顧客コミュニケーション最前線14:東京海上日動あんしん生命保険株式会社 「わが子を送り出す気持ちで発送しています」

「わが子を送り出す気持ちで発送しています」

東京海上日動あんしん生命保険株式会社  お客様の声部 お客様の声室 課長代理 伊藤従美 氏
副主事 中村裕美 氏

2011年9月5日収録

別冊のサポートブックとリンクさせて事例を紹介

——UCDAアワード2011情報の充実度賞おめでとうございます。今回はちょうど東日本大震災と重なってたいへんな時期だったと思いますが、社内の反響はいかがですか。

伊藤:われわれ担当だけでなく、社内の10の部署総勢30名のメンバーによるプロジェクトチームがこの総合通知を作っております。ですから、私どもの総合通知が名誉ある賞を頂戴したという吉報を全員にメールで知らせて喜びをわかちあいました。また、東京海上グループの各社に配布される社内報にも掲載されました。グループ会社である東京海上日動と日新火災海上の受賞とともに取り上げられましたが、あんしん生命は2年連続の受賞であることがアピールされました。

写真——御社の場合は、保険金や給付金の保障に関する紹介が非常に具体的で、事例なども入っている点がわかりやすく、情報も充実していることを評議員が高く評価しておりました。何かご苦労なさった点や重視している点を教えていただけますか。

伊藤:総合通知は、お客様共通の部分と、お客様の契約内容に合わせてカスタマイズしている可変部分に分かれています。まず初めに工夫したことは、お客様共通の冊子として、保険金をお支払いできる事例とお支払いできない事例を詳しく紹介するサポートブックを総合通知に同封したことです。ところが、サポートブックに掲載された事例は全てご自分の契約に当てはまると誤解したお客様がいらっしゃいました。そこで総合通知の本紙に可変部分として、お客様のご契約内容に沿った保険金お支払可否を○×で表示しました。そして現在は、本紙に表示した保険金お支払可否とサポートブックとを事例番号で、リンクさせて見られるようしています。これらの工夫が高く評価いただけたのではと感じております。

——検討した結果、いいと思ったことがユーザーには反応がよくなかったとか、逆に、これはどうかと思ったことが反応はよかったということはあるんでしょうか。

中村:あります。共通部分の表記内容も、ご自分の契約に当てはまると誤解されることもあります。注意書きをするなど工夫しておりますが、分かりやすさの向上に苦心しています。また、情報量に関しても、様々なご意見がありますので、その点にも気を配っています。

紙媒体とデジタルとメディアミックスが必要

——改善によるコスト削減効果はありますか。

写真中村:つねにクオリティの向上とコストの削減のバランスをとりながら総合通知を作成しています。2010年度の総合通知に関しては、今までなかった保険法に関する冊子を同封することにしたため、定形外郵便になって郵便料金がかさんでしまうという問題がありました。そのため、本紙のページを減らしつつ、大事な情報をわかり易くお伝えすることに苦心しました。たとえば、従来は3ページ使っていたトピックス、Q&A、手続きを1ページに収めるなど、本紙をコンパクトにしつつ、各項目の背景色を変えて区別し易くするなど工夫することで、保険法冊子を同封しても従来どおり定形郵便で送ることができるようにしました。

——お客様とのコミュニケーションで注意されている点をお聞かせください。

伊藤:大きく分けて、対面による直接のコミュニケーションと非対面のコミュニケーションがあります。非対面のコミュニケーションの中では、こうした紙媒体でお伝えするもの、お電話によるもの、Webによるもの、いろいろな種類があります。
当社では、不特定多数のお客様の目にとまるものは全件、私どもお客様の声室がガイドラインに沿ってチェックし、お客様の目線に立った分かり易い帳票を作る体制にしています。

——デジタル化は避けて通れないと思いますが、メディアの使い方、あるいはコミュニケーションのかたちは変わっていくのでしょうか。

伊藤:メディアミックスというと大袈裟ですが、各メディアのもつメリット、デメリットを考えて、うまくミックスすることが大事だと感じています。生命保険の業界では、代理店や営業職員による対面のコミュニケーションのほかに、カスタマーセンターの電話による非対面のコミュニケーション、さらに、総合通知のような紙媒体のコミュニケーションがあります。おっしゃるように、Webによるデジタルのコミュニケーションも、これからは活かしていかなければいけないと考えています。一方で、ご高齢の方などデジタルデバイドへの配慮も必要なため、記録がお手元に残り正確に伝えることができる紙のメリットを活かしながら、デジタルも活用していく、というかたちになると思います。

中村:今年度の総合通知は既に発送していますが、従来は紙でしかお答えいただく手段がなかったアンケートを、今回から携帯電話やパソコンからもお答えいただけるようにしました。従来の方法ですと、お客様がポストに投函していただいてから到着までタイムラグがありましたが、Webはこちらからのレスポンスも早いため、お客様からも好評です。

公平な評価や指摘に加え、他社との情報交換のよい機会に

——アワードに参加して良かった点や、ご要望などはありますか。

写真伊藤:総合通知は、私どもなりにいろいろな工夫をしてお客様にお送りしていますが、その内容について、評価・ご意見をいただく機会がありませんでした。一般消費者の立場ではなく、公平な第三者の立場で評価してくださるのは非常にありがたいと思っています。また、アドバイスいただいたことを、次に作成する際、参考にさせていただいています。また、他社の総合通知を拝見する機会はあまりないので、意見交換の場を設けていただけるのも非常にありがたく、レベルアップに役立つと思います。ただ、総合通知を改訂するタイミングは各社バラバラかと思いますが、私どもは2011年度版を6月から発送しており、今回のアワードで2010年度版に対して頂戴した評価やご指摘を反映できるのは2012年度版からになってしまいます。個人的には、総合通知に関するアワードは毎年でなくても、世界陸上やオリンピックではないですけど、数年に1回くらいの頻度でいいように感じています。

——システム系との調整はだいぶ時間がかかるんでしょうか。

伊藤:単純な印刷物ではなく、お客様単位でカスタマイズして作っている部分もありますので、ひとつの総合通知を作成するには、10ヵ月くらいかかります。このA4サイズの小冊子の中にはいろいろな思いや工夫が詰まっておりますので、発送するときは、手塩にかけたわが子を送り出すような気持ちになることも確かです。ちょうどこれから、先ほど申し上げた2012年度版総合通知作成に着手するので、今まで以上にお客様にわかりやすく伝わる総合通知にしていくために、引き続き工夫をしていきたいと思っています。

——これからも期待しております。本日はありがとうございました。