「パワースマート住宅ローン申込書」が認証を取得

新生銀行 顧客開発部 部長代理 金澤 祐子氏

2012年3月22日収録

必要な内容を入れるだけでなく、きちんと伝えることに注力

——このたび、「パワースマート住宅ローン申込書」がUCDA認証を取得されました。

金澤 公正な第三者機関のプロの目から見て、わかりやすくなったという認証をいただくことができ、嬉しく思っております。「わかりやすさの認証取得」は明るいニュースで、認証取得後、当行はプレスリリースを通じて本件を広く告知しました。お客さまにとっても良いニュースかと思いますし、また私どもの励みにもなります。

——今回の改訂で、以前と大きく異なるのはどんなところでしょう。

写真金澤  ここ数年で、この申込書がこれほど大きく変わったのは初めてです。従来から私どもなりに改良を重ねておりましたが、以前から使用していた申込書をベースにしており、根本からの再検討までには至りませんでした。従来こうした書類については、読みやすさへの配慮以上に、お伝えしなければならないこと、誤認を防ぐための記載を優先しがちでした。しかしながら、今回の取り組みを通じて、必要事項が記載されているだけでなく、お客さまにきちんと伝わることに注力しなくてはいけないと気付かされました。申込書の場合、究極的には、お客さまがご覧になった瞬間に書くべきことが頭に浮かんでくるような書面が望ましいのかなと思います。今回、まず大きく変わったのは、色使いですね。背景色がグリーンだったのを、色覚面での感知のしやすさに一層配慮し、クリームとブルーにしました。緑は目にやさしい色と思い込んでいましたが、この色変更で書面が非常にくっきりしたと感じています。レイアウトに関しては、DC9ヒューリスティック評価の結果や、「きちんと伝わるか」という点に踏み込んだアドバイスを頂戴しました。そのアドバイス事項を改善した結果、今まで大きさや位置がばらばらだった記入欄の一つひとつが、全体として整ったレイアウトになり、煩雑な印象が薄れたと考えております。また、説明文についてもより伝わりやすい内容になっていると思います。私どもが何気なく使う言葉が、お客さまにはわかりにくい場合があることや、目に負荷をかけずに読める一行あたりの文字数といった点についてもご指摘いただき、改善につなげることができました。当行の住宅ローンは、インターネット経由でのお申し込みの割合が大きいため、多くの場合、お客さまがスタッフの説明を受けずにご自身で申込書を記入されることになります。そのため、お客さまに正確にご理解いただいたうえでご記入いただき、間違い を生じにくくすることが、その後のお客さまの負担軽減につながり、ひいてはビジネス全体の効率化にもつながります。今回の改善によって、一定の効果が上がることを期待しております。

記入スペースを広げつつ
項目を充実させる難題をクリア

——これまで大幅な改訂がなかったとのことですが、こういった書類は同じものを使い続けることが多いですよね。

写真金澤  この申込書の場合、お客さまにご記入いただいた内容をシステムへ入力しているのですが、大幅に変更すると、入力するスタッフの負担が大きくなってしまいます。今回はさまざまな負担を考慮して、可能な範囲での改訂を行いました。しかしそれでも、記入項目数は従来比ほぼ同数で、記入欄の位置も大きく変えていないにもかかわらず、実際に使用しているスタッフからも、「目に入りやすい」との感想をもらいました。

——改訂には時間もかかり、ご苦労もあったのではないですか。

金澤 金融商品の申込書ですから、必要な内容は網羅しなければなりません。改訂前の申込書は、今、振り返ってみますと、レイアウトや文言によって、お客さまにとってややわかりにくい部分があったかとも思うのですが、当行所定の審査を経ています。それを変えることに対しては、「大丈夫か」、「漏れはないか」、「誤解を与えないか」という懸念の声もあり、きちんと行内に説明する必要がありました。逆に、改訂するのなら、さらに情報を追加してほしいという要望も出てきました。

——そうすると、スペースをとってしまいますものね。

金澤 はい。本来はレイアウトを整理することでお客さまが記入されるスペースを広げて、書きやすくしようという方向での改善が目的でしたから。ただ、実際に追加した項目は、確かに必要なものばかりです。たとえば「業種」「所属部署」「役職」などは、お客さまのお勤め先を把握するうえで非常に大切です。

——記入項目を追加すると、お客さまの負担はどう変わるのでしょうか。

金澤 記入項目が増えるのは少し面倒だとお感じになるかもしれません。しかし、例えば、お客さまの企業における在籍確認の場合、所属部署や役職がわかればよりスムーズに確認ができ、審査を進めることができます。これは、私どものオペレーションの効率向上だけではなく、お客さまにとっても審査がスピーディーに進むというメリットがあるのです。

お客さまにアクションをお願いする書類を
優先して改善を進める

——今回の認証に関するプレスリリースに「多様な色覚のお客さまにとって見やすい書面に改善」とありますが、この申込書以外にも取り組んでおられますか。

金澤 この申込書に限らず、書面全般について、多様な色覚のお客さまに大きなご負担なくご覧いただけるよう、当行全体として真摯に取り組んでいるところです。まさにユニバーサルコミュニケーションデザインの考えに基づく書面を作っていきたいと思っております。また、色覚の面だけでなく、より広範なお客さまに、より一層便利に当行をお使いいただくための取り組みを進めておりまして、具体的な内容は当行のWebサイトのトップページにある「障がいのあるお客さまへの取り組みについて」という項目に記載しております。

——多様なお客さまへの対応について、さまざまな部署で改革が進められているのですね。

金澤 お客さまより「使いにくい」、「見にくい」というお声を1件でもいただくと、担当部署が対応を検討します。そのほか、内容改訂や増刷のタイミングで、常に改善は心がけております。まずは、お客さまの目にふれるもの、特にお客さまにご記入いただくなど具体的なアクションをお願いするものを中心に改善を進めております。

——最後に、UCDAの活動についての感想をお聞かせください。

写真金澤  わかりにくいといわれる金融機関の書面について、数値で表現される科学的な指標によってわかりやすさを定義するのは、非常に意義のあることではないでしょうか。法律による規定など、銀行の書類は多くの要素を網羅しなければならないうえ、より多くのお客さまに正しくご理解いただけることが重要視されますが、こうしたロジカルなアプローチに基づく改善であれば、説得力をもって良い方向に変えることができると思います。たとえば、一人のお客さまが「わかりにくい」とおっしゃった点が、すべてのお客さまに当てはまるかどうかという判断は難しいものです。しかし、わかりやすさに特化して研究なさっている専門家の方々がロジカルな評価をされ、その説明に納得できるのであれば、私どももより安心して改善を決断することができます。お客さまの声を謙虚に伺うとともに、専門家からのアドバイスをいただくのは非常に重要だと感じています。

——ありがとうございます。これからも、地道なところから見直していくことで、スムーズなコミュニケーションのお役に立ちたいと考えています。