「第三者」による客観的な評価

05:矢口 博之-5

●計測・分析から「使いやすさ」にアプローチ

写真福田:帳票は、会社にとって血液のようなものです。隅々にまで流れてコミュニケーションに大きな影響を及ぼすもので、大変重要です。帳票類が使いやすい方向へ標準化していくのは素晴らしいことだと思っています。
矢口:いかに使いやすくするかを考えるには、まずは使いにくい場所を見つけて改善することから始まるかと 思います。使いやすくすれば仕事もしやすくなりますし、ミスも少なくなって効率もコストも節減できていく。また効率が上がればコストもさらに節約されると いう流れが当然出てきます。普段使っている紙の上のことですので、帳票レイアウトなんて誰でも簡単に作れてしまうと思いがちですが、なかなかそうはいきま せん。ミスの頻度もレイアウト如何によって大きく変わってくるということはデータにも出ているのですが、まだ皆さん気付かれていないように思います。
福田:作る側が押し付けるのではなく、使う人が使いやすいか、情報が伝わりやすいかが大事ですよね。本 来、主役は使う人でなければならない。ところが、これまでずいぶん主役はつくる人だと間違えられてきた分野のように感じます。実は、私自身も長らく誤解し てきたなと、大いに反省しているところです。
写真矢口:使 いやすい帳票もあれば使いにくい帳票もあるというのは、利用する側に立てば簡単に気が付くことだと思います。でも帳票をデザインする側にもいろいろ事情が あって、ともすれば利用者のことよりも自分たちの都合を優先した帳票を作ってしまうことも少なくないというのが現状ではないでしょうか。そこでいろいろな 人が帳票を使っている状況をアイトラッキングで計測し、フォームアナリストによる帳票デザインの分析と重ねていく必要があります。その成果を設計する側に 戻せる仕組みを作れたら、使う人はもちろんですが、作る人にも嬉しいことになる。よりよい帳票デザインのノウハウの蓄積が、ゆくゆくは企業を元気にし、そ れがレバレッジとなって社会のさまざまなことが少しずつ良くなっていけばいいと思うのです。
福田:これができれば素晴らしいことになりそうですね。
矢口:人間の動きの基本的なところを抑えていけば、必ず定石のようなものが出てくると思っています。そして、これがUCDAの強力なツールになってくれることを期待しています。
福田:本当に出来上がるのが楽しみですね。ありがとうございました。
矢口: ありがとうございました。
――デザインの役割を人間工学の視点から眺めるとまた違った意義が見えてくることがよくわかりました。UCDAでも非常に勇気づけられるお話だったように思います。本日はありがとうございました。

 

*ポステックス:圧力で接着する特殊用紙を利用したシーリングハガキ。受取人にしか見られたくない重要な情報を隠ぺい(シーリング)し、 通常のハガキの2倍以上の情報をハガキと同じ50円で郵送できる。トッパン・フォームズ株式会社が開発。

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