■パネルトーク03

八杉:話がコミュニケーションに関する問題になってきました。ユーザーに企業が絶対にお知らせしなくて はいけないと思ってお出しする情報について、送り手と受け手とのギャップがあるのではないかと思います。金融サービスというものは商品自体がなかなか見え にくく、期間が長いものなので、商品を使うというよりは情報のやり取りという体験そのものが非常に長くなります。商品のライフサイクルが長い生命保険会社 さんと契約者との関係を、プロダクトの視点から見ると、武者さん、いかがでしょうか。
UCDAアワード 選考結果報告会 パネル 写真6武者:ユ ニバーサルデザインやユニバーサルコミュニケーションデザインとして優れたものは、何の不平不満も出ませんから気づかれないものなのです。「よくわかっ た」「これでいい」とスルーしてしまうんですね。不平不満を取り除こうとして改善していくわけですが、いいユニバーサルデザインは気づかれない。逆に言え ば、いいものを作ったのに評価されないということになります。
ただし、皆さんが今やられていることには、細かいところをチェックしていくマイナス評価もありますが、一方で「ここがいいね」というプラス評価もありま す。これは、「needs(二―ズ)」ではなく「wants(ウォンツ)」なんです。「何かをしたい」「何かがほしい」を形にしていくことでウォンツを達 成していけるのです。ニーズとウォンツを明確に持って作り上げていくことだと思います。例えば、解約した場合の返戻金を記載するのもウォンツであり、大同 生命さんのようにそれに答えを返すのも企業の姿勢であり、それが今回の評価に繋がったと思います。
八杉:ウォンツとニーズというマーケティング的な言葉が出てきました。いわゆる広告代理店の世界では、ターゲット や消費者という設定がある程度ありますので、誰に対して何をということが設計しやすくなっています。ところが金融サービス、まして保険となると顧客層が広 すぎて誰に向いているのかということが特定できない特殊な業界だと伺いました。これについては前場さん、いかがですか。
前場:特殊だと思うのは、契約した顧客と10年、20年という継続的なつながりを持つということです。車も同じディーラーさんと長くお付き合いするという例はありますが、保険ほどではありません。
先日、私も勘違いしたことがありました。テレビCMで「先進医療1000万円まで出ます、1ヶ月55円プラスだけですよ」と知って、すぐに担当者に電話し たのですが、「先進医療特約は確かに1000万円出ますが、摘要になる例は非常に少ないです。心筋梗塞や脳卒中の場合をお考えの場合、リビングニーズがお すすめです。」と言われ、そっちに入ったということがありました。
もともと難しい商品なので、わからないことや勘違いも多く、コミュニケーションのレベルも高いところでしていかなくてはならない。総合通知は年一回の通知 物ではありますが、先進医療のような話題についても「こういうものですよ」と伝えてもらえばいいのですが。個人個人のモチベーションというのは絶えず変化 しています。住所や姓の変更なども頻繁にあるわけではないのですが、タイミングを逃さないようにすることが大切だと思います。契約者のモチベーションに 沿った構成があってもよいと思います。
10年、20年と長く深く続くお付き合いなので、総合通知をひとつのフォームでしたいというのもわかるものの、コミュニケーションツールとして考えた場合、もう少しきめ細かな対応ができないかなとも思います。
八杉:アワードのことから離れた部分も少しありますが、色々な意見が出てきました。私どもは僭越ながら、人様が一 生懸命作ったデザイン物を評価・表彰し、ユーザー視点でいいものにできるようご利用いただくためにアワードを開催してきました。最後に生命保険会社様の総 合通知およびコミュニケーションに対して、こうしてもらえたら嬉しいという前向きなご意見を伺いたいと思います。
UCDAアワード 選考結果報告会 パネル 写真7小池:私 は扱っている損害保険は1年ごとに更新ですので、1年間のうちにお客様に届くものは限られています。対して、生命保険は非常に息が長い商品です。その間に 届くものを時系列で考えると、証券、控除証明、総合通知などいろいろあります。1年目のお知らせ、2年目のお知らせ、10年契約のお知らせ、定期的なお知 らせ、保険法の改正に伴う緊急のお知らせなどいろいろ種類があるので、何のお知らせなのかがはっきりわかるとともに、自分の契約において時系列ではどのあ たりに位置するものなのかがわかるようにしてほしいですね。
全部は無理でしょうが、関係ないところはグレーアウトして、関係があるところは色付けしてあるような、そのお客様に対して保険会社が伝えたいことがわかるようになっていてほしいとと思います。