インタビュー
(インタビュー当時・写真左から)

オリックス銀行株式会社
資産運用営業部
コーポレート・コミュニケーション部
元田 貴子 氏
入野 由起 氏

既存の枠にとらわれないユニークな銀行として事業展開

― この度は「伝わるデザイン」の認証取得おめでとうございます。今回認証を取得された「eダイレクト預金ご利用ガイド」はインターネットで口座開設をしたお客さま向けの通知物ですが、まずは貴社の事業について教えてください。

元田:弊社は1998年にオリックスグループ入りして以来、グループの総合力や信託銀行の機能を生かした商品やサービスを提供しています。預金はもちろん、投資信託などの信託商品や、投資用不動産ローン、カードローンなども得意としており、既存の枠にとらわれないユニークな銀行として事業を展開しています。

― ネットバンク事業がメインなのでしょうか。

元田:ネットバンクの側面と、対面取引など他の側面があります。ただ、預金に関してはずっと非対面で提供してきたことから、ネットバンクと認識されている方が多いですね。

― インターネット預金はいつから開始したのですか。

元田:2001年3月に取り扱いを始めました。店舗や決済機能、ATMの機能などを持たない分、コスト削減による高水準な定期預金金利で、お客さまから好評価をいただいています。

― ここ2~3年ぐらいで銀行の店舗やATMの削減など、ビジネスモデルが変わってきていると思います。その中で、貴社は元々先を行っていたという感じでしょうか。

元田:弊社は、当初からキャッシュカード不発行やATMを持たないというビジネスモデルで、他の金融機関との差別化を図っていました。非対面取引も、今ではどこの金融機関でも当たり前になっていますが、2001年当時は珍しかったと思います。

商品を多数そろえるよりも、シンプルな切り口での提供を

― 最近、メガバンクでは金融商品や保険商品の販売、地方銀行では地域活性化の取り組みを広げていこうという動きがあります。
既存の枠にとらわれない貴社のビジネスモデルにおいて、最近始めたサービスなどはありますか。

元田:弊社は、全国どこからでもご利用いただける「WEB相談サービス」を昨年開始しました。弊社の強みである信託機能を生かした資産運用商品のご相談など、さまざまな目的でご利用いただいています。
eダイレクト預金口座をお使いのお客さまには、金銭信託や投資信託などの資産運用商品もネットでご購入いただけます。私たちの強みを生かした商品をわかりやすくお届けできるように、これからも努力していきたいと思います。

― 金融庁出身で当協会の内藤純一理事が、情報をわかりやすくしようと思うと、商品自体がシンプルになると言っていました。商品が複雑だと、いくらわかりやすく伝えようとしても難しい。そういう意味では、よりシンプルになっていくでしょうね。

元田:弊社は、シンプルでわかりやすい商品・サービスの提供を心がけています。例えば、投資信託も多くのファンドを並べるのではなく、中長期投資に適したファンドのみを厳選し、シンプルなラインアップで販売しています。

わかりやすく印象に残るものを

― 今回、「伝わるデザイン」を取得された対象物についてお話しください。

元田:インターネット取引専用のeダイレクト預金のご利用ガイドです。インターネットで口座開設を申し込みいただいたお客さまに、取引に利用いただくお客さまカードを発行するのですが、その郵送物に同封するリーフレットです。
弊社は預け入れ方法や払い戻し方法など、他の金融機関とは異なるところがあります。ウェブサイトで確認していただけますが、手元のリーフレットでもすぐにご確認いただけることが大切であると考え、同封しています。

― お客さまに読んでご理解いただくところまでがこのリーフレットの役割で、実際の手続きはネットで行うということですね。

元田:そうです。以前の「eダイレクト預金ご利用ガイド」はA4サイズの両面印刷でした。記載内容は今回認証取得したものと同じですが、お客さまに必要な情報を詰め込もうとするうちに、文字がぎっしり詰まったものになってしまい、逆にわかりにくくなっていないかと、担当者として気になっていました。
今回、社内でUCDAの認証取得の話が上がった際、わかりやすく表現するために、紙面をA3サイズにしたらどうかという意見があり、検討を進めることにしました。

