大野和貴氏

インタビュー
(インタビュー当時)

株式会社イセトー
営業統括本部
CRS営業部長 大野 和貴氏

弊社のあらゆるサービスの根底にUCDがある

― イセトー様は印刷会社としてはかなり早い時期からUDに取り組まれて、今は多くのUCDA認定取得者がいらっしゃいます。全社的なUCD推進活動についてお聞かせいただけますか。

大野:弊社がUDへの取り組みを始めたのは2004年です。今ではUCDAの賛助会員でUCDAの窓口企業にも参画し、今年で7年目になります。今、VUCAの時代といわれ、新形コロナウイルスによる生活様式の変化などでパラダイムシフトのようなものがあって、お客さまの求めるものもどんどん変化しています。弊社ではそれに伴い社員もマインドの変化が求められています。紙だけではなく、デジタルサービスにも力を入れており、今では弊社のあらゆるサービスの根底にUCDがあります。

― UCDを導入すると1社企業のコストが下がるのですが、印刷会社様の中には、コストが下がると自分たちの仕事まで削られるのではないかと考える方もいらっしゃいます。そんな中イセトー様は前向きにUCDを推進されていらっしゃいます。

大野:弊社もいろんなソリューションがあるのですが、プロダクトアウトでクライアントに勧めることはあまりしていません。クライアントが求めるものに対応する。それでクライアントのコストが下がるのなら、それをきちんとやる。ただし下がった分を他に使いましょうと、その提案も併せてさせていただきます。だから弊社の売り上げが下がることはないという考えです。

― イセトー様は印刷物や動画以外でも色々なソリューションをお持ちですが、その辺りはいかがですか。

大野:紙だけではなくデジタルツールを含めて、それぞれのコミュニケーションツールの特性を活かし、わかりやすさ使いやすさを今後も実現していきたいと思っています。我々の仕事はコミュニケーションチャネルを提供することだと考えています。色々と生活様式が変わる中で、今後求められる新しいコミュニケーションチャネルの創出にもチャレンジしていきたい。そのためには世の中のニーズ、クライアントのニーズをいち早くとらえることが必要です。お客さまのわかりにくさを解消していくことは弊社の使命ですし、企業がUCDを進めていくことで、人々に心地よい体験を提供できると思っています。

企画段階からクライアントと共創していくことを心がけている

大野和貴氏

― クライアントのサポートをされて、昨年のアワード受賞に貢献されました。UCDAアワード2022に関してお話をいただければと思います。

大野:まずコミュニケーションデザインカテゴリーでエントリーされた三井住友銀行様のツールで、UCDAアワード2022を頂いています。紙の「わたしの年金とわたしの未来」はUCDA認証「伝わるデザイン」を取得しています。併せて、一緒にエントリーしたWEBの「年金試算シミュレーション」は、課題抽出のご支援などをさせていただいています。このようにツールを作り上げていく上では、クライアントの担当の方と企画段階から共創していくことを心がけています。今回のアワードも、すでにあるものの改善ではなく、新規にお受けした案件でした。弊社はクライアントにヒアリングして、時には担当の方も気づいていない課題を弊社から見つけて提案し、一緒に解決方法を考えます。クライアントと寄り添って進めていくことを大切にしています。
もう一つ、今回取り組んだ事例として、弊社の若いメンバーを対象に年金についての理解度をヒアリングしました。でき上がったプロトタイプに対しては弊社の若手社員をターゲットにしたユーザーテストを行って改善につなげました。クライアントが求めることに対して、それ以上の価値を提供していく。それを評価していただいて例年ご採用いただいているのかなと感じています。

― 昨年のコミュニケーションデザインカテゴリでは、印刷物とデジタルの両方の特性をうまく使っているという、実行委員会の非常に高い評価がありました。

大野:まさにその部分に一番時間がかかりました。紙とデジタルをどう組み合わせていくかがコミュニケーションデザインだと思っています。

お客さまにとってよいツールを作る、その延長線上にアワードがある

― イセトー様のPRポイントはどのようなことですか。

大野:お陰様で、一昨年、昨年に続き、参加した協賛企業帳票コンテストにおいて、最高賞の実行委員長賞をいただきました。ありがとうございました。帳票に対するUCDの力をお見せすることができたのではないかと考えています。これも実際に使用するお客さま目線でUCDA認定取得者が課題を抽出して、改善を進めた結果だと思っています。

― 同じテーマで競い合うと、非常に迫力がありますね。「この手があったか」というような発見があるし、制作された皆様にも新しい発見があったのではないかと思います。

大野:弊社も入社2年目の社員が中心になって、1年間学んだUCDをどれだけ発揮できるか、チームで取り組んでいます。自分も経験したことがある社会的な題材ですと、自分でも興味を持って調べますし、それによって社内で議論が活発になります。いい機会をいただいているなと思います。

― 苦労の成果は出ていましたね。今年のアワードに向けてはいかがですか。

大野:何をテーマにしていくか、こういうツールを考えているけれど、これで本当にエントリーできるのかなど、色々考えています。ただ注意しなければいけないと思っているのは、アワードのためにツールを作るというのは本末転倒なので、もちろんクライアントにも使っていただき、お客さまにも良いと思っていただけるものでなければいけない、その延長線上にアワードがある、そういう考えでいます。

今後もUCDの推進を加速させていきたい

― それでは最後に、UCDAに対してご要望がありましたらお願いします。

大野:これからも引き続きUCDに取り組んでいきたいと考えています。コミュニケーションデザインについては、UCDAが今後も世の中の先陣を切っていただきたい。UCDAには産官学の知見が集まっているし、これをオープンイノベーションとして推し進めていただきたいと思っています。DXの時代だと言われますが、過度に進むと情報弱者が生まれてきます。誰も取り残さないという理念からも、UCDへの取り組みはこの問題に大きく貢献できると感じています。我々はUCDAの窓口企業として、UCDAとともにUCDの推進をさらに加速していきたいですし、コミュニケーションの円滑化を通して社会課題の解決に貢献することで、弊社のビジネスも拡大していきたいと考えています。

― 本日はありがとうございました。