太陽生命保険株式会社 執行役員 お客様サービス本部長 細川 敏男 氏
聞き手:一般社団法人 ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘

総合通知は双方向のコミュニケーションツール

写真——御社の総合通知「ひまわり通信」の、第1回UCDAアワード特別賞受賞おめでとうございます。社内での反応はいかがでしたか?
細川 受賞のニュースはまず社内報に掲載しました。また、このニュースを業務協議会(業務を社外の方に評価いただく委員会)で報告をしたところ、「今まで取り組んできたことが評価されて良かったですね」と評価していただけました。また、この委員会は、第三者機関として消費者団体や弁護士の先生で構成されたものですので、「ひまわり通信」の良い点や改善点に関する意見も収集し、改善に生かしています。
——客観的に見ていただくのは、公平な意見を聞くことができて有益ですね。「ひまわり通信」に対して、お客様の声を収集する仕組みは?
細川 「ひまわり通信」は、10月末に一斉に発送しますが、11月初旬ごろからお客様のお問い合わせをいただくので、それを翌年度の作成に活用しています。弊社には「太陽生命ふれあい倶楽部」(ご契約者懇談会)という、全国の契約者様から直接意見をいただく制度もあります。この制度や「ひまわり通信」のほかにも、お客様の声が支社や本社に入ると、ほぼリアルタイムで確認できるようになっています。
——つまり総合通知はたんなる通知のツールではなく、契約者との年に1度の双方向コミュニケーション・ツールなんですね。
細川 双方向のコミュニケーションの機会は増やしていきたいと思っています。具体的にはハガキを同封し、お客様からご意見をいただく方法のほかにも、営業職員がお客様を訪問した際に、今の契約内容でお客様が満足されているのか、お客様が理解されている保障内容と実際の保障内容が一致しているかなど、保険証券と「ひまわり通信」とを見比べながらお話しすることも行っています。加入後に時間がたつと、契約内容をお忘れになるお客様もいらっしゃいますので、契約した保障内容は自分が今希望される内容なのかどうかを、まず「ひまわり通信」でご確認いただいているのです。実際、送付後は契約内容の変更の件数が増える傾向があります。

内容を把握しやすいグラフィックな表現に取り組む

——御社の総合通知は、とくに表現の分かりやすさで評議員のメンバーから高い評価がありました。フォントやレイアウト、デザインなどで苦労されたり、工夫されている点をお聞かせください。
写真細川  いちばん苦労するのは、お伝えしたい情報をいかにビジュアルで表現できるかです。もちろん文字情報も大事ですが、一瞥しただけで、「私の保障はこれくらいの期間でこれくらいの金額なんだ」と理解していただけるように保障の仕組み図を掲載しています。7〜8年前からの取り組みですが、どのような図にすれば分かりやすくなるのかと悩みながら作成しています。現在は保障のラインナップが充実しているため、さらなる工夫が必要となっています。たとえば、従来は、死亡保険は一時金でお支払いするタイプの保障だけでしたが、現在の商品には分割して年金払いにできるタイプがあります。そのほかにも工夫している点は、契約者が同じでも被保険者が違う場合、被保険者ごとに区切るなど、それぞれの保障内容をわかりやすく表現することにも気を配っています。

多様なお客様のニーズに応えるために

——御社は女性の契約者が多いそうですが、デザイン面で女性から特にご要望をいただくことはありますか?
細川 女性のお客様に受け入れられやすいデザインづくりを意識している面はあります。ラフの段階でフォーマットや色合いに関しては、当社の女性職員に見せて、「この中でどれがいいか」と意見を聞くことなどもしています。またお客様の中には、デザインではありませんが、「何年も契約しているので小冊子ではなく、変更点だけ知らせてくれればいい」「前年との変更点だけ見られれば便利」とおっしゃる方もいらっしゃいます。しかし、今年契約したお客様もいれば、20年になるお客様もいらっしゃる。このようなお客様ごとのニーズに、紙媒体で応えるのは難しいと考えています。
——デジタル化が進んで、インターネットなどコミュニケーションの選択肢が広がっていますが。
写真細川  デジタル化すれば、掲載内容の縮小・拡大ができたり、目次をクリックすることでそのページに移動するなど、さまざまな利便性が生まれると思います。すでに、ご契約のしおり(保険約款)は一部CD-ROM化しています。しかし、総合通知をデジタル化する場合は、1人ひとりオーダーメイドですから、内容の異なるものを1枚ずつDVDなどに焼き付けるのは難しい。PDFのメール添付も考えられますが、公衆回線を通るので個人情報保護の観点から本当にセキュアな体制がとれるか心配があります。そのため、紙媒体はなくせませんが、近年は年配の方にもネット販売利用者が増えていますので、情報伝達の手段がデジタル化に向かうのは間違いないと考えています。
——情報量の豊富さと分かりやすさの両立についてはどうお考えですか?
細川 私どもからすれば「これも説明したい」「あれも説明したい」というのが本音です。ただ、必要以上に「ひまわり通信」を分厚くすると読む気になりませんし、薄くして情報量を多くすると読みにくい冊子になってしまいます。本当に提供したい情報を取捨選択するのも仕事のひとつだと思っています。
——専門用語を使う場合なども苦労なさるのではないですか?
細川 たとえば、ご契約時に交付させていただいているご契約のしおり(保険約款)では、まず用語一覧を掲載するため、 ある程度の専門用語を使用することができますが、「ひまわり通信」は郵送用の小冊子であるため、用語一覧を載せる余裕はありません。そのため、できるだけ分かりやすい表現を使います。ただし専門用語を使わないために逆にお客様に間違った解釈を与えてもいけませんので、バランスに配慮しています。
——次回のUCDAアワードに向けて、ご要望はありますか?
細川 要望はひとつ、辛口の評価をしてほしいということです。少しでも問題点があれば指摘していただき、改善につなげる。このサイクルがお客様にとって「理解しやすい」「利便性のある」総合通知に進化していくと思っています。
——今度はぜひアワードを取っていただきたいですね。お忙しいところをありがとうございました。

一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会 理事長 福田 泰弘

Column インタビューを終えて

写真太 陽生命保険株式会社様では、お客様の満足度を高めるための業務改善に関する具体的な取り組みがさまざまに行われています。社外メンバーによる業務協議会やご契約者の懇談会から、営業職員の方がお客様を訪問した際の満足度調査まで、コミュニケーションの密度向上や意見の反映が積極的に図られているのです。総合通知「ひまわり通信」が、わかりやすさ、伝わりやすさを実現しているのも、こうした日ごろの努力が積み重ねられた結果だと感じました。