企画コンセプト

ローマ神話では、学問発祥の地、アテナの近くに「ミネルヴァの森」というものがあったとされています。ミネルヴァとは、知恵の女神の名前で、つねにフクロウを従えていたことから、フクロウもまた知恵の象徴です。
この企画では、理事長の在間稔允が、長年活躍されてきた各界の賢人の方々(フクロウたち)に、これからのUCDのあり方についてお聴きします 。

ゲスト:輝特許事務所所長/UCDA理事 弁理士 水野勝文(右)

プロフィール 1981年弁理士登録。2003年株式会社NBCメッシュテック 顧問。2005年株式会社輝事務所 代表取締役社長。2006年輝特許事務所 所長。2008年城西大学現代政策学部 非常勤講師。2009年日本弁理士会 副会長。2010年日本弁理士会 産業競争力推進委員会 委員長、日本弁理士会 知財ビジネス推進ワーキンググループ長、株式会社創通 監査役。2016年日本弁理士政治連盟 会長。
UCDA設立以前より、UCDAの知的財産に関しての助言や商標・特許の申請、管理を行う。2015年、理事就任。知的財産を担当する。

―水野先生が弁理士になろうと思ったきっかけを教えてください。

水野:小説やテレビで検事や弁護士という仕事は知っていましたが、自分は技術系の仕事がしたいと思っていました。中学生の時に「世の中には弁理士という仕事がある」と社会科の先生が教えてくれたんです。弁理士は技術に関係あるし、弁護士よりも職人的な仕事です。昔は文章も図面も自分で書いたり、和文タイプやロットリングなど、コツコツと技術が要る仕事が多かったですね。そこで、当時普及し始めたワープロが打てて、図面が書けて、場合によっては英語も扱う。これなら自分でもできると思いました。

―弁理士の仕事は、特許取得や、商標登録などの相談・依頼として知られていますが、本来はどういう仕事なのでしょうか。

水野:弁理士は人によって、スタイルが違うし、専門分野も違います。バイオ関係、ソフトウェア関係、デザイン関係、商標が専門だったり、外国のお客さんの仕事ばかりしている人もいます。それぞれ専門分野で仕事をするところは、お医者さんと似ていますが、人間ではなく企業がお客さまなので、多岐にわたっています。また、時代によっても違ってきます。

例えば、遺伝子操作に関することは、50年ほど前には知識のある人がいませんでした。大学などで先端の勉強をした人でないと、技術の内容や用語がわかりません。特許は、技術を表現しなければならないので、正確な技術用語がわからないといけません。更に、それを英語でどう表現するのかもわからないと、正確な申請書類を作ることはできません。

弁理士とは、特許や商標を代行して登録する、知的財産の専門家という言い方をされます。

―特許は今までになかった新しい技術を申請するわけですから、それを書類にして提出するというのは至難の業ですね。


水野
:特許だけではなくて、弁理士の業務範囲は、本当はもう少し広いんです。新しいモノ・コトを世の中に出そうとしている人や新しいポリシーを出そうとする人のお手伝いが仕事です。

事業を実態化するために、どのように役に立つ仕組みがあるか、政府のどの部署で、物づくりに補助金が出ているかなど、知っているかどうかでアドバイスも違ってきます。色々な制度を知っていてアドバイスをするという点ではコンサルティングということと同じですね。

新しいビジネスモデルや技術で世間が動きだす前に相談がきます。例えば、人工知能や、水素ステーションに関しての情報もかなり前から入ってきました。話を聞いて、どこが新しい発明なのか、優位性はどこにあるのかを探します。わかりやすい話では、回転寿司の場合、寿司屋はすでにある訳です。今までの寿司屋とは違う、どのように差別化を図るかとか。宅急便の場合、昔は郵便しかありませんでしたから何を開発すれば、何を守ればそのビジネスが上手くいくのかを考えてアドバイスします。

最初は皆さんゼロからスタートします。どんなに大きい会社でも初めにプレゼンする人は1人です。それをどのように育てて、手伝ってあげるか。全部が上手くいくわけではありませんが、もったいないことはしたくありません。お話を聞きながら、良いアイデアだと思ったらこちらも動きます。

