「第三者」による客観的な評価

14:小川甲子-2

●出演者が一体化することが大切

福田:大スターになるには、大変な努力が必要ですよね。あとは運と才能ですか?
写真小川:才 能は、努力あってのことだと思います。あと、実力だけでもダメです。私は、音楽学校を主席で卒業しましたが、主席だからといってスターになれるわけではあ りませんし、スターになった人のほうが少ないのです。成績が良い悪いではなく、その人が持っている運もありますが、華やオーラがあるかによってスターが作 られていきます。
福田:舞台で声援を受ける人は大きく見えますよね。
小川:いまはみんな170センチ位で、本当に大きいですけど(笑)。でも、良い衣装を着て、センターに立ってピンス ポットを浴びていると、段々に大きく見えるようになってくるのは確かですが、ひとりのスターが頑張るだけでは、いい舞台はつくれません。出演者全員がひと つになることが必要です。宝塚の良さは、ラインダンスやユニゾンダンスが揃って、みんなが一体化してひとつのものをつくりあげることだと思うんです。ひと り間違うとスターよりも間違った人のほうが目立ってしまう(笑)。だから、緊張感や団結力も生まれ、若いエネルギーがお客様にどんどん伝わっていきます。
写真福田:忘れられないエピソードはありますか?
小川:私は張り切りすぎてよく転んだので、失敗談はいっぱいあるんですけど(笑)、忘れられないのは、パリ公演のライ ンダンスです。普段はラインダンスは若手だけですが、海外公演では人数が足りないから上級生もすることになったのです。私はまだ若かったので大丈夫でした が、上級生は身体を後ろに倒さないと足が上がりません。後ろで手をつないでいますから、どんどん後ろに引っ張られて、みんなで「あ〜!」と、オーケストラ ボックスに落ちてしまいました(笑)。
福田:演奏してるところにドスン、ですか(笑)。
小川:はい。バイオリンが折れたらしいです(笑)。でも、やっぱりいちばん思い出深いのは、自分のさよなら公演です ね。大階段を下りるときに「あ~、もう二度とこの階段は下りられないな」と思ったり、最後のあいさつをすると、大声で「ワァーツ」と泣かれて失神するお客 様までいらしたりして、本当に胸が熱くなりました。いまでは、そんな大きな声で泣かれるお客様はいらっしゃいませんね。

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