1983年3月 同志社大学 経済学部卒業。同年4月 安田生命保険相互会社入社(合併により、明治安田生命保険相互会社に改称)。富山支社長、営業人事部長、商品部長などを経て、現在は、取締役 執行役副社長。
明治安田生命保険相互会社は、2016年度、2019年度に「アナザーボイス賞」を受賞し、2020年度初めてアワードを受賞した。
コロナ禍によって医療保障の必要性が再認識された
― UCDAアワード2020の受賞、おめでとうございます。
昨年からのコロナ禍で、生命保険会社として今までのビジネスモデルや役割が大きく変わってきたのではないかと思います。
ここ1年間世界的なパンデミックに直面し、特に医療保障の必要性が多くの方々に再認識されたと実感しています。保険の対象になるリスクは基本的には個人の問題で、人によってさまざまです。今のように感染症が全国的に蔓延し、しかも終息も見通せない中で、皆様「自分がリスクの当事者だ」という意識が高まったのだと思います。
そして、人と人の接触が制限されたこともポイントです。いままで生命保険のコンサルティングは対面がほとんどでしたが、現在、弊社でも8割近くは非対面、オンラインになっています。コロナ禍がなくても社会のデジタル化は一定程度進んできましたが、コロナ禍によってその流れはさらに加速し、色々なものが複合的になっているのがいまの社会ではないかという気がしています。
― 急速にデジタル化の流れが進んだように思います。ビジネスにはどのような影響が出ると思いますか。
デジタル化が進むと情報が多様化し、色々な人が色々な情報に触れることができるようになります。一方で、必要な情報の取捨選択が難しくなっているとも言えます。つまり、我々はいままで以上に多様なアプローチでお客様と接点をもちながら、保障をわかりやすく丁寧に情報提供していかなくてはいけない。お客様からの情報収集能力を高めながら、最適な情報を提供していくという新しいコミュニケーションが必要になっていると思います。
また、お客様の高齢化も進んでいます。高齢のお客様にも丁寧でわかりやすく、直感的にご理解いただけるような情報提供をしていかなくてはと考えています。
我々は対面と非対面をどのように機能的に融合させるかを考えつつ、新しい社会環境に合った電子媒体を開発する必要に迫られています。弊社でも、いままで紙媒体で説明していたものを、デジタルを通じて動画配信したり、スマートフォンに最適化した設計書にしたり、そのようなことを既に実現させています。
― デバイスに応じた見せ方を工夫されている最中なのですね。
今後は、ARを活用した補助動画や、音声入力、フォロー機能などを搭載した設計書を開発したい。それらと並行して、今回高いご評価をいただいた、紙媒体もまだまだ継続してブラッシュアップしていきたいと考えています。
商品説明の前にコンセプトの説明が重要
― 貴社は新しく、手話リレーサービスを始められるとお聞きしました。時代に即した、多様性に配慮する取り組みの結果が、UCDAアワード2020だったのではないかと思います。受賞された認知症ケアのパンフレットは対象が50歳以上とかなり高齢の方向けのものです。評価結果を見ると、高齢者の評価が非常に高かった。
当社でも、募集資料は比較的若いスタッフが作成しています。若年層が作成にあたると、高齢の方が理解できるかわからないなど、作成者とお客様の視点に一定のギャップが生じる可能性があります。そのため、作成にあたっては外部の機関の方々や、お客様と身近に接している営業担当者などからヒアリングを実施したり、表現ひとつをとっても、できるだけ専門用語、業界用語ではなく、一般的な言葉で理解を形成していくことに努めています。
医療保険のコンセプトパンフレット(UCDAアワード2020受賞) |
― UCDA認定2級講座には、貴社のコンプライアンス部門と品質管理部門の方が多く受講に来られていて、「わかりやすさ」に対してとても前向きに取り組んでいらっしゃるなと感じます。
