三井住友海上あいおい生命の告知書がUCDA認証を取得

写真佐々木社長(右)にUCDA認証書をお渡ししました。

2013年4月16日収録

●インタビュー

写真

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
新契約部 新契約企画管理グループ
課長 宮島 政一氏
課長 尾林 優江氏

申込書類の中でも、最も難しい告知書の
認証取得にチャレンジ

————御社の告知書が、生保業界で初めてUCDA「伝わるデザイン」認証を取得されました。どんな感想をお持ちですか。

宮島 今回認証取得した告知書というのは、お客さまの病歴や健康状態という、どちらかというとお客さまにとっ てはあまりお話しされたくないことを、過去にさかのぼって、事実をありのままに、正確にもれなく告知いただくための書類です。ご契約時にいただく申込書類 の中で、ある意味でもっとも難しい書類といえるものです。
そうした書類で認証取得を目指したことは、われわれにとってチャレンジングな取り組みでした。また前例のない、告知書による生保業界初の認証でしたので、 評価いただけたということを光栄に思います。認証を取得したことで業界紙に掲載されましたし、当社の取り組みを皆さんに知っていただくきっかけにもなりま した。

————告知書改訂の背景と、認証取得に至った経緯をお知らせください。

宮島 生命保険会社として、お客さまに安心と満足をお届けするのは当社の使命です。それを実現するための重要 なテーマの一つ「告知義務違反防止」をこれまで以上に強化し、1件も違反を発生させないことを目標に、確固たる決意をもって取り組みました。通常の改訂作 業は、私どもの部署、帳票作成部門だけで担当することが多いのですが、今回は保険金支払部門と医務査定部門もプロジェクトに組み込み、総勢15名ほどのメ ンバーで、4カ月にわたって議論しながら改善を進めました。

写真尾林  まず保険金支払部門を中心に、告知漏れの事例と原因を分析して、なぜ現行の告知書では「告知漏れ」が発生したのかを追究し、要改善点を洗い出すという作業 をしました。これによって、サポート資料や告知書に掲示する事例やガイド文言などを、広範囲に見直したわけです。それだけでなく、これまでに蓄積された営 業部門や代理店からの改善要望も取り込んでいきました。
次に、科学的手法ということで、UCDAさんが開発したDC9ヒューリスティック評価法に基づいて告知書を多角的に分析。お客さまの負担を軽減するととも に、重要事項をしっかり読んで、正確に記入していただけるデザインを心掛けました。さらに、評価法に基づいて改善した後、効果が出ているかどうかを消費者 インタビューによって効果測定し、より良いものに近づけていきました。

宮島 認証取得を目指した経緯は、せっかく良いものを作ったのであれば、それを代理店や営業現場に自信を持って伝えたかったからです。認証を取得できれば、強いメッセージとして自信を持って案内できます。そのための裏付けとして認証取得は重要でした。

改善はお客さまの視点に立って。
フォントによる読みやすさの違いにはびっくり

————告知書改善のポイントは、主にどのような内容でしたか。

写真宮島  まず1つ目は、お客さまの心理を考えたデザインにしたことです。告知書には導入部、説明部、記入部と3つのパートがあります。お客さまがそれぞれを読んだ ときに、どんな疑問を持ち、どんな心理になるのかということの仮説を立て、レイアウトのガイド文言を作成していきました。
2つ目は、重要事項をきちんとお客さまに読んでいただくために、ただ文章を並べるだけではなく、一つ一つ、読み終わったらチェックを付けていただく形にし たこと。ここは提出箇所ではなく、お客さまのセルフチェックのために設けましたが、チェック欄があることで重要な事が書いてあるのだということが認識され るわけですね。消費者インタビューでも、このチェック欄のおかげで読み飛ばさず、しっかり読んだという結果が出ました。
3つ目は、記入時の負担をいかに軽減するかということです。記入例などが載っているサポート資料をA4からA3サイズに拡大して、告知漏れの多い事例を目 立つ位置に掲載したり、病名一覧を見やすい位置で参照できるように工夫しました。この改善は、記入いただく告知書本紙の情報量を抑える役割も果たしていま す。
4つ目は、ユニバーサル コミュニケーション デザインの採用です。文字については高齢者にも読みやすい「みんなの文字」を採用し、カラーユニバーサルデザインも考慮しました。色の問題については前の 告知書でも取り組んでいたのですが、フォントについて今回の取り組みが初めてでした。ところが、フォントを変えてみたら、劇的に読みやすくなったのでびっ くりしました。フォントだけでこんなにも変わるのだと。

「募集品質向上」のためには、
じっくり読んでいただくことも必要

————今回の告知書改訂で得たことを、今後どのように生かしていかれますか。

写真宮島 告 知書改善の目的として告知義務違反の撲滅があったのですが、4月からはより広い運動として「募集品質向上運動」を開始しました。その中でも、やはり告知義 務違反の撲滅というのは柱になりますので、改訂した告知書が運動の起爆剤になればと思っています。告知書づくりのプロセスで習得した知識や方法論は、この 告知書だけではなく、いろいろな書類を作っていく中で生かしていかなければと思っています。

尾林 「募集品質向上運動」について補足しますと、保険加入手続きは短時間で済むのが一番だというお客さまばかり ではないんですね。少しぐらい時間がかかってもきちんと説明を受けて、必要な手続きを適切に行って加入したいという声もあります。これを受けて、告知書の 記入を通じて、お客さまとの接点、対話の時間をふやしたいというのが「募集品質向上」の一つの大きな考え方なのです。
お客さまが「病歴をよく思い出せる告知書」というのは、単純に「書きやすい」だけではダメだと思うんですね。思い出さずに、表面的にスイスイ書けるような 告知書では役目を果たさないのです。思い出すためには、やはり時間をかけてじっくり読んでいただけて、内容もわかりやすいということが必要だと思います。

————最後に、UCDAに期待することや認証を通じて感じたことをお話しください。

宮島 今日のことなんですが、UCDAのホームページにDC9評価が特許をとったというリリースが出ていて、「あれ、まだ取得していなかったの」と思いました(笑)。DC9評価のノウハウを、もっとオープンな形で使いやすく提供いただけるとうれしいです。

尾林 「トクホ」というと健康にいいというイメージが定着したのと同じように、「UCDA認証」がついていればわかりやすいというイメージが社会に認知されるといいですね。認証の認知が広がるのは、募集人やお客さまにとってもいいことだと思います。

宮島 わかりやすさを認証するというのは、ものづくり全般に関わる話なので、認証を導入できる業態はまだまだある気がします。例えばファッション雑誌とか、カタログとか……。自分のまわりの手続き書類でも、「記入スペースが狭く書きずらい」と思うようなことがまだあります。

尾林 印刷だけでなくWEB画面でも、デザインはかっこいいけれど、手続き画面の記入がしづらいとか、改善の余地があると思いますので、UCDAのノウハウのあるデザイナーがさまざまな業態でもっと増えるといいと思います。

————協会としても、認証の裾野が広がるよう、普及に努めたいと思います。本日はありがとうございました。