複雑な商品をわかりやすく説明する努力

株式会社 損害保険ジャパン 新井 匠 氏 / 赤須 有美子 氏 / 天笠 充 氏 / 坪田 江津子 氏

2011年7月22日収録

第三者の評価は、今後に活かすいい機会

——UCDAアワード2011受賞おめでとうございます。本日は担当された方々に直接お話が伺えるということで楽しみです。損害保険会社を対象にしたのは今回が初の試みでしたが、参加を決められたいきさつからお聞かせください。

新井 以前から、お客さまに提供するものは、できるだけ保険会社の立場だけではなく、第三者やお客さまの視点 を取り入れるように取り組んでおりました。今回、自動車保険証券がアワードの対象になるとお聞きして、私どもの気づかない点について厳しいご指摘をいただ くことが、今後、より良いものを作るのに活かせる機会だと思ったわけです。

写真——アワードに参加されて、受賞に至ったご感想はいかがでしょう。

新井 とても名誉な賞をいただくことができ、大変うれしく思っております。社内的にも良いニュースが提供できましたし、第三者の目で客観的に見ていただき、今後に活かせることを多々ご指摘いただいたので、新たな取り組みにつなげていきたいですね。

赤須 CMでも流れていますが、当社は「この国でいちばんお客さまの声に応えられる保険会社へ」というキャッ チフレーズを掲げています。そんな中で名誉な賞をいただくことができ、光栄に思っています。私自身、緊張しながらプレゼンをさせていただいたことを思い出 しながら、参加してよかったと思っております。「お客さま評価日本一の保険グループとなること」を当社の最重要戦略とし、日々、お客さまのために何ができ るのかを追求して様々な取り組みを行ったことが大きな成果につながったと思っています。

——受賞がひとつの大きなきっかけになるんですね。

赤須 とても前向きに捉えられますし、やりがいにもつながります。

——他社と比較してどうかは、気になる点ですか?

赤須 他社の良い取り組みは参考にしていきたいと思っています。

一目でわかる「取扱説明書」をコンセプトに、保管や携帯性にも配慮

——御社の保険証券は、情報がうまく整理されていて検索性や携帯性、保管性などが評議員に高く評価されました。冊子になっている点など他社とは違う斬新さですが、開発には勇気が必要だったのではないでしょうか。

写真天笠 保険は家電製品などと違い、商品としてはかたちのないものです。取扱説明書を見ながら機能を体感してテレビの良さがわかるように、保険にも証券という契約の 証だけではなく、取扱説明書があるといいのでは、というコンセプトで開発しました。証券の後ろのページを取扱説明書と位置づけて、保険加入後に住所を変更 されたとき、車を買い換えられたとき、事故に遭われたときなどにどうすればいいかをわかりやすく記載しました。ただ、いくら中身を工夫してもご覧いただけ ないと意味がありません。重要書類だとわかる重厚なデザインにしようと、日の丸に似ている当社のロゴマークを使い、パスポートを意識したデザインにしまし た。保険証券を開くと自分専用の補償内容が打ち出されていて、「いつもの保険証券とは違うな」と、手にとっていただける。さらに、あまりページが多いと読 む気がしないため、読んでみようと思っていただけるページ数や、各ページの文章量や図版のバランス、色使いにも気を配りました。商品がニーズ細分型となり 複雑になった分、説明はわかりやすくする方向に舵取りが変わってきたのではないでしょうか。

——どの情報を盛り込むか選択に苦労するのでは。なかには保険会社としては言いたくない情報もあるのではないですか。

天笠 正確に伝えようとすると複雑な情報が増えるので、ある程度絞り込まないとなりません。その一方で正確に伝わらないといけない。その点は、同封している「ご契約のしおり」とリンクさせる工夫をしています。
写真

坪田 たとえば、お客さまが加入している特約にリンクさせるなど、一人ひとりのお客さまに関係あるものだけつながるようになっています。言いたくない情報ではなく、「こんな場合には保険金が支払われません」という注意が必要な情報こそ記載するようにしています。

——評議員から「自動車保険証券の保管は自宅か、車の中か」という議論が出ましたが。

坪田 お客さまによって保管場所はそれぞれですが、どんなニーズにも対応できるようにしています。証券は大事に保 管したいお客さまのために証券だけを切り取れるようにしています。取扱説明書の冊子は車検証と一緒にダッシュボードに収納できるサイズにしています。さら に切り取り可能なドライバーカードを付けて、運転免許証と一緒に持ち歩けるようにしています。

——緊急の対応があるんですか。

坪田 レッカーの手配なども補償の対象になっていますし、万が一の事故や故障の際も、ドライバーカードが手元にあればすぐに対応できるというわけです。

デジタルツールで
効率性・利便性を高める

写真——デジタル化への対応はいかがですか。

天笠 目下、対策を検討しているところです。近い将来、Web上の画面で証券を閲覧できる「Web証券」が実現すると思います。

——販売も含めてインターネットで完結するようになるのでしょうか。

天笠 既に、代理店を介在させたうえでインターネットを活用した手続きは行っています。また、申込書の代わりにパソコンを利用した対面手続きも行っています。

坪田 2010年から「保険手続きNavi」を導入しました。「保険手続きNavi」は、代理店担当者が画面上で お客さまとパソコン画面上で補償内容を確認しながら契約手続きをするしくみです。紙媒体では説明が難しい部分も、パソコン画面上で動画やイラストを利用し て説明できます。また、署名捺印レス、ペーパーレスで申し込みが可能です。ただ、従来の申込書を使用した手続きを望まれるお客さまもいらっしゃるので、紙媒体をなくすわけにはいきません。併存するかたちになっていくと思います。

赤須 証券を手元に置きたい方やインターネットをお使いにならないお客さまもいらっしゃいますので、紙が一切なくなる想定はしていません。今後、証券の文字を高齢者向けにもう少し大きくするなど、いろいろな改善点があると思います。

——最後に、UCDAやアワードに対するご要望をお聞かせください。

赤須 第三者による客観的な評価ということで、お客さま目線に近いかたちで評価していただくことができると思いま す。今後、期待することとしましては、今年度は証券を評価していただきましたが、先ほどお話させていただいた、当社の「保険手続きNavi」など、証券以 外のツールも評価対象に広げていただきたいですね。

——検討させていただきたいと思います。本日はありがとうございました。