デバイスやWeb閲覧の変化にも対応していきます

写真ライフネット生命保険株式会社
マーケティング部 部長代行 岩田慎一氏

2012年10月19日収録

カラーリングやナンバリングで、ユーザーを導く仕組みづくりを

——UCDAアワード2012募集ウェブページ部門「情報のわかりやすさ賞」を受賞されたご感想をお聞かせ下さい。

写真岩田 私たちの唯一のお店であるWebサイトを、第三者にご評価いただけたことは大変嬉しいことです。日々変わるWebのジャンルでは、なかなかご評価いただく機会がないので、モチベーションの向上にもつながっています。それに「情報のわかりやすさ賞」の受賞は、企業理念どおりにWebサイトを運営している証でもあると思います。

——参加された経緯をお聞かせください。

岩田 参加目的は第三者からの評価をいただけるということが大きかったですね。もともと当社には「生命保険をシンプルに、わかりやすく、安く、便利に」という企業理念があり、商品自体のシンプルさとわかりやすさを、パンフレットやWebでもわかりやすく伝えるように努めておりました。以前から、お客様には「使いやすいサイト」との声をいただいていましたが、よりわかりやすく便利なサイトへのリニューアルを予定していたタイミングで、参加の呼びかけがありました。ローンチ前のサイトでも評価いただけるとのことでしたので、これから作るものがどの様な評価をいただけるか試してみたいと考えました。

——ご苦労なさった点やリニューアルのポイントはどんなところでしょう。

岩田 昨年のUCDAアワードで評価をいただいたところはキープしつつ、さらにどうしたらよくなるか、細かなチューニングを行いました。作り手の思いだけですと、改善のつもりが改悪になってしまう可能性もあります。評価を通じて適切なコメントをいただき、従来のものをベースに、さらなる改善がおこなえました。例えば、他社さんと比べて一目でわかりやすいボタンの大きさです。タブレット端末にも対応しており、シンプルでわかりやすい、目的のページにたどり着きやすいという声も多くの方から聞かれます。また、10月から新商品が登場しページネーションを変更したのですが、死亡保障は緑、医療保障はオレンジと色分けしたので、難しく感じがちな生命保険の保障内容でも迷わないといった点を評価いただいたのかなと思っています。

——細かな注意事項を読むのは面倒なものですが、スリムでわかりやすいという印象を持ちました。

岩田 保険商品ですから、文字情報をなくすというわけにはいきませんが、一目で内容がわかるように気を付けています。初めてサイトを訪れて、さっとページを見ただけでユーザーが保険を申し込むことはないですよね。何度もサイトを見て、他社との比較もされると思います。初めてサイトを訪れたときにお客様が知りたい情報、たとえば、どんな目的の商品があるか、金額はどうか、自分にとってどの様なメリットかあるのかなどを数分で感じ取っていただき、さらに比較検討して再訪問時にゆっくり見ていただく。例えば、医療保険の特長ページでは、大切なメッセージは図を使って細かく見なくても理解していただけるように、2回目のサイト訪問ではスペック表など商品の詳細を見ていただけるように設計しています。お客様が何度目の訪問でこのページを見るのかイメージし、ナンバリングで示して、知っていただきたい情報を順々にお出しする仕組みにしています。

迅速な対応はWebの強み。日々、更新とフィードバックを重ねる

写真——2012年のUCDAアワードのテーマは「生活者を守るデザイン」ということで、ユーザーにとって不利益なこともきちんと知らせてほしいという指摘がありました。

岩田 保険は無形商品なので、お客様を守るという意味では、誤認や思い込みを最初に払拭するよう心がけています。例えば、医療保険について。高額医療費制度については別途詳細を説明するページを設けています。お客様には、医療費を全額支払わなくてはいけないと思っている方もおられますが、日本の医療保険制度は自己負担が限られていること、また、それ以外の負担をカバーする保険は必要最小限にしませんか、というご提案をしています。こうした情報は年度で変わるたびにアップデートします。

——クリックひとつで詳細に飛べるのも、Webならではですね。最近はデバイスも多様化していますが。

岩田 スマートフォンだと上下のスクロールが苦ではないために読み飛ばしが速くなります。お客様の疑問を先回りして書き、読みやすく簡潔でなければいけません。ニュースはWebでざっと見て、さわりだけわかればいいという世の中ですから、自分にとって有益な情報か否かの判断がとても速くなってきていると思います。当社はネット販売ですので、ご本人に理解いただけないと申し込みボタンを押していただけません。理解促進という面では日々、試行錯誤をしています。iPadなど新しいデバイスが登場した途端に、それまでの常識が変わってしまいますからね。

