「第三者」による客観的な評価

12:杉山 恒太郎(後篇)-3

●生活者は「もう無駄はいらない」と思っている

写真福田:広告をつくることと伝えることの意味をどうお考えですか。
杉山:本来、伝えるために広告をつくるんですよね。さらに言えば、伝えるだけではもの足りなく、人々の心 を動かすのが目的です。極論をいえば、つくるのは手段で目的は伝えること。それが、つくることが目的になってしまうと、自己満足的なものしかつくれない。 他人に対する思いやりとか、なぜ必要とされているのかまで深く考えないと、空振りしますよね。実は空振りは多いですが(笑)。
福田:ついついプロダクトアウトというのか、生産者中心な考えになっちゃう。
杉山:いいものさえつくれば、それは伝わるし当然、売れるんだ、と。それはおまえが考えるいいものだろうって(笑)。
福田:広告にかぎらず、いいものをつくっても、受け入れられないと意味がない。
杉山:欧米の広告に比べて、日本の広告は「新発売」というフレーズがとても多かったんです。ただ新商品を出せば消費者 は買うだろう、と新発売して、新発売じゃないと広告もしない。でも、この時代、家具も直しながら3世代にわたって使うとか、同じものを長く使っていくヨー ロッパ的な考えへと変わっていかざるを得ないだろうし、そのほうがもう少し世の中、ほんのり幸せになる。(笑)
広告も「新発売」というよりも「いいものを長く使いましょう」ということがベースになっていくのでは。「なぜ、この商品が必要なのか」というところをきち んと固めてから商品を開発しないと、無駄なものばかり増えるし、「もう無駄はいらない」という生活者のコンセンサスは固まっていると思うんです。
写真福田:これからは、生活者を中心においた考え方が進んでいくんでしょうね。
杉山:昔は送り手が情報をいちばん持っていたけれど、いまは受け手といわれる生活者がインターネットで世界中の情報を手にしている。
福田:広告業界でも「ターゲット」という言葉は使わなくなりましたか?

杉山:「ターゲット」って、送り手側のちょっと上から目線の言葉ですよね。マーケティングで調査して生まれた層に照準を合わせて、バン!と撃てば当たるという。相手のほうがもっと強い武器を持ってるかもしれないのに。反対に大砲で撃たれる時代ですよ(笑)。

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