top(写真)大同生命保険株式会社
代表取締役社長 工藤 稔 氏

(インタビュー)執行役員 契約部長 木村 恭介 氏
保険金部長 大野 真弘 氏
契約サービス部長 安立 宏 氏

 

――今回、生命保険の「ご契約内容のお知らせ」や「ご請求のしおり」などのデザインを改善され、UCDA認証「伝わるデザイン」を取得されました。認証取得に至った経緯からお聞かせください。

安立:大同生命では、高齢のお客さまに「わかりやすく利便性の高いサービス」をお届けするため、平成26年度から規程・ルールの整備や帳票の改善等、お客さま応対品質の向上に全社を挙げて取り組んでいます。特に高齢の方をはじめ、多くのお客さまに必要な情報を見やすい帳票や画面で提供することは、非常に重要であり改善に注力しています。帳票は、お客さまに内容を十分にご理解いただくことが重要ですので、当社は平成19年以降、「社外の方による帳票の事前評価」を導入し、消費者団体の方々から、一般の消費者から見て、わかりにくい説明・用語・図表や、追加説明が必要な表現等に関してご指摘をいただき、帳票の改善に取組んできました。これに加えて、帳票の目的が明確に伝わり、高齢の方にも容易に理解いただける帳票設計となっているのかをデザインなどの専門家の視点から確認したいと考えていました。
平成22年には、当社の「ご契約内容のお知らせ」が「UCDAアワード」を受賞した経緯もあり、UCDA様のことは存じ上げていました。UCDA認証は帳票の「わかりやすさ」を審査する国内唯一の制度であり、UCDA認証を通じて、高齢の方々を含む多くのお客さまにとって、帳票の目的が明確かつ容易にご理解いただける帳票全体としてのデザイン・構成に改善したいと考え、今回、当社の代表的な3つの帳票・画面で認証を取得することにしました。

 

――どのような点に留意して改善されましたか、難しかった点などお聞かせください。

1.「ご契約内容のお知らせ」(契約サービス部)
安立:「ご契約内容のお知らせ」は、年に1回、当社の生命保険に加入していただいているすべてのお客さまにお送りしている帳票です。文字量が多くならないよう注意していますが、保障内容をお客さまに十分に理解していただきたいという考えから、年々、文字量が多くなっていました。認証取得にあたり「文字量が多い・文字が小さい」などのご意見をいただき、改めてすべての説明文言を洗い出し、見直しできないか検討しました。お客さまへの説明が不十分にならないように配慮しながら、文言を思い切って削除するだけではなく、説明が必要な部分は端的な(短い)表現ができないか検討を重ね、全体の文字量を削減しました。事前に、改善した帳票を営業担当者に確認したところ、「改善後の帳票は、文字量・網掛けが減少するとともに帳票の目的を明確に記載しており見やすい」と好評でした。10月から改善した帳票をお客さまにご案内します。今回の認証取得の経験を活かし、今後も継続した改善に取り組んでいきたいと考えています。

2.「新契約申込手続画面」(契約部)
木村:新契約申込手続画面は、「エース・ウィズ」と呼ばれるタブレット型の営業支援端末の画面であり、平成25年12月に導入しました。従来、申込手続きは申込書(紙)にご記入・押印いただいていましたが、この端末から新契約のお申込手続きが可能となりました。これにより、書類のご記入・押印などの手間を省略し、手続時のお客さまのご負担を軽減でき、営業現場からの感想も概ね好評でした。今回の認証取得にあたり、「誰に向けたメッセージか不明確」「ボタンが押しづらい」など、貴重なご意見をいただきましたので、3つのポイント「理解度」「視認性」「操作性」に分類し、見直しができないか検討を重ねました。

  • 理解度

お客さまへの説明事項がご負担なく理解していただけるよう、文字量を削減し端的な文章に見直しました。また、手続内容のご説明は主語やタイトルを追記し明確化しました。

  • 視認性

メリハリを持たせるため、お客さまに操作いただく説明文章の箇所は文字の色を黒から青に変更しました。

  • 操作性

簡単に操作できるようボタンサイズを拡大するとともに、ボタンとわかるようにデザインを変更しました。

画面の改訂は帳票に比べ、全面的にシステム開発が必要なため、技術的な制約も踏まえて改善を進めていくことに難しさがありました。改善にあたっては、営業現場での利用経験者、システム開発部門の担当者からの意見・アイデアを幅広く集約し、最良の見直し案を採用していくことで、3つのポイントすべてを向上させることができたと考えています。
当社のお手続きで初めて「新契約申込手続画面」をご使用いただくお客さまもいらっしゃるので、重要なものだと考えています。お客さまの当社に対する第一印象に影響するツールであるという責任感、緊張感を常に持ちながら、今後もお客さまに良い印象をお持ちいただけるよう、改善に努めていきたいと考えています。

