コミュニケーションのわかりやすさ

写真AIU保険会社
パーソナルライン企画推進部 R&D課長 河合良成氏
マーケティング部 マネージャー 和泉潤氏
業務品質改善部 マネージャー 木曽基弘氏
(写真:左から)

2012年11月6日収録

Webは読むものでなく、見るもの
最小限の情報で資料請求につなげる

写真——「情報のわかりやすさ賞」受賞おめでとうございます。

和泉 UCDAアワードの受賞内容や授賞式の模様は、イントラネットやビデオなど、社員と代理店向けの社内メディアで発信しました。社員や代理店、パートナー企業の方々に広く認知されたかと思います。

河合 受賞のニュースを知った他の部門の担当者から、「自動車保険のホームページは確かにわかりやすいね。」と言われたり、お祝いの言葉をかけられたりといった反響がありました。

——受賞された自動車保険の募集サイトで追求した「わかりやすさ」のポイントをお聞かせください。

和泉 2010年の保険法改正とともに抜本的な業務改善を行うため、募集パンフレットを刷新しました。ホーム ページはそのパンフレットを踏襲するだけでなく、よりお客さまにわかりやすく・見やすく・伝わりやすくすることを徹底しました。パンフレットではイラスト を多用するなど、「見る」という切り口で改善を進めました。自動車保険のホームページについては、媒体特性を考えたデザインにもチャレンジしました。紙媒 体だと、見て、読んで、納得となりますが、ホームページはそれほどじっくり読まれません。閲覧速度がとても速く、いわば高速道路で道路標識を見るようなも のです。

——iPhoneなどの次世代機を使うユーザーは、ウェブサイトを歩きながら閲覧します。もはや「読む」でなく、「見る」ですね。

和泉 そんな理由から、イラストを大きくあしらうなどして、お客さまが商品の特長、補償内容、保険料におよその目安をつけることができ、コンサルティングを行なうプロ代理店にすんなりと誘導できるものを目指したわけです。

写真河合  以前のホームページは、パンフレットとほぼ同内容でした。しかし、せっかくお客さまがウェブで資料請求してくださったのに、ウェブと同じようなパンフレッ トが届いては意味がありません。あくまでウェブは、弊社のセールスポイントであるプロ代理店の高いコンサルティングスキルをお客さまに提供するきっかけ。 最小限の情報にして、とにかくわかりやすく、「読む」のではなく「見る」ものというスタンスで情報を削りました。勇気が要りましたけれど(笑)。ここがギ リギリというところまで文字数を削って文字を大きくし、とにかくビジュアルで訴える。資料請求につなげるために、資料請求の部分はどんと大きく配置しまし た。それが苦労した点であり、頑張った点でしょうか。

——多くの情報を伝えるために詰め込みすぎて、逆にお客さまにはわかりにくくなってしまうところを、いかに引き算するか。UCDAとしてもメスを入れたいと考えています。

官公庁のホームページを参考に
デザイン性より見やすさを優先

写真——改善にあたってデザインで工夫された点について、もう少し具体的にお伺いしたいと思います。

和泉 募集文書は8ポイント以上という決まりがありますが、ウェブではデフォルトを12ポイントとしまし た。パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンでもストレスなくご覧いただき、資料請求をしていただけたらいいなと。だから弊社ホームページの文字 は全体的に大きいのです。当初は「どうしてそんなに大きくするのか」と反対もありました。小さい文字を使えばかっこよく見えますし、デザイン会社などか ら、「デザインが良く見えませんよ」と指摘もされました。しかし、かっこよさを目指すわけではありませんし、何が書いてあるかはっきりさせるには、文字を 大きくする必要がありました。

——文字を大きくしたのは画期的だったのではないでしょうか。

和泉 そうですね。10ポイント、9ポイントの小さな文字を使っている会社が多い中でしたので。参考にし たのは、官公庁のホームページです。高齢者など、いろいろな方が見ることを前提としているためか、使われている文字が大きいですよね。私自身、小さな文字 がだんだん辛くなる年代ですので(笑)、大きくしたら見やすいだろうと。また、事故の説明に関してはイラストを使って、より簡単にイメージしていただける よう工夫しました。

——どうすればお客さまに伝わるかという点について分析されましたか?

和泉 基本的には、「こうすれば良くなるのではないか」という自分たちの視点から進めました。

河合 ただ、色遣いやレイアウトなど、自分たちだけで判断するには迷うところもありました。いくつかの選択肢を用意し、部内でアンケートを何度も繰り返しては支持が多いものを採用する作業を行いました。

——今後はどのような改善を行うお考えですか?

和泉 今回は自動車保険のホームページで受賞しましたが、お客さまにお届けできるAIUの保険商品、サービス全体を同じようにわかりやすくしていきたいと考えています。
全てをわかりやすく使いやすいものにするために、各部門との調整を行ないワールドワイドなAIGブランドの基本コンセプトやグローバルガイドラインを遵守 しながら、独自のコミュニケーションデザインを作成しないといけないと思っています。その際には、作成基準にUCDAから教えていただいた知見を一部入れ させていただきたいですね。例えば、一行の文字数を抑える、適切な行間を保つなどです。

——印字率の測定や、見やすい色遣いかどうかの識別ができるツールも用意していますので、ご活用いただければと思います。

専門家と生活者の意見が
一度に聞けるのが有難い

写真——アワードに対するご要望はありますか?

河合 保険金請求書は、お客さまに直接ご記入いただくもので、尚且つ非常に重要な書類ですから、評価の対 象にしていただきたいですね。弊社では、保険法の改正に伴い従来に比べて文字と記入欄を大きくした分、ページ数は増えてしまったのですが、実際、どれくら いわかりやすいのか測ってみたい気持ちはあります。

和泉 懇親会では参加された会社の方々と交流できて非常に良かったのですが、アワード以外にも受賞された パンフレットなどの見本をすべて陳列していただきたいですね。どこがわかりやすくて「わかりやすさ賞」を取ったのかなど、授賞式で説明は聞けますが、実物 もあればもっといいのではないでしょうか。

——貴重なご意見ありがとうございます。評価に対して何かお感じになったことはありますか?

和泉 評価を受けて、目指すべきことができているのかなと感じました。全社一丸となってお客さま中心主義 の視点で様々な活動を行なうなかで、活動のひとつが受賞という結果になり、関係者も喜んでおります。他のメンバーの励みにもなって、今後ますます良いもの が出来上がってくると感じています。

河合 評価の項目のなかでは、Another Voiceが良かったですね。生活者の声は多く聞きたいですし、モニタリングの役割も果たしていますので、とても有意義だと感じました。弊社のパンフレッ トは、専門家からの評価は厳しいものもありましたが、生活者の評価は高かったのですよね。アワードでは、専門家と生活者の意見が一度に聞けるのも有難いで す。通常は、どちらか一方になってしまいますので。

——そうおっしゃっていただけると、励みになります。本日はどうもありがとうございました。