過去のアワードでの指摘を徹底的に改善

三井住友海上あいおい生命保険株式会社  お客さまサービス部長 古市 彰 氏
お客さまサービス課長 今西 公彦 氏

2011年9月8日収録

お客さまと第三者の指摘から、わかりやすさを追求

——UCDAアワード2011情報のわかりやすさ賞受賞おめでとうございます。東日本大震災があり、たいへんなタイミングでしたが、受賞に対する社内の反応からお聞かせいただけますか。

写真古市:震災対応のさなかでありましたが、私どもにとって大変励みになるニュースとなりました。社内では、企業品質向上委員会という場で経営層にも報告させていただ き、今回の改善取り組みのポイントにつきましても、お客さまとのコミュニケーションに係わる部署へ、ノウハウのようなかたちで伝えました。また、受賞は社 内報や、MS&ADインシュアランス グループの「CSRレポート」にも取り上げられ、おかげさまで担当社員も社内表彰を受けることが出来ました。

——営業は表彰が多いけれど、本社スタッフはなかなか表彰してもらえない。正しく処理をして当たり前、ミスが出れば叱られる。そんな立場ですから、こういう機会は励みになるのではないでしょうか。

古市:MS&ADインシュアランス グループでは「バリュー」と呼ばれるグループ全社員の行動指針が5つ定められており、その1つに「プロフェッショナリズム」があります。自らを磨き続け、 常に高い品質のサービスを提供することを目指すものです。今回の受賞で、私どもの部門のプロフェッショナリズムとは「わかりやすさの追求」だと再認識いた しました。

——御社の総合通知は、前回、私どもが指摘申し上げた部分を全部修正していただき、評議員全員から非常にわかりやすいという高い評価を得ました。工夫・改善された点を教えてください。

古市:細かいところは今西から申し上げますが、取り組みのきっかけは、前回のアワードで評価いただいたことで す。「お客さま第一」の視点から、お客さまからご指摘・ご意見いただいた点については、極力反映させ情報を充実させていたつもりでした。しかし、第三者の 目から見た場合、わかりにくい部分など改善すべき点が非常に多くあることに気付かされました。そこで、私どもはわかりやすさに重点をおいて改善に取り組み ましたので、アワードのなかでも「情報のわかりやすさ賞」をいただいたことを、本当に嬉しく思っております。

今西:我々自身もわかりにくいという認識は持っておりましたが、前回の評価では具体的にどこが、なぜわかりに くいのか、明確に指摘していただきました。たとえば、強調する文字に使用されている金赤色は、色覚のタイプによっては強調と認識されないですとか、ドッ ト・レシオ・カウンターによる画像分析で紙面の印字率が、読む気を起こさせなくなる20%を超えているといった指摘です。具体的にどこをどう直せばいいの か、最初に明確になったので、あとはその指摘点を中心に、徹底して改善することに取り組みました。

受け取り後のステップ記載で
アンケート返送率も向上

——お客さまの声を集める仕組みはどのようなものですか?

写真今西:総合通知にアンケートはがきを同封し、返送していただきます。その回答を、営業チャネル、契約からの経過年数など、お客さまのカテゴリーごとに集計分析し、 社内にフィードバックしております。一昨年は約1万4千通、昨年は2万4千通と、大変多くのお客さまからアンケートをご返送いただきました。

古市:実は、今回からアンケートの回答欄が5段階評価のような形式にとどまらず、自由に意見を記入いただ く欄を各設問に設け、お客さまには若干手間のかかる内容になりました。そのため、返送率が下がるのを懸念しておりましたが、実際には前年を大きく上回る返 送率となりました。今回の改善では、総合通知を受け取られたお客さまに、行っていただくことをステップで記載しました。ステップに「保障内容を確認いただ き、アンケートにご協力ください」と記載したことも返送率が向上した理由の一つかと思っております。

今西:お受け取りいただいてからのお客さまの行動が、明確にわかるように作られているか、というUCDA評価の基準を反映させたものです。

古市:そのほか、お客さまの目線に近いであろうと、当社の新入社員に原稿を見せて意見を聞いたり、全国消費生活相談員協会からアドバイスを頂戴したりしました。

総合通知だけでなく
保険証券や申込書も評価してほしい

——今回のアワードのテーマが「利用品質の確保とコスト削減」ですが、品質は非常にレベルアップしても、逆にページが増えるなどコストアップにつながったということはありませんでしたか。

古市:コストが上がることはなかったですが、アワードを通して、コスト削減も同時に追求されたなど、他社さんの取 り組みも知ることができ、非常に参考になりました。今回は、システムによる保障内容などの印字部分のレイアウトは変更していません。今年10月の合併に伴 い、両社のお客さまへの通知方法など、来年度はシステム印字の部分も含めて改定を行う予定ですが、その際にはコスト面の考慮もしなければいけません。

——デジタル化が進んでいますが、紙が中心だったお客さまとのコミュニケーションも、デジタルとの複合の時代に変わりつつあると思いますが、いかがですか。

写真古市:すぐにデジタルメディアに移行することは難しいですから、当面総合通知については紙媒体で作成すると思います。ただ、具体的な段階に至っていませんが、近い 将来、紙媒体とデジタルメディアを複合させる時代が来るとは思っています。また、お客さまからご指摘いただきながら、総合通知に記載できなかった項目等 を、インターネットで補完できないかという検討もしております。

——高齢化が進んでいますし、デジタルにアレルギーをもつ層もいらっしゃいますよね。

古市:デジタル媒体に移行しても、ご希望に沿って紙媒体で送らせていただくなど、すぐにデジタルだけということにはならないかと思います。デジタルの場合、お客さまに確実にご覧いただけるかという課題もございます。一方的に送るだけでなく、読んでいただくことが重要ですから。

——最後に、UCDAアワードへのご意見・ご要望などお聞かせください。

古市:保険自体わかりにくい商品と言われています。各社の総合通知を評価いただくことで、業界全体の「わかりやすさの 品質」を向上させるという意味からも、UCDAアワードを開催していただいて本当にありがたいこと思っております。ただ、システムの変更には時間がかかり ますし、総合通知を毎年改善するというのは難しいかもしれませんので、何年かごとに開催であっても続けていただきたいです。総合通知以外では、損保のよう に保険証券も評価対象にしていただくといいですね。証券がわかりにくいとの声をいただくこともありますので、総合通知と同様に改善点を指摘いただけるかと 思います。

今西:ご契約前にお客さまにご覧いただく、パンフレットや申込書を評価対象にしていただくのはどうでしょう。

——保険の入り口であるパンフレットや申込書、もしくは出口にあたる保険金の請求に関わる書類を評価対象にするのも必要になるかもしれませんね。今後のアワードのありかたを検討するうえで参考にさせていただきます。本日はありがとうございました。