顧客の負担を軽減するデザインで、保険業界初の認証を取得

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三井住友海上あいおい生命保険株式会社
 営業推進部 
 販売開発グループ次長 木下 克彦 氏
 販売開発グループ課長代理 間野 真吾 氏
 販売開発グループ 藤本 千晶 氏

2011年12月15日収録

利用品質の向上が、第三者に認められた

写真――まずは、生保業界初の認証取得をされたことについて、どんな感想をお持ちですか。

木下 生命保険を販売する際に使用する募集資料の中でも特に記載事項が多い「ご契約のしおり・約款」をいかにわかりやすくしてお客さまに伝えるかということに注力をした結果、評価・認証をいただけたことをとても光栄に思っています。認証を取得したことが業界紙等にも掲載され、以前にも増してCD-ROM約款の認知度が上がったのではないでしょうか。

――わかりやすいCD-ROM約款をつくることをゴールにして取り組んだ結果、認証取得となったわけですが。
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間野  「ご契約のしおり・約款」はお客さまにとって非常に重要なものです。「約款」はお客さまと保険会社とのご契約についての取り決めを記載したものであり、「ご契約のしおり」はご契約に関する、商品の特徴と仕組みや諸手続き等の重要事項を記載したものです。そのため、お客さまに知っていただきたい内容をいかに伝わりやすくするかが本件の動機です。ユニバーサルコミュニケーションデザインによる「優良な顧客体験」を目指すデザイン開発プロセスを選択し、高い利便性とともに、より一層のわかりやすさを追求した結果が今回の認証につながったと思います。

藤本 成果が出たことに加え、認証を取得したことにより、「見やすく、わかりやすく、伝わりやすくなりました」と伝えるだけでなく、公平な立場である「第三者機関の認証も得ています」と客観的に言えることに価値があると思います。

科学的な分析やユーザーの評価を受け
自信をもって改善できた

――これまでもお客様にとっての利用品質を高めるために、「ご契約のしおり・約款」の制作に取り組んできたと思いますが、今回、従来と違った点を教えてください。

木下 今までも、どのように改善をすればわかりやすく・伝わりやすくできるのかを考えて、過去の経験則等を用いて難解な言葉や文章表現を平易に見直し、また、デザイン・レイアウトについても見直しをしてきましたが、本当にこれでよくなっているのだろうかという思いが残っていました。それが、今回はお客さまに実際にお使いただいただ結果を分析し、様々な検証を行ったうえでの評価ですので、自信をもって改善できたと言えます。
お客さまが使用する様子を確認した際に、今まで気がつかなかったお客さまの隠れた要求がいくつもあったことは新鮮でした。ここまで踏み込んだ取り組みにより、数多くの知見(知識と経験)を得ることができました。この知見を社内に共有をして、今後の業務に生かしていきたいと思っています。

――これまでユニバーサルコミュニケーションデザインは意識されていましたか?

写真間野  ユニバーサルデザインの概念は理解していましたが、素材に反映をするプロセスは不勉強でした。ただし、まったく意識していなかったわけではありません。保険商品を説明する際に使用する商品パンフレット等は、少しでもお客さまの負担を軽減するために、カラーユニバーサルデザインの考え方を取り入れて配色を工夫、文字はUDフォントを使用して文字の大きさにも配慮、紙面に記載する情報量(文字量)を適度に抑えるために版面率の計測、目線の流れを意識した視線計測等を行い、可読性の向上を図っていました。今回、様々な手法による情報収集・科学的な計測や分析、その結果を素材に反映させる手法を経験することができて、非常に勉強になりました。

――認証の取得に向けてご苦労された点を教えてください。

間野 数多くの情報の取りまとめと、分析・測定した結果をどのように素材に反映をして改善につなげるかが苦労しました。時間と労力をかければ問題ありませんが、限られた時間の中で考え方の方向性を定めていく点にも苦労しました。

――お客さまの隠れた要求の分析から制作まで、行程が多くて時間がかかったという印象はおありですか。

木下 当然、時間はかかりましたが、事前に各プロセスの意義を理解し、必要なことだと納得していましたし、これらの必要なプロセスを省略しなかったことも結果に反映されているものと思っています。社内の関連する部署の意見も取り入れて、できることはやりきったと思います。

写真藤本 以前のものは、ひとつの画面に様々な情報を詰め込んだ印象がありました。私自身初めて使用したときは、少し戸惑ったこともありました。しかし、今回の改訂によって、使用する人に限らずに、情報が伝わりやすくなったと証明もされていますので営業部門の担当者への説明もしやすくなりました。

誰もが必要な情報に、素早くたどり着ける

――ITリテラシーがない方や高齢者も意識しましたか。

間野 「ご契約のしおり・約款」は、紙媒体である冊子版だと特に、全体のボリュームが多く、お客さまにとっては保管場所のスペースがとられがちですが、CD-ROM約款では、コンパクトで保管場所にもとらわれません。また、紙資源の大幅な削減にもつながり環境にも優しいために、その利用を推進していますが、お客さまのご希望に応じて使い分けています。
なお、お客さまには様々な環境や属性の方がいますので、その環境や属性の違いに限らずに使い勝手がよくなくてはいけません。そのうえで、構造の骨組み自体を見直して、必要な時に目的の場所にスピーディに辿り着けるように配慮して、全体を通じて何が記載されているかを負担なくつかめるように設計しています。

――次はこうしたいという課題はありますか。

間野 ユニバーサルコミュニケーションデザインは、時代背景やお客さまの環境等に応じて変化するものと認識しています。よって、その時の状況に応じて検討を続けることが重要と考えています。

写真木下  当社はお客さまに安心と満足をお届けし、お客さま・社会から信頼される企業を目指しています。現状は大きな課題はありませんが、やはり、伝わりやすさ・使いやすさはこれで終わりということではありませんので、あらゆるところを見直し、よりよいサービスをお客さまにご提供できるように精一杯の努力をいたします。

――最後にUCDAに期待することや認証を通じて感じたことをお話しください。

木下 私自身、「見やすさ・わかりやすさ・伝わりやすさ」を科学的・客観的に計測し、素材に反映させる方法があることを知りませんでした。このような概念や手法が業界にとらわれずにさらに普及すれば、多くの方々にとって「見やすい・わかりやすい・伝わりやすい」デザインがより多く顕在化すると思いますので、今後もユニバーサルコミュニケーションデザインの普及活動に期待をしています。

――協会としても普及に努めたいと思います。本日はありがとうございました。