「第三者」による客観的な評価

16:白土謙二-3

●創造性だけでなく想像性が大切

福田:「電通ダイバーシティ・ラボ」についてお聞かせください。
白土:まず、バリアフリー的な視点から、みんなが使いやすければいいじゃないか、というユニバーサルデザ インの考え方があります。物の使いやすさや、たとえば見やすいWebサイトといった情報のデザインが大事だということです。もう一つの視点はグローバル 化・ネットワーク化が進むにつれ、これまで出会わなかった人種や宗教、文化を持つ人や、考え方や価値観の違う人が出逢い、ビジネスをしたり同じ会社で働く ようになり、多様性を受け止めて対応することが重要になるという考え方です。同じような人が集まって同じような意見を交換しても新しいものは生まれません が、多様性があるからこそ新しいものを作り出す可能性が高まるのではないでしょうか。「ラボ」としたのは、どちらが正しいとか結論が出るということではな く、より良くしていくという観点から、皆さんに支持していただける方向にバージョンアップしていきたいという考えからです。UCDAさんにお話を伺うと まったく違う見方に気づかされますし、皆さんにいろいろなことを教えていただきながら、一緒にやっていこうと思っています。
福田:ダイバーシティとコミュニケーションの関係をどう考えていますか。
写真白土:広 告など何か伝えたいものを作るとき、クリエーション(創造性)だけではなく、イマジネーション(想像性)も必要です。クリエーションのほうが大事だと思わ れがちだけど、どんな人がどんな価値観を持ち、どんな気持ちになるかなど、受け手のことを想像するイマジネーションが必要なんです。たとえば、目立たせる には赤い色がいいと思いがちだけれど、色覚に障がいのある方だったら違う色の方が目立ったりする。そんなふうに、受け手にはさまざまな人がいるということ が想像できていなかったと思うんです。受け手にはいろんな方がいるというイマジネーションがないときちんと伝わる物を作れないし、いろいろな方にちゃんと 届く物を作れるように、違う視点でチェックできることが必要だと思います。
福田:日本人男性の約5%が色弱といわれていますね。
白土:私、血液型がAB型なんですけど、統計的にAB型の男性と色弱の男性は同じくらいいると言われて、 意外に多いのだと驚きました。あと、最近、白内障が進んでいるんですけど、おしゃれな洋服屋さんで壁に照明を埋め込んだような内装が、昔は素敵だと思って いたのが、今は真っ白で何も見えないんです。そうすると、最悪のデザインに見える(笑)。自分がなってみて、高齢者100人のうち12人といわれる白内障 の方にはこんなふうに見えていたのだと知りました。私どもは、研究所やパビリオンを作る依頼もいただくんですが、車いすの方に配慮したハートビル法だけで なく、音声のご案内はどうするか、どんな色や形ならさまざまな人のストレスにならないかということを総合的に考えなくてはいけません。そういったことに意 識を働かせるのは、より良い空間やサービスを作るうえでの責任だと思っています。

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