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東京都 総務局 総合防災部長 矢岡 俊樹 氏

(インタビュー)
総務局 総合防災部 防災管理課長 船川 勝義 氏

 

IMG_3456――9月1日から、東京都のすべての家庭に防災ブック「東京防災」が配布されました。「東京防災」の目的についてお聞かせください。

船川:東京都はこれまでも、地震を始めとする災害に対する備えを、ハードとソフトの両面で進めてきました。災害発生時に、行政が約1300万の都民を「助ける」ことは不可能に近いので、「自分の命は自分で守ってほしい」とお伝えしてきました。公助だけではなく、地域の方たちと助け合う共助、自分と家族の命を守る自助は、非常に重要なことです。被害を最小限に抑えるためには、都民の一人ひとりの力を結集させて、災害への対応力を高めなければなりません。救助が到着するまでは「自分の命は自分で守る」という行動をとってほしい。常備薬のように、各家庭に一冊「東京防災」が常備されていれば、日ごろから防災についての知識に触れることができる、そして今から備えを始めてほしいという思いで作りました。

 

――この仕様書の中には、ユニバーサルデザインに徹底して「UCDA認証を取得すること」と書かれていますが、その経緯についてお聞かせください。

 

船川:このような重要な情報は、子供、高齢者、障害者など多様な都民に配慮したユニバーサルデザインに徹底して作る必要があります。伝えるべきものをきちんと伝えなくてはいけない。しかし東京都としては伝えたつもりでも、都民の皆さんに伝わっていなければ意味がない。そのためには、多様な都民にとって情報を「わかりやすく」しなくてはいけない。しかし、情報の送り手である私たちには、これが都民にとって「わかりやすく」できているかどうかを判断することはできません。そこで、第三者の立場で客観的に判断してもらうために、第三者機関の認証が必要だと思い、仕様書の中に入れました。

 

――制作にあたって難しかった点、留意した点は、どのようなことですか。

船川:重要なことを伝えなくてはいけない、というと情報量が多くなってしまう。家庭で皆さんに読んでいただくためにコンパクトにすると文字が小さくなって読みにくくなってしまう。情報の量と読みやすさ、どちらも大切なことです。その他、色やイラスト、デザインについて、いろいろな意見がありました。しかし、多様な都民が読みやすく、内容がきちんと伝わることに徹底して進めました。情報を整理して、文字の大きさや行間を計算し、余白もとり、書体も吟味しました。また、イラストやアイコンをうまく使うことで、文字数を削減しました。その結果、「読みやすく、わかりやすく」できたと思います。B6サイズで340ページほどの冊子にしたのですが、もっと大きいサイズのほうが読みやすいという意見もありました。しかし、日常生活の中で読んでいただきたいこと、重要な内容を「わかりやすく」伝えること、この点にこだわってコンパクトでユニバーサルデザインに配慮したものに仕上げました。

 

――都民の方や、都庁内部での評価はいかがですか?

船川:「読みやすく、わかりやすい」という評価を数多くいただいています。防災の専門家の方からも「わかりやすい」という意見をいただいています。行政が出す文書は、誤解がないように正確に伝えようとすると、どうしても難しい言い回しになったり、文章が多くなったりします。今回は、多様な都民に読みやすく、伝わりやすくなるように、省けるものは省いて、言い回しも「わかりやすく」することに徹底したので、このような評価をいただけたと思っています。「東京防災」は読んで知識をつけてほしいというだけではなく、災害に対して準備するための行動を起こすきっかけにしていただくためのものですので、これを読んで、いまから防災の準備行動を起こしてほしいと思います。9月1日の防災の日から順番に各家庭に配布したのですが、早く届けてほしいという問合せや他県の方から私にも欲しいという電話もいただいています。

 

――今回「UCDAアワード2015」の実行委員会において、「東京防災」の取り組みが実行委員会特別表彰を受けることになりました。東京都では、「東京防災」の他にも数多くの通知物を作成していますが、常に気にされていることはありますか。

船川:「東京防災」への取り組みが、評価されたことは大変うれしいです。「わかりやすく」作っても、読んでいただかなければ目的が達成できないので、都民の皆さんにはぜひ読んでいただきたいと思います。また、東京都では、難しい役所言葉を減らしていこう、という取り組みをどこの部署でもしています。誤解がないように正確に伝えることはもちろんですが、多様な都民に内容を理解していただかなくては何にもなりませんので、自分たちの自己満足にならないように気をつけています。「わかりやすく」伝えるということは、行政の重要な役割になってきています。

 

――UCDAについてお聞かせください。

船川:自分たちは「わかりやすく」作ったつもりでも、都民に伝わっているのだろうかと不安になることもあります。そんな時、第三者機関が、これは「わかりやすく」できていると判断してくれるのはとてもいいことだと思いますし、自信を持って都民に届けることができます。UCDA認証は、数値化された基準があるので目標がハッキリします。また、生活者の視点で評価して認められるので、誰もが納得できるのではないかと思います。今後も、必要な情報を「わかりやすく」都民にお届けしていきたいと思います。

――本日はどうもありがとうございました。