「フェスティナレンテ」とは、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの座右の銘で「悠々として急げ」を意味します。
 このコーナーでは、日々情報コミュニケーションの課題に悠々と取り組みつつ、UCDを導入し、スピーディーに結果を出している企業・行政・団体を取材します。「わかりやすさ」への取り組み(プロジェクトUCD)における苦労や、現在の活動、今後のビジョンについてお話しいただきます。

マニュライフ生命保険株式会社 スマート・デザイン共創部 部長 江野澤 和夫 氏

インタビュー マニュライフ生命保険株式会社 スマート・デザイン共創部 部長  江野澤 和夫 氏

マニュライフ生命さまは、3年連続でUCDAアワードの特別賞を受賞されました。周囲の方からの反響はいかがでしょうか。

3年連続でUCDAアワードの特別賞を受賞 2015年のUCDAアワードは契約概要、2016年は注意喚起情報と、募集資料の分野で受賞。そして、2017年は保険金・給付金請求手続きのご案内で受賞し、当社は3年連続の特別賞をいただくことができました。

 このように、連続して高い評価をいただいたことは、帳票をシンプルでわかりやすいものにしようと努力している担当者の自信につながり、高いモチベーションを維持することができます。そして何よりも、お客さまから信頼をいただくことにつながると思います。社内からは、そろそろ最優秀賞を獲ってもいいのではないかという声も上がり、プレッシャーを感じるようになってきました。(笑)
 しかし、周りの人々がUCDAアワードを気にするようになってきたということは、シンプルでわかりやすさの取り組みを追求する意識の高まりであり、とてもよい影響の表れだと感じています。

今回のUCDAアワード2017の特別賞受賞についてお聞かせください。

 UCDAアワードのよいところは、生活者や専門家の評価をしっかり吸い上げ、優れた点だけでなく、改善すべき点を的確に指摘してくれることです。
 一昨年の「注意喚起情報」では、特にご高齢の方から「わかりやすい」という高い評価をいただきました。また、昨年の「保険金給付金請求手続きのご案内」では、請求書記入方法を解説した動画コンテンツを「時代のニーズに即した取り組み」として高く評価していただきました。
 動画コンテンツについては、興味を持たれた他の会社様からの問い合わせ等が多数ありました。当社がまさに力を入れて取り組んできた点について好評価をいただき、光栄に存じます。

UCDを推進するきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

江野澤 和夫 氏 UCDに本格的に取り組み始めたのは、2013年7月生命保険協会において、商品パンフレットなど募集文書の簡素化に向けた取り組み指針が示されたころでした。それまでの募集資料は、お客さまが保険への加入を検討するために欠かせないものにも関わらず、小さな文字がびっしり詰まった紙面で、情報を提供していただけというイメージがありました。

 これでお客さまが正しく理解できているのだろうかという疑問と、お客さまにとってわかりやすく伝わる資料とはどんなものなのか、という大きなテーマを真剣に考え始めたことがUCD推進の大きなきっかけでした。その後まもなくして、当社独自の「デザイン・ガイドライン」と「ライティング・マニュアル」を策定しました。

 また、UCDAには、シンプルでわかりやすい情報の伝達を目的とした「文章改善ワークショップ」を開催していただきました。このワークショップによって、参加メンバーのわかりやすさに対する意識がとても高くなり、UCDの推進をさらに加速することができました。
 UCDAは、当社独自の課題に対して、ピンポイントにサポートしていただける点で、頼りになる優れたパートナーだと思っています。

マニュライフ生命さまの「わかりやすさ」への取り組みについて聞かせてください。

 募集資料においては、「帳票を作成する部門」と「帳票を審査する部門」「わかりやすさを推進する部門」が一体となって、それぞれの強みを活かしながら、作成を行っています。例えば、新商品や商品改定による募集資料については、企画段階から各部門が協同して作成に携わります。この作成に関わるメンバーは、お客さまにわかりやすく伝わるものを作成しようという共通認識を持って行動しています。
 結果として、スピーディな意思決定が可能になっています。直近の取り組みでは、外貨建保険などの解説動画を作成しました。

 スマートフォンなどのデジタルデバイスを活用した情報収集の背景を踏まえ、お客さまにより効果的に情報を伝えるための手段のひとつです。わかりやすさの取り組みは、紙媒体に限らず、デジタル媒体でも同じことです。情報提供の場面やタイミングに応じた活用を行うことで、お客さまとの接点の機会を広げ、お客さまの理解向上に役立つような工夫をしています。
 また、「保険金給付金請求書」などの保全帳票も同様に、専門用語をできるだけわかりやすく説明し、お客さまに提出いただく書類が視覚的にわかるような動画を提供しています。

金融庁の「顧客本位の業務運営」への対応についてお聞かせください。

江野澤 和夫 氏

 2017年3月30日、金融庁より、顧客本位の業務運営に関する原則、いわゆるフィデューシャリー・デューティーに関する原則が公表されました。情報品質との関係では、「重要な情報のわかりやすい提供」として、「金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるようわかりやすく提供すべきである」とされています。

