電通ダイバーシティ・ラボ代表
世の中の多様性を踏まえ、ビジネスをどう変革できるか
― はじめに、林さまのご担当業務を教えてください。
林:現在は、株式会社電通のサステナビリティコンサルティング室に所属しています。
広告、宣伝、マーケティング以外にもビジネスコンサルティング全般を担当する部署で、地球環境、カーボンニュートラル、生物多様性、DEI(ダイバーシティ、エクイティ & インクルージョン)などのサステナビリティ課題をテーマに、クラインアントのビジネス変革をサポートすることをミッションとしています。
2011年に発足した部署横断のバーチャルチーム「電通ダイバーシティ・ラボ(DDL)」の代表としても活動を続けてきました。
― サステナビリティコンサルティング室では、どのような活動をしているのでしょうか。
林:当事者をはじめ多様なステークホルダーの皆様と共に、クライアントのビジネス課題を発見しサポートしたり、世の中の多様性を踏まえ、ビジネスをどう変革できるかコンサルティングを行っています。
社員育成であれば人事部門、商品やサービスのブランディングであればマーケティング部門、技術開発であれはR&D部門、経営全般に関わる問題は経営層など、多様な部門とやり取りします。
多様な人びとのインクルージョンは「未来志向」
― なぜ企業にDEIの視点が重要なのでしょうか?
林:DEIは未来的・包括的取組です。あらゆるステークホルダーとの関係性を踏まえ、組織横断的にコンサルティングしていく必要があります。
日本は100年以上続く長寿企業が多い国ですが、企業が設立した当初と、100年後の経営維持・事業拡大のミッションは当然異なります。多様化する社会にどう対応し、インクル―ジョンしていくか、未来志向=DEIの視点が重要です。
― 2023年3月には、電通、専門家、当事者、UD関連団体との「インクルージョンと事業成長の共創コンサルティング」が始まりました。UCDAもこれに参画しています。
林:2040年、日本は超高齢社会がピークを迎え、その後急速な人口減少が進みます。10年、20年、30年後の社会を想定した時、今よりインクルーシブなマーケティングにシフトしなければ企業は存続できません。
これまでマイノリティとして扱われてきた障がい者や外国人、高齢者などは、事業戦略上、エクスクルージョンされがちでした。そうした多様な人びとを排除せず、価値提供すべき相手としてインクルージョンし、市場の多様性に意志をもって目を向けていかなければ、マーケットの拡大も維持すらも不可能です。この多様性とビジネスの発展を支援するのが、「インクルージョンと事業成長の共創コンサルティング」です。
プロジェクトメンバーが「UCDAアワード2024」に登壇!
UCDAとも連携 −インクルージョンと事業成長の共創コンサルティング−
― 「共創」もキーワードですね。
林:クライアント企業の多くが「重要だが、何から始めていかわからない」と悩んでいます。コンサルティングを通し、企業の間に入ってDEIをポジティブな企業活動にサポートしていきます。課題発見から戦略立案、組織作り、内部の人員育成、またプロセスを開示することで、まさに共に考えるパートナーになれるかが大切です。
― 林さまはがUCDAに注目したきっかけはなんでしょう。電通とはこれまでも「みんなの文字」や「みんなのピクト」の研究開発、UCD研究部会の活動でご一緒させていただきました。
林:「ユニバーサルデザイン」の間に「コミュニケーション」が入っていますよね。
電通がコミットすべき領域そのものだと思いました。ユニバーサルデザインはハード面だけではありません。コミュニケーション全体を、どのようにユニバーサルデザインに落とし込んでいくのか、UCDAの活動が非常に興味深いと思いました。
ハッピーな未知との遭遇を!
― 最後に、この記事を読んでいる皆さんに一言お願いいたします。
林:インクルージョンによって企業にもたらされる最大の価値は未知との遭遇です。社会が目まぐるしく変化する中で、未知との遭遇をポジティブに捉えることができれば、新しい価値の創造につながります。
企業のイノベーションのために、恐れるのではなく「ハッピーな未知との遭遇」と捉えることが、DEIの初めの一歩ではないでしょうか。
― ありがとうございます。次回のインタビューがあれば、電通ダイバーシティ・ラボの活動もお聞きしたいと思います。