生命保険に詳しくないお客様にも十分にご理解いただくことが、我々保障の提供者の大きな責任です。特に今回受賞させていただいた認知症を例にとりますと、これは長寿社会で新しく生まれたリスクなので社会的な理解はまだまだというのが現状です。新しいものを正しく伝えていけるかどうかは、こういうお客様の手元に残るパンフレットなどが重要だと考えています。
― このA4を横に開いたパンフレットというのは特徴的で、紙を横向きに使ったことで流れが生まれ、わかりやすくなっているという意見が非常に多くありました。
横長のほうがストーリー性をもって見せていきやすいということがあります。今回はあえてそこを意識しました。生命保険の販売では、伝統的にまず商品の説明をします。でもその前に、「なぜその商品が必要なのか」という説明が重要です。このコンセプトパンフレットは、商品開発のコンセプトをご理解いただくために作ったものです。
― 確かに、商品の必要性を理解してから加入することは欠かせないですね。
当社ではこのコンセプトパンフレットでのご説明を、必ず行なうルールにしております。コンセプトパンフレットを説明していない、あるいは手渡ししていない場合は、ご契約のお手続きを完了することはできないという仕組みです。
お客様の反応を注視しながらさらに情報品質を高めていきたい
― 今回の受賞について、社内外で反響はいかがでしたか。
アワードをいただいたのは今回が初めてでして、制作側にとっては非常に自信になったと思います。社内的には、受賞以前からこのパンフレットは非常に使いやすいという声がありました。消費者の専門委員の皆様や外部の機関の方々からいただいたアドバイスを順次反映しながら作っています。これからもお客様の反応を注視しながらさらにクオリティを高めていきたいと思います。
― 今後の取り組みについてお聞かせください。
今日いいものが1年先、3年先にもいいとはかぎりません。お客様の意識や社会のニーズは時々刻々変わっていく。それをどれだけ柔軟に拾い上げていけるかが重要です。他の受賞した対象物からも、業界を問わず取り入れられるものは取り入れていきたいと思います。また、受賞したものを年々拝見していく中で、ニーズの変化も見ていきたい。そういう意味では「わかりやすさ」には終わりがないと思っております。
募集資料の重要性はますます高まっていく
― 私どもUCDAに期待することはございますか。
UCDA様の取り組みは我々にとって励ましになりますし、各種ツールなどのレベルアップに非常に貢献されていると思います。今後ますますUCDAの活動の認知度が上がって、受賞や認証取得の価値が一般に浸透していってほしいです。それから、皆様は多くの媒体をご覧になっているので、我々にとってヒントになるような、皆様の視点、それからお客様の視点で見たさまざまな情報を発信していただきたいと思います。
日本でも、色々な事業会社がインターフェイスの重要性をようやく認識してきたと思います。特に生命保険というのは、「ちょっと使ってみてください」とか、「手に取ってみてください」ということができない。募集資料がお客様とコミュニケーションを図る際の唯一の情報源になりますので、今後はますます重要性が高まっていくと思います。
― 保険は、無形の商品だからお客様と信頼関係を築くことが鍵になってきますね。
弊社には、現在、営業担当者が全国に3万5千人ほどおりまして、もちろん全員が均質な営業能力をもっているわけではありません。それを均質化していくのが募集資料ですので、今後はデジタルを使ったソリューションも活用して、お客様ひとりひとりにあったコミュニケーションの幅を広げていきたいと思います。
― 私どもの活動は、まだまだ一般に浸透していません。もう少し時間がかかると思っています。
時間は必要だと思いますが、やはり1年1年、1日1日浸透を図っていっていただきたい。それが社会的評価を高め、価値を高めるのではないかと思います。UCDA様と我々事業者、それから消費者の皆様、みんなで高めていくべきものと思っていますので、我々としても取り組んでいきたいです。
― UCDAが皆様のお役に立てるよう、情報発信を続けていきたいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。