― 入野さまはUCDA認定1級を取られていますね。

入野:UCDA認定1級を取得した担当者として、「eダイレクト預金ご利用ガイド」の改善に取り組みました。定期預金というと、金利などの条件以外はどの金融機関でも同じと思われがちですが、弊社の場合は独自の利用方法も理解していただかないといけません。お客さまが、定期が満期になってから困るようなことがあってはいけないので、手元に保管いただける、わかりやすく印象に残るものを作りたかったのです。UCDAで学んだことを生かせるチャンスだと思いました。

「見やすさ」に徹底的にこだわって作成

eダイレクト預金ご利用ガイド:クリックで拡大

― 今回、「伝わるデザイン」という非常にハードルの高い認証にチャレンジされたわけですが、苦労されたことはありますか。

入野:まず「見やすさ」を最初に考えて、文字の大きさや、体言止めを多用した文体、情報伝達に問題のない色彩設計など、UCDAで学んだことを取り入れました。何度も打ち合わせをして、印刷会社さんからあきれられるくらい試行錯誤を繰り返しました。

― 色使いや余白がすごく優しい感じがしますね。改善にあたって、社内でどのようにコミュニケーションを取られましたか。

入野:お客さまとじかに接するコールセンター部署や、商品の担当部署、コンプライアンス担当部署と、何度も対話の機会を設けて、改善につなげました。

― 内部の皆さんの力を結集させるような努力をされたのですね。

入野:すべての意見を取り入れるとどうしても情報が多くなってしまうため、取捨選択もしましたが、気づきが多く、さまざまな意見を聞くことの大切さを実感しました。

― 皆さん、思っていることがなかなか形にできない。それで、当協会のような外部機関の意見で背中を押されるというか、納得したうえで先に進んでいかれるケースが多いと思います。

入野:自信があったのは「見やすさ」だけで、内容にはいろいろと迷いがあったので、どのような指摘を受けるだろうと不安に思っていました。
UCDAから評価レポートをいただいて、正直、その指摘の多さに戸惑いましたが、自分たちでは気づけなかったことが多く含まれていました。数多くの指摘に対応するのはもちろん大変でしたが、社内でさらに対話を重ねて一つ一つ解決していくことは、楽しくもありました。外部からの的確な指摘をもとに改善できたので、苦労よりも収穫が大きかったと思います。何よりも、試行錯誤を重ねた経験が「お客さま目線でのわかりやすさ」の理解を深める良いきっかけになりました。

お客さま目線でのわかりやすさがいちばん大切だ

― 貴社のお客さま本位に関わる活動について教えてください。

入野:弊社は「お客さま目線でのわかりやすさ」が最も重要だと考えています。それを実現するためには、社員一人一人がその意識を高める必要があります。
そこでまず、以前からUCDを幅広く取り入れている同じグループの生命保険会社から、弊社の社員が「わかりやすさ」の取り組みについて話を聞く機会を設けました。それを受けて、社内から「自社の帳票も見直したい」などの声が上がりました。グループ会社で実践していることが、気づきにつながったのだと思います。
もう一つ、この認証取得についても、社内でその過程も含めて共有していくことです。この認証取得の意味を社員一人一人が理解することも、意識の高まりにつながると考えています。

論理的に「わかりやすさ」の浸透を図っていきたい

― 最後になりますが、UCDAに対してのご意見・リクエストなどお願いします。

入野:UCDAから教えていただいたことをもとに、認定を取得した社員として、社内で「わかりやすさ」の浸透を図ろうとしています。ただ漠然とではなく、論理的に説明をすることが大切ですし、押しつけではなく共感を得るというUCDAの姿勢も見習いたいと思っていますので、これからもお力添えをお願いします。
また、「わかりやすさ」というのは時の流れや世の中の動きによって変わっていくものだとも感じています。それについていくためにも、UCDA認定社員として引き続き勉強し、また社内に共有していきたいと考えています。

― 2020年のコロナ禍以降世の中が急激に変わってきて、印刷物・Webサイト・動画、色々なコミュニケーションの方法を総合的にお客さまに伝えるという形が増えてきています。そのような中で、今回認証を取得されたリーフレットとWebサイトは、一つの大きなお手本になるのではと思っています。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。