どの金融機関でも、わかりやすく提供する取り組みはすでに始めていると思いますが、この原則では、各社の主体的な創意工夫が強く求められています。そのため、「他社と同じであれば安心」という考え方から、「よりお客さまにご理解いただくために、私たちはどうするか」を考えることが重要であると認識しています。

 お客さまの行動を十分に把握・分析し、情報伝達の課題を正確に見極め、お客さまに寄り添った解決策を打ち出し、素早く行動することが求められていると思います。
 企業や団体が、生活者へ提供するコミュニケーションの課題を把握し、豊富な知見を持って「見やすく、わかりやすく、伝わりやすく」課題を解決する方法を提案してくれるUCDAの取り組みは、まさに顧客本位の業務運営への近道のように感じます。

昨年12月に、UCDAとのコラボレーションで管理職向けワークショップを開催されました。開催に至った経緯と、主催の「スマート・デザイン共創部」についてお聞かせください。

UCDAとのコラボレーションで管理職向けワークショップを開催 UCDAとのコラボレーションは、情報コミュニケーションの課題を解決するうえで、とても有意義なことだと感じていました。
 そんな時、私たちスマート・デザイン共創部は、社長から、わかりやすい情報コミュニケーションをテーマにした管理職向けセッションの企画を任され、UCDAとのコラボレーションによるワークショップの開催を決めました。
 ワークショップのテーマは、「あなたのメッセージは、相手に伝わっていますか?」でした。企画としては、参加するすべての人が共通して活用する、電子メールによる情報コミュニケーションを取り上げました。

 普段、頻繁にやり取りをする電子メールですが、メールで指示された内容を理解できなかったり、1行書けば済む内容を長々と書いてあったりなど、メールの受け手にとっては迷惑なものがたくさんあります。これが、全職員宛てのメールだったりすると、相当な時間を無駄にしていることになります。当日のワークショップでは、メールの文字量を40%も削減して、よりわかりやすく伝える事例も挙げていただきました。メールを読む量が40%削減できれば、その時間を別の業務に回せます。優れた情報コミュニケーションは、コストを削減することにも役立ちます。

スマート・デザイン共創部のメンバー 私たちスマート・デザイン共創部は、お客さまが心地よく目的を達成するための仕組みをデザインするという役割を持っています。デザイナーやクリエイターなど少し保険とは離れた経験を持つメンバーがいます。それぞれの個性や強みを活かし、クオリティの高いアウトプットを意識しながら、同時に仕事の楽しさを感じることを大切にしている、そんなチームだと思います。

ワークショップを受講された皆さまの反応はいかがでしょうか。

 UCDAとのコラボレーション企画は大成功でした。参加者からのアンケートでは、回答したすべての管理職から、満足のいくものであり、すぐに役立つワークショップであったとコメントがありました。このワークショップをスタッフ向けにも実施した方が良いという意見もあり、さっそくその準備に取りかかりました。前回のワークショップの良かった点をさらに活かし、情報コミュニケーションのスキルを楽しみながら学び、日頃の業務にすぐ活用できるような企画にしたいと考えています。
 また、円滑な情報コミュニケーションがコスト削減につながる、ということもぜひ伝えていきたいですね。

マニュライフ生命さまの今後の取り組みについてお聞かせください。

 情報コミュニケーションの重要性を鑑みれば、これまで以上にお客さまを中心に捉えた帳票改善に力を入れる必要があると思っています。紙媒体でも、デジタルでも、私たちが発信する情報はお客さまが容易に理解できるものでなければ意味がありません。シンプルでわかりやすく、お客さまが心地よく目的を達成できる仕組みを提供することが今後の大きなテーマになります。
 そのためには、人間中心設計に目を向け、優れた顧客体験をデザインするようにしなければなりません。これは、一人でできることではありません。社内全体が一つのチームとなって、お互いの強みを活かしながら達成できるものです。そのような行動が、お客さまに選んでいただける企業への第一歩になるのだと思います。

UCDAについてのご意見・ご要望をお聞かせください。

 豊富な知見を活かして「わかりやすさ」を客観的に評価する第三者機関である点がUCDAの強みだと認識しています。自分たちだけでコンテンツを作っていても、それがわかりやすいものなのかを客観的に判断することは困難なことです。そんな時にUCDAの力をお借りすることで、課題の明確化、最適な解決策の検討、素早い行動に移すことができます。
 いずれ可能になることだとは思いますが、紙媒体だけでなく、デジタル媒体のわかりやすさの基準を示していただけると、一層有意義なコミュニケーションをお客さまに提供できると思います。

 また、今でも十分にUCDAは社会的に認知されていると思いますが、これがさらに高まることを期待しています。UCDA認証のある帳票が顧客本位の取り組みの証であると伝わることで、お客さまに安心を感じていただける大きなポイントになると思います。
 これからも、UCDAにサポートいただきながら、お客さま、そして社会に貢献していきたいと思います。

これからもUCDが広がるように頑張ります。本日はありがとうございました。