大同生命保険株式会社 執行役員/契約サービス部長 宮本 弘文 氏
聞き手:一般社団法人 ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘

お客さまの立場で、当たり前のことを着実にやる

――第1回UCDAアワード受賞、大変おめでとうございます。
写真宮本  ありがとうございます。保険商品で大切なことは、例えば、何が保障され何が保障されないかといったことや、色々な手続きについて、お客さまに正しく理解いただくことだと思います。そこで、ここ数年、弊社では帳票の改訂などに取り組んできました。分かりにくい表現を排除し、改善が一定程度すすんだタイミングで賞をいただいたことは大変うれしく、全社を挙げて取り組んだ成果だと考えています。
――御社の「ご契約内容のお知らせ」は大変分かりやすく、評議員全員から高い評価を獲得しました。工夫された点や努力された点をお聞かせください。
宮本 大前提として、お客さまの立場にたつことを徹底しました。お客さまというと、ひとかたまりのマスで捉えがちですが、実際には年齢も性別も価値観も違う。それだけにお客さまの立場にたつことがどういうことなのかを考えるのは実に難しいのですが、まず「分かりやすく」という点に重きを置きました。「伝えたいことを少ない言葉で的確に」「字体、デザイン、レイアウトを見やすい形に」「専門用語はなるべく使わない」といった、当たり前のことを大切にしたんです。また、お客さまにとって有用であることも分かりやすさのひとつの形です。例えば、将来の更新後保険料を「ご契約内容のお知らせ」で提供するなど、伝えたい情報とあわせて、お客さまが知りたい情報をお伝えする姿勢も大切だと考えます。
実際の制作にあたっては、実務プロセスでいろんなチェックを怠らないことが基本だと思っています。部内ではQC(クオリティチェック)会議を随時開催し、複数の目で分かりやすさのチェックをしています。また、今回、UCDAという第三者機関の評価をいただきましたが、社内でも消費生活相談員の方から第三者の視点でご意見を頂戴し、意見交換させていただきながら、改善に取り組んでいます。当たり前のことを当たり前に、着実にやっていくことに尽きますね。
――社内で改善や前例のない取り組みに抵抗はありませんか?
写真宮本  もともと弊社は新しいことにどんどんチャレンジする社風があるので、それは少ない方ではないでしょうか。私どものような業界では、人事ローテーションで種々の部門を経験することにより、お互いの立場を考えられる風土があることも理由のひとつですね。契約サービスに関する新しい案件を社内で提案していくには、お客さまにご納得いただける案件かどうか、ということが重要です。そのためには、お客さまの声を真摯に受け止め、業務に活かす取り組みを普段から積み重ねていくことが必要だと考えています。

 

ツールの多様化でone to oneのコミュニケーションを

――努力し、改善されたことに対して、お客さまの反応はいかがですか?
写真宮本  お客さまの「分かりにくい」「用語が分からない」などの声には、常に耳を傾けています。そういった声や問い合わせがひとつのメルクマールになりますからね。ある帳票について問い合わせが多かったのが、改善した翌年には明らかに減少する。それでお客さまの反応が推し量れますし、お客さまの声を聞いてしっかり改善していけば、分かっていただけたという実感を持つこともできます。また、まれにお褒めの言葉もいただくことがありますよ。ちょうど2、3日前、今回受賞した「ご契約内容のお知らせ」に対して、「分かりやすくて助かった」と、コールセンターにお褒めの言葉を頂戴したとか。まさか、このアワードのことはご存じないでしょうけど(笑)。
お客さまとの相互理解、信頼感を得られたことはうれしくもあり、励みになります。現在、会社の取り組みの基点となるのは、やはりお客さまの声。私どもの業務に限らず、お客さまの声から学んだことをもとに、会社全体で改善に反映しています。
――今後は、1人ひとりに対応したコミュニケーションが求められる時代になっていくと思いますが、いかがでしょう。
宮本 コミュニケーションのあり方については工夫のしどころです。紙の媒体以外に、インターネットから対面、電話まで、いろんな媒体や方法があるので、個々のお客さまにあったやり方が考えられます。一方で、コストとバランスを取りながら、いかにコミュニケーションの多様化を実践していくか、ということですね。個人情報の保護や本人確認をどうするかなどの課題はありますが、インターネットなら、情報の量に制約されることなく文字を大きくしたり、画像や動画を取り入れることができ、お客さまによってカスタマイズできるので、one to oneのコミュニケーションに活用しやすいのではないでしょうか。

「会社の顔」が客観的に評価され、大きな自信に!

――アワードを受賞したことで、何か変化はありましたか?
写真宮本 お客さま宛ての帳票は、常に、時間をかけて改善を続けていますが、経験値や感性によるところが大きく、それが果たして適切かどうか確たるものがなかったので、何か科学的な客観的指標のようなものがあればと思っていました。マニュアルはあるものの、それを評価するものがない。今回のアワードでは、各分野の専門家の先生方がさまざまな視点でご覧になって点数化して評価、分析されていますので、その客観的な尺度を、今後、さまざまなお客さま宛て帳票の制作でも活かしていきたいと思っています。ひとつの方法論を与えていただいたと思っており、大きな武器になるんじゃないかと考えています。
――初代アワードは、その座を守っていくのも大変ですよ(笑)。
写真宮本 担当者もすごく発憤しているんですよ。創意工夫して改善に取り組んでいる若い人たちは「自分たちが作ったものが評価されている!」と大きな自信になったようです。今回受賞した「ご契約内容のお知らせ」は、すべてのお客さまにお送りしているご案内なので、いわば会社の顔。ひとつのご案内が、お客さまに会社をご理解いただき、また、信頼につながる重要なツールとなる可能性があると思うんです。それが「見やすい、分かりやすい」と評価されたのは非常にありがたい。実は、昨年、保険毎日新聞の記事でUCDAの「DC9ヒューリスティック評価法」を拝見して、中でも「認知の導線」という考え方が印象に残りました。順番に読んでいって自然に分かるよう帳票設計しなくてはならない。「注」で飛び飛びになったりして流れが錯綜してはいけない。これは、お客さまの理解を混乱させない帳票づくりのヒントかなと、しっかり手帳に書き留めてあります。
――それは光栄です。これからも皆様のお役に立ちたいと思います。
宮本 我々もこのような賞をいただいた立場上、今後もますます良い取り組みをしていく責任を感じています。
――どうもありがとうございました。

一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘

Column インタビューを終えて

大同生命保険株式会社様は、帳票こそコミュニケーション・メディアとの見識のもと、帳票の改善の指標を「お客様の立場になること」に置いて、ややもすると目をそらしがちな厳しい評価にも真正面から向き合ってこられました。
「当たり前のこと」と謙遜されますが、地道な努力の継続が、今回の受賞の立役者と言えるかもしれません。
このような顧客本位の姿勢は、変化の激しいデジタルコミュニケーションの時代に一層の輝きを放つことでしょう。
大同生命保険株式会社様の成果に敬意を表しますとともに、第一回受賞者として「会社の顔」である帳票に磨きをかけ、さらに前進されることを、社業の発展とともにお祈り申し上げます。