3.「ご請求のしおり」等(保険金部)
大野:今回は個人年金のご請求手続きに関する帳票の改善に取組みました。他の帳票と同様、お伝えしなければならない内容が多く、文字量が増えていました。改善にあたって、多くのご意見、アドバイスをいただきましたが、特に「文字量の多さ」、「情報の目的・指示が不明確」とのご意見に対して、高齢のお客さまにも読みやすく、理解しやすい帳票に改善することに注力しました。重複した説明を集約し、可能な限り文字数を減らし、大きな文字にすることで、「見やすく・わかりやすく・伝わりやすい」帳票に改善できたと考えています。
金融機関の場合、手続きに関係する法令等あるいは注意いただきたい事項を、多く盛り込む傾向があるように思います。今回の取組の中で、例えば、同時にお届けする帳票内で重複が無いように、あるいは趣旨が変わらない範囲で、短く、簡単な記載に心がけたいと思うようになりました。
帳票はお客さまとの大事なコミュニケーションのツールです。今回の取組みを通じて、我々の思いだけでなく、読んでいただくお客さまの立場にあった記載・レイアウトになっていることが重要だと再認識しました。保険金等のお支払は保険会社の根幹業務ですので、個人年金以外の帳票等の改善にも継続して取組みたいと考えています。

 

――従来からお客さまにとっての利用品質を高める改善や工夫を積み重ねていらっしゃると思いますが、大同生命様の取組みを教えてください。

安立:ご承知のとおり、生命保険は目に見えない商品です。お客さまにお届けする各種ご案内や請求書などはお客さまと我々の信頼関係を築く重要なものであり、これまでもお客さまからの声を踏まえ改善してきました。帳票の作成・改善にあたっては、帳票のわかりやすさのほか、統一性を持たせるなどの目的から、社内で「帳票設計基準」を策定していましたが、「高齢のお客さまに十分にご理解いただけるわかりやすい帳票」にしたいと考え、今回取得したUCDA認証のほか、UCDA資格認定制度で得た知見・ノウハウをもとに、平成27年5月に「帳票設計基準」を改定しました。現在、改定した「帳票設計基準」に基づき、お客さま宛帳票の改訂に全社で取り組んでいます。特に契約部門では、所管している全2,231帳票のうち、年間の使用量が1,000件以上の帳票や高齢のお客さまを対象に提供するご案内・手続書類など380帳票を平成30年度までに改善する計画を立て、順次改訂作業を進めています。
帳票の改善以外の取組みに関して、先ほど当社の営業支援端末である「エース・ウィズ」のことをお話しさせていただきましたが、お客さまの利便性向上やご負担軽減などお客さまにより満足いただくために積極的に取組んでいます。今回、営業支援端末の「新契約申込手続」の画面が認証を取得しましたが、端末画面で認証を取得したのは、生命保険業界で当社が初めてということであり、大変嬉しく思っています。帳票だけでなく、お客さまにご覧いただく画面についても、「見やすく・わかりやすく・伝わりやすい」ものをご提供したいと考えています。

 

 

――「わかりやすさ」への改善は、お客さまや従業員の方々にとってどのような効果があるとお考えですか?

1.お客さまにとって
安立:当社の経営ビジョンの1つに、「お客さまに『最高の安心』と『最大の満足』をお届けする生命保険会社を目指す」とあります。お客さまに「見やすく・わかりやすく・伝わりやすい」帳票や画面を提供することで、お客さまから当社への信頼が向上すると同時に、お客さまに安心や満足をお届けできると考えています。また、「加入者本位」という当社の企業理念にもとづき現状に満足せず、より高みを目指し、お客さま本位の「わかりやすさ」への改善に努めていきたいと考えています。

2.従業員にとって
安立:UCDA認証の取得や「帳票設計基準」の改定を契機に、高齢のお客さまを意識するとともに、統一感のある帳票に改訂することに全社を挙げて取り組んでいます。
一例ですが、平成27年4月から、大阪にある契約5部門が部門横断で、帳票のクオリティチェックを行う取組みを開始しました。この取組みにより、統一的な帳票改善ができるとともに、従業員一人ひとりがお客さま本位でわかりやすい帳票を作ろうという意識が高まっていると感じています。

 

――最近では、企業や自治体の入札仕様書に「UCDAの認証を取得すること」と記載されることも増えてきました。UCDAついてご意見があればお聞かせください。

 

安立:帳票を作成する際は、作り手である我々生命保険会社の主観が強く入る傾向があります。自分たちが作ったものを外部から客観的に評価していただくことで、問題点を浮き彫りにして改善していく。その結果、作り手と受け手のギャップを埋め、本当の意味で「お客さまにとってわかりやすい帳票」にしていくことが非常に重要と考えています。これにより、お客さまに満足していただくことを実現できると思います。お客さまの視点は年々変化します。この変化を把握し続け「加入者本位」という創業時から受け継がれている当社の企業理念のもと、「最高の安心」と「最大の満足」をお届けできる会社であり続けられるよう、今後も継続的に認証取得に取組みたいと考えています。また、UCDA様の資格認定制度についても、資格取得者を増やし、当社での帳票作成の“質の向上”をさらに一層進めていきたいと考えています。

――本日はどうもありがとうございました。