プロジェクトUCD 〜フェスティナレンテ〜

「フェスティナレンテ」とは、ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの座右の銘で「悠々として急げ」を意味します。
このコーナーでは、日々情報コミュニケーションの課題に悠々と取り組みつつ、UCDを導入し、スピーディーに結果を出している企業・行政・団体を取材します。
「わかりやすさ」への取り組み(プロジェクトUCD)における苦労や、今後のビジョンについてお話しいただきます。

福島県の食の安全・安心を全国の皆さんに知ってほしい

株式会社 福豆屋 専務取締役 小林 文紀

株式会社 福豆屋 専務取締役 小林 文紀

震災後、福島県産の農作物や肉は、放射性物質検査を行い、安全性を確認してから出荷しています。しかし消費者庁の調査によると、この検査の実施を知らない人の割合が約37%あります。
「これ以上、何をすれば伝わるのか。」そんなフクシマの声にUCDAは、事実を「わかりやすく伝える」表示を提案しました。この「フクシマケン食の復興支援」みんなのプロジェクトに最初に参加した郡山市の駅弁屋、福豆屋さんにお話を聞きます。

福豆屋さんについてお聞かせ下さい。

株式会社 福豆屋 専務取締役 小林 文紀
小林:水戸の和菓子・井熊総本家がはじまりです。祖父が、大正13年に郡山に出て駅弁屋を創業しました。郡山市の市制が始まった年です。昭和の時代には、磐梯山や猪苗代湖などは人気があり、観光も盛んだったので、猪苗代駅でも駅弁を販売していました。
しかし、父の時代になると、東北新幹線が開通し、会津地方への交通のアクセスが良くなったため、猪苗代は通過駅になってしまいました。地方の駅弁業者は、新幹線や高速道路など交通網の発達により、斜陽産業へ追い込まれてしまいました。当社では、その後は給食や仕出し料理へ業務を広げながら、40年前にこの食品工業団地に移りました。現在では、駅弁屋は20年前の三分の一になってしまいました。全国でも100社ぐらいしか残っていないと思います。
福豆屋は「いつも笑顔で、真心で」の精神で、地域のためにも駅弁は残さなくてはいけないと思いますから、これからも続けていくつもりです。
こうして振り返ると、これまでいろいろ困難なことがありました。しかし、2011年の東日本大震災が一番大きな出来事でした。

今回、UCDAが支援する「フクシマケン食の復興支援」みんなのプロジェクトに参加されました。

株式会社 福豆屋 専務取締役 小林 文紀小林:2011年の東日本大震災で東北地方は大きな被害を受けました。日本中の皆さんから支援をいただき、現在も復興に向けてみんなで頑張っています。しかし、原発事故の影響はいまだに尾を引き、風評被害によって福島県産の食品、食材はまだまだ大変厳しい状況です。
私も震災後に「お前が安全だと言えるのか」とか「福島の食品は食べない」とか言われました。それでも頑張ってきました。福島県では、福島県産の食材の放射線物質検査をしっかりして、安全・安心だと認められたものが市場で販売されています。私たちも、それを材料にして駅弁を作っています。今年の消費者庁のデータでは、全国の生活者の約37%の方が、この検査の事実を知らないということを聞いて驚きました。
生産者の方にとって、農産物は子供と同じです。時間をかけて育てたものが食べてもらえない悔しさは私たちも同じ思いです。「しっかり検査をして安全・安心なものを届けているんだということを知ってもらいたい。」と思っていましたが、どのようにしていいかわかりませんでした。そんな時に、このプロジェクトの話を聞きました。

このプロジェクトは、福島県産の食材が放射線物質検査をして、安全・安心なんだということを知っていただくために、「わかりやすく」表示しようということが目的です。

海苔のりべん

海苔のりべん

小林:全国の皆さんに知っていただくには時間がかかると思いますが、何もしないでいるよりは、このような機会があるなら、ぜひ参加したいと思いました。子供たちの世代に、福島県の食のよさを残したいという思いです。福島県の人間は、放射能と向き合って一生懸命生きているんだということを知ってほしいのです。
もうひとつ、食品表示法が改定されて、表示することが増えてきます。正しく、お客様にわかりやすく表示するにはどうしたらいいかという悩みもありました。お客様にとっては、食材の産地や内容物などは気になるところです。私たちにはそれを正しく表示するという使命があります。おいしい駅弁を作ることと一緒です。
ある催事の時に、お母さんから、この駅弁には「エビ」が入っていますかとか、「そば粉」を使っていますかと聞かれることが度々あります。情報を知りたい人はもちろんのこと、どの人にもわかるように表示していないといけないと思います。産地の表示で、放射線物質の検査を受けて、安全・安心が認められているということを伝えることも、お客様に知っていただく情報としてはとても大事だと思います。
正しく表示することは私たちの義務ですが、見やすく表示することはどのようにすればいいのかわかりませんでした。今回、UCDA認証のことを知って、やっと先が見えたと思いました。