―話を聞いていて、中には「これは無理だ」と思うものはないですか。

水野:その場合は説明します。例えば、回転寿司でストレートなカウンターでは片側にしかお客が入れない。楕円形カウンターで真ん中に職人が入る方が、お客がたくさん入るだろう、ということを考えた人がいるとします。「技術的には別に新しくないですね」とか「どうやってそれを差別化しますか」とか聞きます。そうすると、「単に楕円にするだけじゃなくて、搬送ラインも楕円でループになっていれば、クルっと回っても戻って来る。無駄もなくなる。そこがミソなんです」と言う人が出てくる。そうすると「おもしろいこと言いますね」と話が進みます。弁理士はそういう仕事だと思っています。今まで本人が気付いていなかったいいところを気付かせて、深化させるお手伝いをします。

技術的に特許を取るということは、長ければ出願から20年間はその技術を独占できるので、似たものが出てきたとしても優位です。そうすると立ち上がりの時に資金が集めやすいとか、仲間作りしやすいとか、色々なメリットがあります。そういうスキームを作れるかどうかだと思います。

特許を取らなくても簡単には真似できない時代がありました。今でも日本の会社はそれに引きずられています。「真似できないだろう」と高をくくっている人もいますが、現在ではかなりな精度で真似ができます。製品だけではなく仕組みもそうです。売り方、広告の仕方、ディスプレイの仕方、お店の作り方なども簡単に真似できます。しかし、権利で押さえられないものもあります。もちろん、国ごとに権利を取らなければならないというルールもあります。輸出入が自由な時代ですので、日本の機材を買えば、品質も同じレベルで、ほぼコピーできます。それで、逆輸入で向こうから攻められる時代になりました。状況が変わりましたね。昔は自分たちの技術はそう簡単に盗まれない、同じ性能のものはできないと言い切っていましたけど。

―守ることによって、かえってビジネスが上手くいかなくなることもありますね。トヨタのように特許を全部開放するようなやり方もあります。


水野
:ギヴ・アンド・テイクもあるでしょうし、戦略が要る時代になりました。トヨタのように、燃料電池車の市場を作ることが、ビジネスを成功させると考えると、一部関連特許を開放して、まずは誰もが参入できるようにすることが戦略になってきます。

先行したのは公共の空間だったと思います。人がたくさん集まる図書館や駅などです。最近では駅のバリアフリー化が進んで、ホームドアが増えてきました。それ以前は視覚障害の方など、ホームから転落して亡くなる事故が多かったですね。その後、家電製品や住宅のUD化にも各社が一生懸命取り組みました

―昔は「当社の特許です」とパッケージに書いてあると「すごいな」と感じていましたが、最近はあまり見かけないような気がします。

水野:化粧品や健康食品など、機能があるものには、まだまだ多いです。サービスでも、「このサービスはうちにしかできません」とか、特許取得と書いてあるものも結構あります。昔は単に特許と付いていると、「すごい」「国が許可したもので価値がある」と消費者が思っていた時代から、今では更に同業者に対して「我が社のは特許を取っているから、真似すると危ないよ」という意味合いに変わってきました。特許であることを書いておけば、真似した場合に知らなかったとは言わせない、という仕組みです。

―日本で特許を取っていても、外国でそれを真似されたときは、仕方ないのですか。

水野:そうです。日本では権利があるけど、中国ではない場合、中国側が作って商売する分には、日本では何もできない。スキームが変わってきています。特許を取るということは、出願から20年間守ろうということなのですが、20年後を読める人はいません。どこの国で20年後までに真似をしてくるか、そういう会社が生まれるか誰もわかりません。

