親不孝橋から親孝行橋へ
母ちゃんが若い頃、親不孝行橋の袂で「この橋を渡ってはなんねえよ」と言った。
そして、私の小さな手を強く握った。
上京の春、バス停で母ちゃんが「世の中の為になれよ」と言って小さく笑った。
走り出したバスから、手を振る母ちゃんが泣いている様に見えた。
彼是 半世紀が過ぎた。母ちゃんは九十になった。
親不孝橋を幾度となく渡り、世の中の為になることなど何ひとつせず、ぐうたらに生きてきた。
母ちゃんの元気なうちに世の中の親孝行橋を渡り、「善いことすっと清々すっぺ」が口ぐせの母ちゃんの手で、ハゲた頭を撫でてもらいたい。
母ちゃんの声は、時に良く聞こえてくるものだ。
令和7年6月
一般社団法人ユニバーサルコミュニケ−ションデザイン協会
理事長(ファウンダー) 斎藤 修