(写真)
商品部長 中村 高幸 氏
(インタビュー)
商品部 販売サポート課長 杉本 文彦 氏

――大同生命様は、今回「設計書」で、UCDA認証「伝わるデザイン」を取得されました。認証取得に至った経緯からお聞かせください。

中村:当社では、高齢化が進む中、情報を正確にわかりやすくお伝えするために、平成26年度に「お客さまサービス方針」を改定しました。また、高齢の方にやさしい保険会社を目指すための、「ベストシニアサービス」という運動を実施しており、募集時および契約後の説明内容を、正確にわかりやすくお伝えするよう、規定やルールを策定しました。
今回の改善は、二つの点に留意して進めました。まず、契約概要はお客さまに保存していただくものなので、時間が経っても誤解なくわかりやすいものであること。もう一点は、金融庁の金融審議会の中で、「わかりやすく」伝えることが非常に重要だと取り上げられたことを契機に、生命保険協会より「見やすく・読みやすく・わかりやすい募集文書作成のためのメルクマール」が示されたことです。
当社はこの二点に沿って改善を進めていましたが、どうしても作り手の独りよがりになりがちです。従来であれば、帳票を作成した際には「クオリティチェック」を実施して、消費者代表の方に見ていただくのですが、やはり専門家の方に評価していただき、そのノウハウを活かしていきたいと考え、UCDAの認証を取得しました。

 

――金融庁では、「適合性の原則」や「高齢者対応」という言葉がよく出てきます。やはり、高齢のお客さまへの対応が課題になっていますか。

中村:当社の場合、中小企業の経営者のお客さまが多い為、他社様よりは若干年齢層が高いかもしれません。経営者の方も高齢化が進んでいますので、今後はその辺りも含めて、改善を進めて行かなければ、と思います。高齢の方向けのサービスは、どの会社も同様の取り組みはされていると思いますが、当社の場合、コンセプトとして導入したことが一つの特徴だと思います。

 

――今回の認証取得にあたって、難しかった点、苦労した点などをお聞かせください。

2杉本:生命保険業界内では、高齢の方向けのサービス充実への機運は高まっていました。「簡素化をしたい」「わかりやすくしたい」というのは、情報提供をする側の誰もが考えていることです。
一方で、必要な記載事項に対して、どこまで削っていいのかわからない、といった課題がありました。
そういう中、「お客さまに読む意欲を失わせない」を改訂のコンセプトとし、様々な試行錯誤を繰り返しました。文字量は減らしても「情報量」を落とさないよう、図表や表組、ピクトグラムを上手く活用しました。また、記載内容が帳票間で重複しているところは、参照形式にしたうえで、案内を充実させるなど、細かな工夫をしました。
当社は、対面での販売が主になりますので、営業職員や代理店の方々が説明する際の「説明のしやすさ」を考えました。保険商品は、いくつもの事項を説明し、お客さまにご理解していただく必要があります。それに対して、お客さまが聞くのに「耐えられる時間」というものがあります。いくら丁寧に説明しても、説明時間が長すぎてご理解いただけないのでは本末転倒です。説明のしやすさ=「お客さまが理解できる情報量と時間」を意識して、改善しました。ここが非常に苦労した点です。

 

――営業の方やお客さまの声を反映しながら改善していく、というプロセスになりますね。今回の「わかりやすさ」への改善は、お客さまや社員の方々にとってどのような影響があるとお考えですか。

杉本:実際に営業担当者からは、わかりやすくなった、良くなった、という声をいただいています。また、今回は先ほどのコンセプトに沿って抜本的に改善を行ったこともあり、お客さまからの「読めない、わからない」といった苦情が減りました。
実際の効果測定はこれからですが、例えば営業担当者が説明に要する時間の短縮や、2回、3回と説明に行かなくてもよくなれば、その時間を別のお客さまへの訪問に充てられ、効率化にも貢献すると考えています。
この改善に携わったスタッフは、認証取得やアワードで賞をいただいたことで、自分の仕事が評価されたことになります。しかも上司が褒めるのではなく、第三者に表彰をいただくことで、自分のやってきたことに自信を持て、モチベーションを上げる材料にもなると思います。

 

――大同生命様は、昨年はタブレット画面を含めて3つの「伝わるデザイン」認証を取得され、アワードでは「情報のわかりやすさ賞」を取られました。そして今回は「設計書」で認証を取得されました。積極的に改善に取り組まれていますね。

中村:「ベストシニアサービス」の推進は、社長をトップとするワーキンググループを編成して取り組んでいます。そのワーキンググループの中で色々な方針を決めますが、その一つとして、帳票の改善が設定されており、会社全体の方針として、取り組んでいます。大きく分けると、「募集時のわかりやすさ」と、「契約後のわかりやすさ」となりますので、商品部や契約を管理している部門、保全手続の担当部門、保険金支払いの担当部門まで、様々な部門から参加しています。そこには、部長だけではなく各部門の担当役員も参加しています。
「ベストシニアサービス」の取り組みは、帳票の改善だけではありません。例えば、ご契約時にご家族に同席いただくのをルール化することや、お支払いの時のためにご家族の登録を必ず実施いただくなど、これからの新しい契約だけではなく、既にご契約をいただいている方にも改めてご案内差し上げています。資料であったり、対面の説明であったり、そのような一連のお客さま対応をトータルで改善するには、様々な部署の連携が必要となるため、経営陣のコミットのもとで、横断的なワーキンググループで推進することが重要となります。

 

――生命保険は、お客さまの加入期間によって対応する部署が変わってきますね。長い契約の中で、トータルでお客さまに対応する、ということはとても重要なことだと思います。また、そのようなプロジェクトチームが編成されているのもとても素晴らしいと思います。

杉本:今回認証を取得した「設計書」では、商品ごとに一冊ご用意していたものを、複数の商品を組み合わせて一冊にまとめる取り組みに挑戦しています。複雑なものでも、認証の知識・知見を進化・深化させて改善を進め、お客さまの利便性をさらに向上させたいと考えています。
前回、タブレットの申込画面で認証をいただきましたが、紙とタブレットでは利便性が異なります。紙とタブレット、それぞれの役割分担を考え、「紙とITの融合」という面でも、進化させていきたいと考えています。

――ありがとうございます。最後に、UCDAの活動についてご意見をお聞かせください。

3杉本:例えば、作成者が「わかりやすく作成した。」と思っていても、お客さまの声を分析してみると、「見やすい」と「見づらい」と言う両方のご意見があります。このように、見やすさ、わかりやすさというのは属人的なものですので、たくさんのご意見を聞けば聞くほど混乱するという状況もありました。しかし、UCDAによって、科学的に検証した基準が明示されたことで、作り手の負担は大きく減りました。「紙面の印字率19%未満」というのがそれにあたります。他にもDC9ヒューリスティック評価や色彩設計など、情報コミュニケーションのデザインにおいて第三者機関として基準を設けていることが素晴らしいと思います。これからも研究を深めて「わかりやすさ」の基準をより多く確立いただけると、作業効率も向上しますし、お客さまの負担も減ると思います。これからも客観的な評価でのサポートをよろしくお願いします。

――本日はどうもありがとうございました。