くの外国人観光客の方の来阪が予想されました。
誰もが安心して食事ができる環境の整備を考えたとき、食物アレルギーの有無を確認するための言語の壁を越えたコミュニケーションツールの必要性が高まっていました。そのような背景から、日本語の理解が難しい海外の方が、飲食店を利用するとき、現場も訪日外国人の方も使いやすい「多言語対応コミュニケーションシート」を制作することとなりました。
訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移(観光庁ウェブページより)
ピクトの決め手は視覚的な理解と外国人のわかりやすさ
― 「食物アレルギーコミュニケーションシート」を拝見すると赤・青・グレーの配色の万博カラーですね。大阪府・大阪市と名称がどちらも入っていますが本シートは大阪府・市の合同で制作されたのでしょうか。
小西:制作の企画・指揮は大阪府の主導です。万博でもシート配付が決まった後、万博会場の衛生監視センターは大阪市保健所が運営していることもあり、大阪府・市と共同制作になったのです。万博の会期後も活用していきたく、イメージキャラクター「ミャクミャク」や万博ロゴマークは今回のデザインには反映しませんでした。
― 「食物アレルギーコミュニケーションシート」へ「ピクトグラム」を使用された経緯、その中でも「みんなのピクト」を採用された理由を教えてください。
小西:言語だけでなく直観的・視覚的に理解できるため「ピクトグラム」の使用を決定しました。選定に際し複数のピクトグラムを検討しましたが、視覚的にデザインがわかりやすいこと、「マカダミアナッツ」の対応があったこと、外国人が識別しにくい可能性のある「そば」と「ごま」、「さけ」と「さば」などについてわかりやすいことから「みんなのピクト」を採用することにしました。
| 「食物アレルギーコミュニケーションシート」(表面) クリックで拡大 |
| 「食物アレルギーコミュニケーションシート」(裏面) クリックで拡大 |
― デザイン制作はどのように進められたのでしょうか。工夫された点、苦労された点など教えてください。
小西:デザインは基本的には監視指導グループの担当者が制作会社とやり取りし、関係部署と丁寧に調整し進めていきました。現場での実用性を考慮しながら、誰にとっても見やすく配慮されたデザインとなるよう、フォントサイズやバランスに工夫を凝らしました。特定原材料が一目でわかるよう背景の色使いにも配慮し、視認性の向上を図りました。
用紙にもこだわりがあり、店内でも照明が反射せず見やすいマット加工を採用しました。衛生面でも水滴が付着することも想定し「不浸透性」になっています。
― コミュニケーションシートは表面で食物アレルギーの有無を確認し、裏面ではさらに、「A:この料理には、選択された食材を使用していません」、「B:この料理には、選択された食材を使用しています」として飲食店と顧客がコミュニケーションを取れる構成となっています。シートの構成・文章の精査はどのように考えられたのでしょうか。
小西:大阪府として食物アレルギーの事故を防ぎたいという観点から、裏面の詳細なコミュニケーションの項目を追加することを考えました。食物アレルギーの有無の確認だけでなく、飲食店で提供される食事メニューからアレルギー原材料を取り除けるか、代替え食(食材)の提供が可能かなど、食事をされる方が安心して食事を楽しめることを考え、まずはA・Bを選択し食物アレルギーの有無を確認し、「B:この料理には、選択された食材を使用しています」が該当した場合も、食事提供までのコミュニケーションをフォローできるツールであることを目指しました。
― 選択したメニューにアレルギー物質が入っている場合でも、取り除いたメニュー提供までコミュニケーションシートを取れることで安心感につながりますね。文章や言語表記の選定については、どのように検討されたのでしょうか。
小西:文言については、基本案は大阪府で制作し、現場の飲食店や食品関連団体からも意見を聞きながら決定していきました。多言語対応としては、国際的な公用語である英語・フランス語を中心により多くの訪日外国人の方が理解できるよう10言語を選定し表記し、ネイティブチェックも行いました。
動画でより多くの飲食店・宿泊施設に活用を
― 「食物アレルギーコミュニケーションシート」を活用するための動画制作もされていますね。制作の背景・目的を教えてください。
小西:シートが完成した後で「せっかくだからより使い方がわかるような動画を制作しよう!」と、府内の飲食店に協力いただき動画制作をしました。職員で制作したため手作り感のある動画になりましたが、静的なツールだけでなく動画によって実際の利用シーンをイメージしてもらえたらと考えています。
【大阪府食の安全推進課 制作動画】
食物アレルギーコミュニケーションシートの使用方法について(大阪府食の安全推進課 YouTubeチャンネルより)
食物アレルギーコミュニケーションシートの活用方法について(大阪府食の安全推進課 YouTubeチャンネルより)
― 実際に「食物アレルギーコミュニケーションシート」の使用開始後の事業者・訪日外国人の方の反応はいかがでしょうか。
小西:活用いただいている事業者からは非常に高評価です。配布後、追加で欲しいという声も多くいただいています。なかなか訪日外国人の方からの直接の感想を聞く機会はないのですが、日本に住む外国人の方に見ていただいた際に、「言語表記は①~⑩の番号ではなく、国旗で表記した方が探しやすい」と意見をもらいました。
今後、「ピスタチオ」が推奨表示の原材料に加わると消費者庁から方針発表もありましたので、改訂版を制作する際には、いただいた意見を反映していきたいと思います。
―「食物アレルギーコミュニケーションシート」を使用されたユーザーからの声を第2版へ反映・改善することで、さらに便利なツールになりそうですね。
ユーザー視点の「わかりやすい」情報発信を今後も続けていきたい
―大阪府民・来阪の方々へのわかりやすい情報提供について大阪府として課題であると感じる点、今後の展望があれば教えてください。
小西:私どもが発信する情報は正確性が求められる一方、専門用語や府民の皆さんには馴染みがない言葉や、難解で伝わりにくい情報も多く取扱っていると思います。今回のように、多様な方を想定して情報発信するときに多くの方にとってわかりやすいデザイン・表現の工夫など、これからもユーザー視点での改善を考えていく必要があると考えています。ユーザー、府民の皆さんからの反応やフィードバックを活かし、わかりやすい情報提供に努めていきたいと思います。
― 最後にUCDAへ期待することがあればご意見をお聞かせください。
小西:「みんなのピクト」を採用させていただき大変助かりました。また「ピスタチオ」が追加された際は、是非活用させていただきたいと思っています。また、実務に活きる新しい情報コミュニケーションの知見など情報提供もいただきたく思っています。
― 「ピスタチオ」をはじめ、新たに表示推奨への追加が想定されるピクトグラムの開発も進めています。是非、今後も情報提供をさせていただ、大阪府様のお取り組みもお伺いできれば幸いです。本日はインタビューのお時間をいただきありがとうございました。
