プロフィール
吉住 公一郎(よしずみ こういちろう)

1985年3月 青山学院大学 経済学部卒業後、同年4月 埼玉銀行(現りそな銀行・埼玉りそな銀行)入行。
2007年2月 MGA(独立代理店)開発部担当執行役員として、マニュライフ生命に入社。
2015年4月 ディストリビューションマネジメント担当専務執行役兼チーフ・ディストリビューション・オフィサー(CDO)を経て、2018年4月から現職(取締役代表執行役社長兼CEO)。
マニュライフ生命は5年連続エントリーを行い、「UCDAアワード2019」(生命保険分野)で初めてアワードを受賞した。

時代の変化に伴って、求められる保険の形も変化している

― 今回初のアワード受賞、おめでとうございます。超高齢社会、低金利、それに年金問題など、非常に不安定な時代の中で、保険の役割も変わってきていると思います。それらの課題に対してどのようにお考えですか。

時代は大きく変わってきていると思います。私は銀行出身ですが、入行するとすぐに生保の営業職員の方が訪ねてきて、上司からの勧めもあり、内容も十分に理解しないまま契約したことがありました。本当に必要な保障なのかを深く考えないままに保険に入ってきた歴史が、正直、我が国にはあったと思います。保険には「遺す」「貯める」「備える」といった機能がありますが、以前は万が一のときの遺族への保障にフォーカスされていました。ところが、いまは超高齢社会、人生百年時代を不安なく生きていくための保障として、病気やケガを保障する医療保険や、充実したセカンドライフを送るための個人年金保険などへのニーズが高まっています。だからこそ、お客さまそれぞれのニーズに合った保険の必要性をわかりやすく丁寧に説明することが、保険会社の大きな社会的使命だと思います。

― 昔は一家に大黒柱がいて、その人に何かあったら家族が大変だから保険に入っておこうということがありました。でも、大黒柱という言葉もあまり聞かなくなって、保険の役割も自分のために加入するものに変わってきているということですね。

そうですね。昨今、外貨建て保険が人気になっているのは、自分のために増やして使いたいというニーズがあるからだと思います。でも、外貨は魅力的だけれど大丈夫かなと、必ずそこに行きつく。メリットとリスクをいかにわかりやすくお話しするかが大切になってきます。もちろん、行政からもそういうことを強く求められています。

― 金融庁は「顧客本位の業務運営」の中で「重要な情報の分かりやすい提供」と言っていますね。

これまでの説明資料はわかりやすかったのかというと、必ずしもそうではない。パンフレットは昔からビジュアルに訴えるように作られてはいますが、内容はよくわからない。申込書も字が小さくて読みにくい。約款もまず読まれない。これではダメですよね。要件を整えるためにどんどん複雑になってしまった歴史は確実にあります。だから、お客さまに必要なことがきっちり伝わるように、もっと工夫が必要です。

― 貴社はグローバルに展開されていて、グループ全体として「わかりやすさ」ということを掲げていらっしゃる。本当に稀有なことだと思います。

どこの国でもそうですが、保険という商品は複雑です。ですから、「わかりやすさ」にこだわるのは当然のことだと思っています。それと、保険に長年携わった人間ばかりだとわかりにくさに気づきにくい。弊社の場合は、他業種の経験者にも入ってもらい、クロスファンクショナル(横断的)な形で意見を出し合っています。それが、わかりやすいものを創り上げていく文化を醸成してきたのかなと思っています。これは本社のあるカナダでも同じです。ですので、アワードを受賞できたことは社長としてとても自慢で、あちこちで宣伝しています(笑)。

全社でわかりやすさに取り組むのがマニュライフ生命のモットー

― 今、アワードのお話が出ましたので、受賞についての感想や、周囲の反響など教えてください。

ものすごく嬉しいのと同時に、一方で、今年も受賞できるだろうかと多少プレッシャーも感じています。部署の垣根を越えて、会社全体で「わかりやすさ」に取り組んでいくのが弊社のモットーです。担当部署だけではなく、いかに全社を巻き込んで機運を盛り上げていくかにかかっていると思います。

歴代の受賞トロフィー。左端が「UCDAアワード2019」

― 「ナゼ?ナニ?ガイカ」を今、私どもの会議室で展示させていただいております。いろいろな方がご覧になり、感心されます。これを参考にしたいというお話もたくさんいただきます。先日は、ある団体の方が「うちでもこのような方法を採り入れたい」とおっしゃっていました。紙だけではなくいくつかのメディアを使ってわかりやすさを追求していることが、非常に印象的だったようです。

嬉しいですね。ますます良いものを創り出していきたいです。

わかりやすさの追求が企業文化を創る

― マニュライフ生命としての「わかりやすさ」への今後の取り組みについてお話しいただきたいのですが。

まだまだわかりにくいところもたくさんあると思います。それをどんどん改善していきたい。1年ではできないと思いますが、やり続けることに意味があると思っています。

― 私どもの理事も「わかりやすさに終わりはない」と、続けることが企業としての社会的責任であり、使命だと言っています。

そのとおりですね。代替わりしても、ずっと続いていくものだと思います。これを広げていくことで、企業文化が醸成され、社員が一つになることにもつながっていく。業績というのは後でついてくるものです。そうやって社員のモチベーションやエンゲージメントが高まっていけば、お客さまからの信頼度も高まるだろうし、結果的に会社の発展にもつながると確信しています。

― 今はお客さまがフラットに加入先を選ぶ時代になってきました。有名だからとか、よく知っているからとかではなく、自分に合っているかどうかという見方をする方が増えていますね。

外資系だとか、日本での知名度とかではないだけに、地道な努力を続けることが大切だと思います。「顧客本位の業務運営」とは、他社の商品はこうだけどなぜうちはこうなのか、説明できることはすべて正確に説明していく義務があるということだと思います。金融機関による手数料開示が昨年からはじまりましたが、正しい流れだと思います。フィー(手数料)体系になっているということをお客さまにきちんと話していくべきだし、開示すべきことは開示していく姿勢が大切です。

お客さま目線でのアドバイスをざっくばらんにお願いしたい

― 最後になりますが、厳しいおことばでも結構ですので、UCDAに対してご意見や要望をお願いします。

我々に、お客さま目線でいろいろなことをざっくばらんに投げかけていただければと思います。我々はどうしても保険会社の目で見てしまうので、まだまだ気づかず、足りない部分があるかもしれない。ぜひそういう忌憚のないアドバイスを、今後ともいただければと思います。

― ありがとうございます。先日お会いしたある企業の社長の方が「うちは頑張っている、認証マークもつけている、UCDAが有名になってくれないと困る」とおっしゃいました。

それは同感ですね。先ほどお話ししたように、我々もアワード受賞をいろいろな所で自慢しているわけです。「わかりやすさ」に取り組む価値を、やっぱり多くの人に知ってもらいたいですから。

― 昨年、金融庁から「長官が対象物を見たいと言っている」とお話があり、受賞したものを見ていただきました。UCDAのポジションを高めていくことによって、皆さまの企業活動やブランドを高めていくお手伝いができればと思っています。

今後とも、よろしくお願い申し上げます。

― 本日は、ありがとうございました。