「第三者」による客観的な評価

10:武者 廣平-3

●改善は気づくことから始まる

写真福田:わかりやすくしなければならないものと言えば、交通機関の案内表示もありますね。たとえば、地下鉄路線図の表示ではたくさん色を使っていますが、あれはどうなんですか? わかりにくいのでは?
武者:地下鉄は東京都内で14路線あります。14色を一度で見分けることは一般色覚の人にも簡単ではなく、ちょっ と時間がかかります。それで数年前からCUDOでも複合情報の有効性を提唱してきた結果、最近になってアルファベットや数字が入るようになりました。こう すれば色と文字、どちらかでも判断できるようになります。他の要素も入れながら複合情報にすることがとても大切なんですね。
福田:JRホームの駅名表示板はどうでしょう?
武者:新幹線の発光ダイオードの表示板の場合、昔は緑とオレンジでしたが現在は黒バックに白の文字に変わっています。コントラストを上げることで、老人性白内障や視力が弱い人でも見やすくなりました。
福田:確かに、年齢とともに目は悪くなりますからね。私自身も視力の衰えを痛切に感じています。
写真武者:加 齢とともに明るさ暗さに順応する速度が遅くなります。明るい所から暗い所に移ったとき、若い人はすぐに目が慣れて見えるようになりますが、歳をとると時間 が掛かるようになるものです。対策としては補助光源を加えて、いきなり暗くならないようにします。ユーザー特性に合わせて様々なバックアップのシステムを 常に考える必要があります。CUDOでも美術館などの館内表示についてのアドバイスをしています。
福田:環境にあわせた配慮が必要だということですね。
武者:その通りです。元来、ユニバーサルデザインでは「気づきがある」ことが重要なんです。気づいて初めて不具合がわかり、改良点が見えてくる。気づきがなければ改良できませんからね。逆に、良いユニバーサルデザインほど気づかれない可能性があります。
福田:気づかず自然に使っている?
武者:そうです。マイナスポイントがなくて長年ずっと商品として続いているものは、実はユニバーサルデザインかもしれません。
福田:なるほど。
武者:一生懸命考えていいものをつくると、あまりにも自然に使われてしまうので評価がされない、というわけです。デザイナー的にも悲しい運命といいますか。
福田:でも、それがまたいいわけですね。とにかく気づくことが大事だ、と。

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