  プロジェクトのシンボルマーク   認証マーク(情報品質の信頼マーク)
プロジェクトのシンボルマーク 当社が使用してる福島県産の食材は、放射能物質の検査を受けて、安全性を確認しています。
安心してお召し上がりください。
認証マーク(情報品質の信頼マーク) このパッケージの表示は、一般社団法人 UCDAが第三者の公正な審査を経て、見やすく配慮されたデザインであると認証したものです。

外国の方が数多く日本各地に訪れる時代になりましたが、「駅弁」は日本の文化ですね。

小林:旅の途中に、自分の席の車窓から、風景を見ながらお弁当を食べる文化は、世界でもあまりないと思いますね。日本に来る外国人の皆さんに、日本の文化、地域の文化である「駅弁」を楽しんでいただければと思っています。

最近のテレビ番組で、駅弁マニアが選ぶ駅弁ランキングで第一位になりました。

小林:今、駅弁は「のせ弁」といって、おかずをご飯の上にのせるスタイルが多いんですが、福豆屋は「幕の内」のお弁当が得意なんです。昔の駅弁は幕の内が多かったのですが、手間がかかるということで、今はのせ弁が主流になりました。幕の内は地味なお弁当ですが、地元の食材を中心に、いろいろな味を楽しんでいただけるよう幕の内スタイルにこだわっています。
福島県は、奥州・陸奥の玄関口でおいしい食材が多いです。お米も牛肉も豚肉もおいしいですよ。でもPRが下手なんですね。謙虚というか、これも福島らしいところですね。
この「海苔のりべん」は、私の母が、子供や家族のために真心込めてお弁当を作るとき、あれもこれもできない忙しさから、ご飯の一番上と、ご飯の間に海苔を2段にして押し込んで作りました。それが「海苔のりべん」の原点なんです。懐かしくて、おいしくって、ホッとする、そんなところが皆さんの支持をいただいたのだと思います。

駅弁は、楽しみにしていた旅行のとき食べたり、仕事で出張のときお土産で買って帰ったり、特別なお弁当ですね。食べる人もお年寄りから子供まで幅広いですね。

小林:だからアレルゲンのことも、放射線物質の検査のことも、「見やすく」表示しなくてはいけないと思います。アレルゲンの表示についてはこれからUCDAと一緒に作っていきたいと思っています。この活動は私たちだけではなく、駅弁の中央会の方々、福島県の多くの食品会社と連携していきたいです。

伝統のある福豆屋さんが、伝統を守り、社員を守るために今回のプロジェクトに参加したことはとても意義のあることだと思います。

株式会社 福豆屋 専務取締役 小林 文紀小林:今の福島県の状況は、誰も経験したこともなく、どこにもないことです。それを隠したりせず、本当の状況を県内だけではなく全国に発信していくことは大事なことだと思っています。
生産者の想いや事実を駅弁と一緒に、お客様にも伝えていかなくてはいけません。農業生産者の方も悩んで、苦しみながらも、多くの方の応援していただいて、新たな農業に取り組んでいます。今の福島県の状況に対する怒りを、家族のためやお客様のためへの愛や感謝の気持ちに変え、ものすごい努力をしている。なんとかこの事実をきちんと伝えなくてはいけないです。震災で悲しみや苦しみに閉じ込められてしまった子供たちには、辛かったことをはじき返してもらいたい。そのためには、本当の情報を「わかりやすく」発信していかなくてはいけないですね。子供たちには、大人を信じて、社会を信じて、未来を信じて頑張ってほしいと思います。駅弁は、農産物やその土地の風土や文化を多くの人に広める宣伝マンです。ですから、今回のプロジェクトに参加することは駅弁屋の使命だと思っています。

福島県産の食材、食品が安全・安心であるという事実を、このプロジェクトで広めていければ、と思っています。本日はどうもありがとうございました。