「第三者」による客観的な評価

12:杉山 恒太郎(前篇)-3

●ラジオはパーソナルメディア

写真福田:杉山さんは、広告の世界ではラジオから始まり、テレビ、さらにインターネットと、3つのメディアを経験してるんですね。
杉山:じつは、いまでもラジオが好きといっても過言ではないです。ラジオの音だけの世界は、想像の自由 を与えてくれますよね。小さいときにラジオドラマで育っていますから、ラジオから流れる音や人の声だけで想像をめぐらすのが、自分のクリエイティブの原点 です。映像は意外と保守的で、目の前に映ったもの以外はなかなか想像できないけど、たとえば、ラジオの放送で、グラスを指で叩いて鳴らして「ベネチアング ラスはきれいだな」と言えばベネチアングラスに、「薩摩切子はいいなあ」と言えば薩摩切子になっちゃう。これが映像のベネチアングラスや薩摩切子なら、す ごく限定的な情報になってしまう。そこからするとラジオはかなり自由で、パーソナルなメディアですね。インターネットはというと、音声や映像が表現なのに 対し、コミュニケーションツールの要素が強い。人間のコミュニケーションに大変革を起こした。ツイッターなんて、お互いに同時並行でつぶやき合うのは、昔 のマンガのテレパシーに近い。
福田:最近はラジオを聴く人が増えていると聞きますね。
杉山:それは分かりますね、ラジオはパーソナルで、地域に根ざしていますから。
福田:手がけたなかで、みなさんにインパクトを与えた作品についてご紹介ください。
写真杉山:やっ ぱり、小学館の「ピッカピカの一年生」ですね。自分のすべてが凝縮されていて、ある意味ラジオ的といえるかな。ビデオでつくった初めての広告なんですが、 みんなびっくりしたと思うんですよね。ジャガイモみたいな男の子とかが生中継みたいに登場して。それまでの学習雑誌の広告は、上品で理知的な品のいいお坊 ちゃまとお嬢ちゃまが現れて、桜吹雪がぱーっとなって、「ご入学おめでとう!」という感じだったんですよ。ちょっと嘘っぽかったんですね。だから、カボ チャみたいな女の子やジャガイモみたいな男の子、リアルな田舎の子どもをわざと選んだ。その年の春に入学する子を日本中、探しに行くんですが、幼稚園なん かで、暴れん坊だったり泣き虫だったり、特徴のある子を選ぶ。でも、たとえば「寝癖がついた感じがいいなあ」と思って、親御さんに「じゃあ、明日は撮影よ ろしくお願いします。その寝癖が大事ですから」と、言うんだけど、撮影当日はぴたっと髪をセットして来ちゃって(笑)。ジャガイモだったはずが、「どこの お坊ちゃま?」と。あと、「お母さんは映りませんからね」と言うのに、お母さんも美容院に行ってきてキレイにしてきちゃって、大イベントになっちゃう (笑)。
福田:そんな苦労があったんですか(笑)。

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