消費生活アドバイザーは、消費者と企業をつなぐパイプ役
- 本日は、消費生活アドバイザーとして長年活動され、UCDAの評価員やアワードの実行委員としても活躍されている石橋さまにお話を伺います。最初に、消費生活アドバイザーとはどのような資格なのでしょうか?
石橋:企業や行政などの消費者関連部門で苦情相談を受けるだけでなく、企業や行政に消費者のニーズや問題点を伝え、より良い商品やサービスの開発・改善などを行う役割もあります。消費者、企業、行政を繋ぐパイプ役ですね。
アドバイザー取得後は、育児や介護で家庭にいるアドバイザーも活躍できる場としてワーキンググループを結成。高齢者向け月刊誌のコラムや、毎日新聞で新商品紹介の執筆などを行ってきました。
自身の介護の経験から「障がいや加齢で体が不自由になっても、道具の力で自立し心地よく暮らすこと」また「作り手、売り手、使い手が目先の便利や利益にとらわれず、互いに育て合い感謝し合える幸せな関係を築くこと」をモットーとしてきました。
生活者の立場から、生活者の本音を伝えたい
― 現在は、食品包装の専門誌『月刊食品包装』(日報ビジネス株式会社)に「パッケージ応援団」というコラムを執筆されています。
石橋:きっかけは、当時の株式会社日報が出版する包装雑誌「Packpia」での連載です。食品パッケージの消費者アンケートや聞き取り調査を、消費者の視点で分析・検証し、連載は15年以上続きました。
企業も様々な消費者調査を行っていると思います。ただ生活者は、これが「普通」だと思っていることは意識にも上らず、誰にも当たり前だからと、あえてわざわざ説明しないこともあります。そこで「何故そう回答したのか」、アンケート回答の奥にある生活者の本音を、生活者の立場から伝えたかった。 読者からは「メーカーサイドでは気付かないような、痒いところに手が届く指摘」と好評だったようです。
「Packpia」の連載終了後も、パッケージの表示や使い勝手、消費者目線での気づきや企業努力への感謝など、「パッケージ応援団」として現在も連載を続けています。

寄稿や座談会など消費者・生活者視点で長年に渡り活動を続けている
お早めにってどのくらい? 期限表示のわかりにくさ
― 石橋さんの考える、パッケージの課題はありますか?
石橋:例えば「開封後はお早めにお召し上がりください」。生活者としては「お早めに」がどの程度か想像がつきにくいものもありますよね。これが「賞味期限(開封前)」だけでなく、「開封日メモ欄」「開封後の使い切りの目安」のセットが表示されていれば、生活者は「開封日を書く」という行為で、それぞれの使い切り期限を意識できます。それにより、おいしく安全に使い切れる適量を選択でき、フードロス削減にもつながりますよね。
また消費期限やアレルギー表示など重要な情報ほど、業界で表示位置の統一が図れるとよいですね。生活者は不満やストレスには敏感ですが、改良点やメリットには気づきにくい。こうした企業努力は積極的に発信し、生活者もその恩恵を実感すれば、メーカーへの感謝にも繋がるのではないでしょうか。
「わかりやすさ」は、伝える側にもメリットがある
― UCDの考えを知ったことで、ご自身に何か変化はありましたか?
石橋:UCDAのセミナーを受講したことを機に、「情報のわかりやすさ」「伝わりやすさ」という概念を初めて知りました。「生活者にわかりやすく」と聞いて生活者だけが優遇されているように感じましたが、問い合わせや苦情を減らし、業務コストを削減するなど企業側にも大きなメリットがあったのですね。
小さい面積の中で、多くの制約があるのがパッケージです。いかにわかりやすく伝えるか、企業の大変さも感じるようになりました。

「UCDAアワード」実行委員としてのご活動(手前)
生活者の思いをもっと届けてほしい!
― 最後に、UCDAに期待することを教えてください。
石橋:保険・金融業界以外にも、食品・医薬品・家電の取り扱い説明書など、その対象を更に広げてほしいと思います。そのためには、UCDの考えをもっと伝え、もっと広めてほしい。企業だけでなく消費者教育も大切です。そして第三者機関として、中立的な立場から消費者の思いを企業に届けてほしいと思います。
― ありがとうございます。これからも「生活者」視点でいろいろと教えてください。引き続きよろしくお願いします。