住友生命保険相互会社 執行役員 契約サービス部長 乾 真人 氏
聞き手:一般社団法人 ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会 理事長 福田泰弘

※この対談は2月3日に行われたものです。

社内外の声を活かし、わかりやすく正確な通知を

写真——御社の総合通知は、大量で複雑な情報を、ずいぶん上手に整理されていますね。たとえば、ステップ1・2・3と順番を踏んでいたり、表紙や封筒を工夫されていたり、給付金請求の方法がとてもわかりやすい、といった具合です。

 毎年、すべてのお客さまに、ご契約内容を含め多くの内容を凝縮したかたちでお伝えしますので、わかりやすさと正確性を一番に考えて、読みやすさを損なわないように神経を遣っています。とくに、ページの色調を統一するなど、重要事項がどこかすぐにわかるように心がけています。開発の際は、前年の通知に対する反響や各部門ごとの反省点を持ち寄ってPT(プロジェクトチーム)で検討し、来年はこのように修正しようという作業を繰り返します。また、CS向上アドバイザーという社外の専門家の方々からご意見を伺う機会を設け、デザインや記載方法、内容についてご意見を頂戴し、反映させていただいております。

——伝えたいことが多い反面、コストには限りがあります。この関係が非常に難しいと思いますが?

 各部門から、「こういう内容を載せたい」という要望は、紙面以上に出てまいります。それをPTで絞り込んでいくのが、いちばん骨の折れる作業です。

——ほかに、改善を進めるうえで具体的な事例をお聞かせください。

 今年からお客さまに発送した総合通知と同じものが、コールセンターのモニター画面で見られるようになりました。総合通知をご覧になったお客さまからの「このページのここに書いてある金額は?」というようなご質問に対して、今まではお調べするのに時間をいただいていたものが、より迅速・正確にお答えできるようになりました。

どのようなお客さまにも公平に、必要な情報がわかるデザイン

写真——御社では、女性のお客さま向けの商品にも力を入れておられますが、明るく親しみやすいデザインは女性を意識されてのことでしょうか?

乾 このところ女性の保険の加入率が高まっています。とくに、比較的お手ごろに入っていただける医療分野や個人年金ですね。どんどんお客さまの層が厚くなってきており、女性だけに絞ることはできませんけれども、性別年代を問わず、受け入れていただけるデザインを心がけています。

——総合通知をはじめ、コミュニケーションの分野でもユニバーサルデザインの考え方が必要になってきているようです。

乾 生命保険のお客さまは幅広い顧客層ですので、どのような方にも公平に必要な情報がすぐにわかるというユニバーサルデザインの基本思想を取り入れさせていただいています。保険そのものは目に見えない商品ですので、結果的にお客さまにお届けする総合通知などの印刷物で、必要な情報をわかりやすく、という原則を貫けるように努力しています。また、当社で毎年ご提供しているカレンダーも、字が見やすいデザインにしており、おかげさまで好評をいただいています。

——契約者の幅もどんどん広がり、デジタル化も進み、コミュニケーションの方法が複雑になるなか、紙媒体とデジタル媒体、どちらを中心にしていくのか、あるいは併用していくのでしょうか?

乾 コミュニケーションの方法は複線化が進んでいくと思っています。基本的には、年に1回は総合通知を郵送でお届けして、ご加入情報などをわかりやすくご確認いただくのがベースですが、IT化が進んだことにより、ご自分でリアルタイムに欲しい情報を取り出したいというニーズをお持ちの方も増えてくると思います。それに対応したサービスもご用意しなくてはなりません。段階を踏みながら、総合通知と、タイムリーな情報の提供の両方を並行して進めていきたいと考えています。保険に関する手続きも複線化が進んでおり、営業職員にお申しつけいただく方法もございますし、インターネットにログインして、ご契約内容の確認や手続きをご自身でしていただくスミセイダイレクトサービスもございます。お客さまのさまざまなご要望にお応えしていきたいと考えています。

お客さまに積極的に働きかける「スミセイ未来応援活動」を展開

写真——総合通知はコミュニケーション上で重要な役割を果たしていますが、お客さまへのご連絡という機能にとどめるのか、商品の提案など、それ以上の機能も付加する方向でお考えですか?

乾 最近では新しい特約をはじめ、毎年のように商品を改善していますので、紙面には限りがありますが、できるだけそのような情報も掲載していきます。さらに、営業職員が必要に応じてコンサルティングさせていただいています。

——お客さまへの訪問活動で、「保険安心カルテ」を使って契約内容を確認なさっておられます。総合通知と訪問活動が、お客さまとのコミュニケーションの両輪になっているのでしょうか。

乾 保険安心カルテは、当社から総合通知を一方的にお送りするだけではなく、お客さまのご家族状況の変化などの情報をご報告いただき、その情報を活かしていただくという趣旨で進めてきました。さらに来年度は、4つの先進の価値をお客さまにお届けするブランド戦略をスタートさせます。1点目は、コンサルティングとサービスをさらに続けさせていただくという「“いつも、いつまでも続く”先進のコンサルティング&サービス」。2点目は「“強く生きる”ための商品開発で業界をリードする」。これまでは、どちらかというとサポートさせていただいたり安心をお届けするということでしたが、よりお客さまへ積極性を出していき、強く生きるための商品開発を進めていきます。3点目は、「一歩先行く“感動品質”のお客さま対応」。お客さまに感動していただけるレベルの対応品質を目指します。4点目は、保険会社としてさらにサポートさせていただくという「“健康な人生・豊かで明るいシニアライフ”を応援する、進化するサポートプログラム」。この4点の先進の価値をお届けするために、新年度から「スミセイ未来応援活動」と名付けて、訪問活動をさせていただこうと思っています。保険安心カルテも「未来応援カルテ」といたしまして、従来の内容に加えて、お客さまやご家族のご入学、ご就職、ご結婚などのライフイベントも正確に把握し、のちのちの定期的な情報提供やサービス提供に役立てていきたいと考えています。

一般社団法人 ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会 理事長 福田泰弘

Column インタビューを終えて

写真住友生命保険相互会社さまからは、お客さま第一の視点が徹底されている印象を強く受けました。総合通知とお客さま総訪問活動により常にコミュニケーションの向上に注力されており、従来の「保険安心カルテ」からさらに進めて「未来応援カルテ」を作成し、お客さまが満足のいく商品を提供することはもちろん、感動を与えるレベルまで目指されています。しかもラインを中心にバックヤードのスタッフを含めて全社運動で推進されています。こうした「わかりやすいコミュニケーション」への改善努力が総合通知に反映されていると感じました。