吉原彩氏・荒井幸夫氏

インタビュー
(インタビュー当時・写真左から)

三井住友信託銀行株式会社
個人企画部
広告宣伝企画チーム長 吉原 彩氏
 
調査役 荒井 幸夫氏

お客様の声を受けてどんどん改善を進めている

― 今回、「取扱商品・サービス一覧」のパンフレットでUCDA認証「伝わるデザイン」取得されました。「伝わるデザイン」はかなりハードルが高く、生活者の皆さんの合意がないとマークを発行できないものです。取得された経緯をお話しください。

荒井:当社は日頃からお客さまの声を意識しています。その中に、「パンフレットに書いてあることが多くて読むのが大変」「金融商品についての記載がわかりにくい」というご指摘があって、改善の必要性を感じていました。また、当社が「お客さま本位の取組」としてウェブサイトで公表している中にもわかりやすい情報提供という項目があります。そこで、私どもの部署が中心となり、販売資料へのユニバーサルデザインの反映と強化を目指すこととしました。これが今回、取得に至った理由です。

― ユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)への取組みを会社として進めているんですね。

荒井:そうです。お客さまの声をお聞かせくださいというアンケートの中にも先ほど申し上げたようなご指摘がありましたので、どんどん改善していこうという動きになっています。当社のウェブサイトにも「お客さまの声に基づく改善事例」を載せていまして、その中に今回の事例も紹介しています。今後も継続してお伝えしていきたいと思っています。

― お客さまから情報が多すぎてわかりにくいというような指摘があり、改善しようと思っていたところでユニバーサルコミュニケーションデザイン協会(UCDA)のことを知ったということですね。

荒井:まず、文字が多いというディスクレーマーの見直しに着手しました。金融商品に関してのディスクレーマーは昨今多くなっていましたので、これを見直して文字数を削減した上で、UCDを反映させた「取扱商品・サービス一覧」に着手したという経緯です。

認証取得物
UCDA認証「伝わるデザイン」取得
「取扱商品・サービス一覧」
クリックで拡大

― 拝見して、最後の留意事項のところがとても整理されているなと感じました。苦労されたのではないですか。

荒井:そうですね。ただ、認証取得を目標に掲げたことで、関係部から多くの協力を得られました。やはりこのような第三者の公平な評価をいただく機会は非常に貴重なものですね。

色々な方からアイディアをいただくことでよい改善ができた

― 一冊のパンフレットにもいろんな部署のかかわりがありますので、それを改善していくのは大変な作業だと思います。

荒井:今回は、私どもが取りまとめ部として、取組み意義やスケジュールなどを事前に関係部に周知できたことで、関係部の協力も得られたと思っています。

― 各部署の調整のほかに、何か苦労されたところはございますか。

荒井:これまで色々な方のご意見を聞く機会は少なかったのですが、今回の改善にあたり、印刷会社様などからいろいろなご意見、アイディアをいただくことで、従来の改善作業とは違うことができたと思っています。

認証取得が社内にもいい影響を与えている

― 認証を取得されて、まだあまり時間が経ってないですが、社内社外から何かフィードバックのようなものはありますか。

荒井:社内で、今回認証取得第1号が取れたことを関係者に案内したのですが、その結果、当社のウェブサイトや、アンケートチラシへの掲載依頼がありまして、社内外にも広めることができそうです。その他、関係部の広告作成担当者からも問い合わせがありまして、いい影響があったのではないかと思っています。

― 携帯電話のパンフレットのように下に小さな文字でたくさん注意事項や条件が書いてあると、生活者も勘ぐってしまうことがあるようです。ですから、このように堂々と書かれていると、信用も高まるのではと思います。

荒井:以前のものは紙面を多くとっておらず、文字が小さいものになっていました。今回は紙面の制約を外して、見やすさの観点で根本的に見直しました。

― 中ももちろんですが、このように扉に目的と目次があるだけでも、見るほうはかなりストレスが軽減されます。すんなり中に入っていける感じがしますね。

荒井:ここは関係者からの要望も多くて苦労したところです。やはり関係者からすると、あれもこれも紹介してほしいということがあり、どうしても情報過多になってしまうのですが、そこは思い切って絞らせてもらいました。

荒井幸夫氏

事業を挙げてUCDA認定2級取得に取り組んでいる

― 最近はUCDA認定2級を取得される方も増えていますが、社内の皆さんの仕事の仕方などに何か変化はありましたか。

荒井:2級取得者は現時点で70名を超えています。講座を受けた後も、各チームでフィードバックや、勉強会をしています。また、各部署でUCD化に向けた推進者を選定しています。役割を明示することで、事業として取り組む意識をさらに高めようとしています。

― 最近はよくコンプライアンスや審査部門の方が2級講座を受けにいらっしゃいます。せっかくわかりやすいものを作っても、最後に元に戻ってしまうということに皆さん気づかれたようです。

荒井:素晴らしい取組みですね。今、私どものチームが広告審査の決裁票を取りまとめていて、関係部の担当者とかなりやりとりをしています。今後はお互いに意識をさらに高めていくことが必要ですね。

2023年度のアワードには各部署の制作物をエントリーして評価を受けたい

― 三井住友信託銀行様の取組みは、金融庁の顧客本位の業務運営に沿って色々な情報をわかりやすくしていくということだと思いますが、何か具体的なことはありますか。

荒井:2022年度は総合賞シルバーを獲得できましたが、今年度は、さらに取組みを強化しようということで、2023年度のUCDAアワードに、各部署の制作物をエントリーして各部署が評価をいただく予定です。12部署が次回エントリーを予定していますので、各部の担当者が実際に評価をいただくことで、改善を進めわかりやすい資料を作成するとともに、社内にUCD化の意識醸成を図っていけたらと思います。

― 素晴らしいですね。アワードのレポートには専門家の評価とか、生活者の評価結果が出ますので、その中にかなり気づきがあると皆さんおっしゃいます。今年のアワードは楽しみですね。

荒井:勉強会では各担当者もかなり刺激を受けていましたので、意識は高まっているのではないかと思います。

第三者、生活者の目線で評価していただくことがいちばんありがたい

― それでは、何かUCDAに対してのご要望、こういうことをもっとしてほしいというようなことがありましたらお願いします。

荒井:どうしても自分たちのルールを順守しようという意識が強いと、なかなか社会の声に対応できないところがあります。ですので、認証の取得やアワードで、第三者として、生活者としての目線で客観的に評価や指摘をしていただくことがいちばんありがたいです。今後もご意見をいただきながら仕事に反映していきたいと思っています。

― ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。