——紙媒体では変更に時間がかかりますが、スピード感もWebの強みですね。

岩田 Webサイトの文章を作成する専任のスタッフがまず起案して、コンテンツとしての善し悪しを他のスタッフがチェックします。その後、法務的にも問題がないかチェックしますが、余程のことがなければ数日ですべてチェックは終えられます。スピード感をもっ て有益な情報を確実に、親切にわかりやすくお届けすることをいつも心掛けています。

——Webサイトを更新した結果を常にフィードバックされていると思いますが。

岩田 Webサイトのスタートからお申し込み完了というゴールまでを考えたとき、お客様がこちらの意図した導線をたどられているか、ご覧いただきたいコンテンツのPVが上がったか、クリックの回数が増えたかなど、日々確認しています。また、開業時と現在ではアクセスされるお客様も変わっています。開業時は広告もインターネット上だけでしたから、ネット証券やオンラインバンキングに抵抗のない方が中心でした。現在はテレビCMで興味を持っていただく方もいらっしゃり、モチベーションも変わってきていますから、以前ヒットした情報が必ずしも現在のお客様にヒットするとは限りません。社会情勢によってお客様の興味、関心事も変わりますし、例えば災害などが起こると、お客様の保険へのマインドも変わります。

——新たなサービスについて、既存の契約者の方に随時案内を差し上げているのですか。

岩田 当社のコミュニケーションはメールが中心で、メルマガを配信しています。社長のツイッターやフェイスブックをフォローしてくださるお客様もおられます。対面型のセールス販売ではないため、お客様が自発的にアクセスしないかぎりコミュニケーションがとれません。保険を検討される方はもちろん、ご契約者様へも、いかにわかりやすく有益な情報を発信できるかが課題ですね。

デバイスやシチュエーションで、わかりやすさは変わってくる

写真——UCDAの認証制度へご意見はありますか。

岩田 日々更新されるWebサイトの情報を認証することで、どれだけわかりやすさを担保するのかということがポイントかも知れません。あとは、ネットを閲覧する際に、デスクトップパソコンよりもノートパソコンの画面は縦幅が小さく、iPhoneはもっと液晶が小さいですよね。でも、審査する側は32インチディスプレイで見ているとすると、同じ情報でもデバイスによってわかりやすい・わかりづらいという問題もありえます。近い将来は、どのデバイスでもわかりやすいとか、どのデバイスに最適だとか、あるいは、Web閲覧の速度が上がることで、30秒でどこまで理解できるかとか、理解を得るまでの時間が問題になるかもしれません。現在は、正しい情報が適切なフォントサイズやカラーリング、レイアウトで表示されているかが評価対象ですが、きちんと目で追っているか、見終わって1分後に内容の何割を覚えているかなどが問われるようになると、わかりやすさと理解がもっと密接になっていくと思いますね。

——とても参考になります。現在UCDAは様々な文章改善プロジェクトに参加しています。わかりやすさをあらゆる角度から分析をしているのですが、例えば、人が一定の文章や小説を読むのに何分かかるか、1分間に読める量はどのくらいかを計測しています。 Webのスピード感は新たな課題として考えないといけませんね。

岩田 ユーザーが情報を得る際の行動様式は変わってきています。どの様な情報がどの瞬間に伝わるかということを考える必要もあります。例えば同じ保険を選ぶ場合でも、駅のホームで電車を待ちながらの時と、夫婦でリビングにいる時では、商品の理解度に差が出てくると思いませんか。これまでの顧客分析では年代による区分はありましたが、これからはデバイスや場所、タイミングなどライフスタイルを重視した区分も加わってくるのではないでしょうか。

——UCDAアワードやUCDAへの要望はございますか。

岩田 なかなか難しいかもしれませんが、AnotherVoiceで意見を伺う際、実際に保険を検討しているか、過去に保険請求で困った経験があるかなど、当事者意識を持つ方々のコメントや評価が加わると、目線も変わってくるかなと思います。それと、業界だけでなく一般にもアワードの存在を広めていただきたいですね。ネット通販でユーザーレビューを参考にするように、一般のお客様が「UCDAで賞を取っているサイトなら見てみよう」となるかもしれません。参加する側、主催する側、お客様にとってWin-Winの関係になるのではないでしょうか。

——大変貴重なご意見をありがとうございました。