「ひと目で健診の流れがわかります」

後期高齢者健康診査受診ハガキが認証を取得

写真宇都宮市保健福祉部 保健所 健康増進課
健康診査グループ 主事 日露 明彦 氏

2013年3月26日

市民に向けたすべての文書を
ユニバーサルデザイン化

————宇都宮市では、「福祉のまちづくり」という観点からバリアフリーやユニバーサルデザインに取り組んでおられますね。

日露 平成8年に福祉都市宣言をし、平成12年には「やさしさをはぐくむ福祉のまちづくり条例」が制定されました。高齢者や障がい者など、すべての方が快 適に安心・安全に暮らせることを目的として、バリアフリーやユニバーサルデザインに関する施策を実施し、公共的施設の整備をはじめ、市民の皆さんと協働し たまちづくりを推進しています。一例を挙げると、バリアフリー化を図るために、スロープや手すり、エレベーターなどを整備する費用を一部助成する「福祉の まちづくり公共的施設整備費補助金」事業や福祉の心の高揚を図ることを目的とし,福祉のまちづくりの模範となる活動や施設などの優良な事例を表彰する「や さしさをはぐくむ福祉のまちづくり表彰」を実施しています。

————「ユニバーサルデザイン文書マニュアル」をホームページでも公開されていますが、どのようなものですか。

日露 私どもの自治体で行われている「こころのユニバーサルデザイン推進運動」という、やさしさや思いやりをはぐくむ活動の一環として作られたものです。 すべての方に見やすく、わかりやすい文書・印刷物を作成するための指針となるもので、市民の皆さんとも意見交換を行い,寄せられた声をできるだけ反映させ ています。内容につきましては,文字の大きさや字体、字間、行間の配慮、簡潔でわかりやすい文章にすることなどに加え、受け手の特性に応じて、点字、音声 での情報伝達、色づかい、問い合わせ先にファクスやメールアドレスなども記載するといった配慮事項も示しています。また、マニュアル本体に、読取装置を使 用すると音声で読み上げる音声コードを掲載する工夫もしています。

————私たちUCDAの活動にも通じるものですね。

見やすいハガキは
職員にとってマニュアルの役割も

————後期高齢者健康診査受診ハガキがUCDA認証を取得された経緯をお聞かせください。

日露 後期高齢者健康診査受診ハガキは、後期高齢者医療制度に加入されている方を対象に年に1回、実施さ れる健康診断についてお知らせするもので、受診券にもなっています。宇都宮市では、春に約5万枚発送されますが、どうも見づらいという問い合わせが多かっ たんです。さらに、何の通知なのかわからずに捨ててしまう方も多数おられました。これがないと受診できませんから、「早く送ってくれ」とせかされて再発行 する手間も相当なものでした。そこで、一昨年くらいに「どうにか見やすくできないか」ということになり、自分たちで改良を始めたのですが、赤で表記して太 字にするのが限界で、頭を抱えていたところに、UCDAさんのことを知りました。

————改善にあたって最大のポイントはどこでしょう。

日露 一番は、ひと目で健診の流れがわかるようになったところですね。改善前のハガキは、「わかる」というよりも視界に入っておしまいでしたが、ぱっと見て内容も頭に入るようにしたかったんです。改善前のハガキがいきなり届いたらどうですか?

————確かに見ただけでは、何をしたらいいかわかりませんね。読んで、考えてやっとわかるかなというくらいです。そもそも、どうしてこんなにわかりにくくなってしまったのでしょうか。

日露 市民からの問い合わせで、「このことが書かれてないじゃないか」と言われては無理に詰め込んで……というの が、何年も蓄積されていったのだと思います。記載漏れがないようにするあまり、健診の流れが明記されていなかったんです。結局、電話で質問されて説明をす ることになり、手間がかかって費用対効果も低くなってしまいました。

————あるメーカーでは、不備がないように説明事項の記載を増やしたら、逆にユーザーがどこを見ていいかわからなくなり、3分の1程度に減らしたところ、コールセンターへの問い合わせが半分になったそうです。

写真日露  情報量が多ければいいというものではないのですね。実は、見やすく、わかりやすく改善することは、市民の皆さんにだけでなく、我々職員にもメリットがあり ます。改善前のハガキは職員が見ても難しく思えたのですが、今回のハガキでは健診の流れがぱっとわかりますから、マニュアルのような役割も果たしてくれま す。職員は2、3年ごとに異動します。新しく配属された者が健診についてすぐに理解して、市民からの問い合わせや健診の予約受付の対応をするときのツール にもなるというわけです。
認証取得や改善の効果が
他の自治体への刺激になる

————高松市の納税通知書に続いて、宇都宮市の後期高齢者健康診査受診ハガキがUCDA認証を取得されたわけですが、他の自治体にも影響があるのではないですか?

日露 私自身、よその自治体の広報誌を手にとって、「自分のところよりも見やすいな」とか、ついチェック してしまうこともあります。案外、各自治体はお互いに意識しているんです。高松市や宇都宮市が認証を取得したことで、他の自治体でもやってみようという動 きが出てくると思います。例えば、40歳以上を対象にした特定健診、いわゆるメタボ健診も受診券が郵送されるのですが、特定健診の場合、受診率が基準を満 たさないと自治体にペナルティが科せられます。それもあって、各自治体で受診率を上げるために、受診券のユニバーサルデザイン化に取り組んでいくのではな いでしょうか。まずは、受診券を見て、内容を理解していただかなければいけませんから。
ユニバーサルデザインとは少し離れるかもしれませんが、特定健診が無料で受けられることをPRするために、メッセージが大きく背中にプリントされた派手な ピンクのブルゾンを着て、受診しなかった人を保健師が個別訪問する試みも始めます。人目を引くことでPR効果も期待できるのではないかと思っています。

————宇都宮市はアクティブですね。今後は、他の部署にもユニバーサルデザインを広めていかれるのでしょうか。

日露 今回の後期高齢者健康診査受診ハガキは健康増進課の取り組みでしたが、役所全体で動けば、もっと市民の皆さんに貢献できますね。

————最後に、UCDAの活動についての感想をお聞かせください。

日露 これまでは金融機関や保険会社を対象にした活動が多かったと思いますが、今後は自治体にも積極的に 働きかけていただきたいですね。そうすれば、他の自治体の取り組みを参考にする動きが広がって、ユニバーサルデザインが普及していくと思います。今回の取 り組みで宇都宮市の後期高齢者健康診査の受診率が向上すれば、改善に取り組んで認証を取得する自治体も増えるのではないでしょうか。

————改善後のハガキに対する宇都宮市民の皆さんのお声や受診率など、成果をお聞かせいただけるのを楽しみにしています。本日はありがとうございました。

<改善前>

 

 

 

 

 

 

 

 

<改善後>

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