例えば、外国の資本で工場を作る際、中国では権利を取られていて、ベトナムでは取られていなければ、ベトナムに工場を作ればいいじゃないかと考えます。昔とは、仕組みというか、ルールのベース環境が変わってきています。世界地図が変わってきました。そこで最近よく言うのは、特許を取るのではなくて、取らない方法も大事だと。秘密を守るノウハウ、技術の情報を漏らさないようにする方法を持つことです。例えば、ビッグデータは漏れなければ、自分たちしか使えません。情報そのものの価値を秘密にすることで守ることが可能になるのです。

例えば薬の場合は、最初の発明はずっと前の段階であるわけです。開発がはじまって、臨床試験があり、実際に薬になるのですが、その間に何年もかかる。出願しておいて20年の間になんとかすればいいということが通用しないことがよく起きます。そうすると、その見込みが無いものに出願する意味があるのかという話になってきます。

グローバルを視野に入れた特許の場合、100カ国以上も取るようになるので、先行技術調査や翻訳等の諸経費も含めると数億円になります。

―かなり費用もかかるので、企業の戦略が無いと、特許や商標を登録してもしょうがないということですね。

水野:「何のために登録するのですか」という質問をします。目的や狙いによって、どういう権利を持っているのがいいのか、どういうノウハウや情報を秘匿するのがいいのかが変わってきます。
UCDAも、色々なデータを持っていますが、それを何のチェックもなく出すということはしないですよね。コントロールしますよね。

特許を取ることは、情報を公開することと同じです。だから、それを少し変えて真似をする人間がいてもおかしくない。特許を取るなら、緻密に検討して取らないといけません。単に技術論文のような特許を出しても、抜けがたくさんあって、情報提供してるだけになってしまいます。せっかく特許を取ったのに、権利行使ができない。でも、どういう訳か似たようなものは出てくるという状態です。

それを見ると、どういうビジネスを想定しているか、コアな技術は何か。場合によってはどのような人材がいるのか読めてしまいます。中にはライバル会社の社長が見つけて「これはうちの方が有利じゃないか」というのも十分あり得ます。

特許には、事業能力はないけれど権利だけを取っているようなケースもあります。それを実際に事業化して提供しようという人間が出てくると、アイデアとしては後発かもしれないけれど、事業としてはそちらの方が最初になります。守っているよりも、それを介して社会に提供することに意味があるという場合もあります。UCDAの場合はそういうことだと思います。

社会的価値があるものをどうやって実際の事業として社会に提供するか。社会に提供しなければ、どのアイデアも世の中の役に立ちません。それと逆に、次に事業化しようとしている者の単に足を引っ張ることになれば、社会にとっては害悪でしかないです。もちろんお客さまの支持がなく、市場で淘汰されて消える分には自然現象です。電子機器の開発などがそうですが、3年で役割を終えてしまうこともあります。これは市場で自然に淘汰されたのだと思います。それとは別に、やりたいけれど、この人のライセンスを貰わないといけないとか、ライセンス料が高いとかいうことも起こり得ますので、特許は必ずしも世の中の役に立つものとは言えません。

―昔、ビデオの技術でベータマックスとVHSの戦いがありました。絶えず先端技術の競争があって、同じ時期に、違う方式のものが開発されて、どちらかが淘汰されていきますよね。

水野:競争はあっても良いと思います。ターゲットは同じようで、違うこともありますので、レーザーディスクとVHSのように、差別化されていたら、両方並存していたのかもしません。世の中に受け入れられた方が勝ち残るという自然現象です。

社会ルールとしてはニーズに応えた方が、あるいはニーズを作り出した方が勝ち残ります。そうなるのは、いいと思いますが、問題はその前です。中小企業だろうと、ベンチャーだろうと、土俵に乗る少し手前に力を付けて、番付に名前が載らないレベルのものをどうやって事業化するかが最も大切だと思います。一人では無理ですし、ものが作れないといけない。作るとなるとネットワークが必要になります。そのお手伝いが弁理士の一番の仕事だと思います。特に今は中国や韓国が台頭してきていますので。技術の情報が漏れてしまうと、中国や韓国の会社はスピードが速いので、日本の会社がもたもたしている間に先に抜かれてしまうことが起きてしまいます。そうはなりたくないです。

―技術にこだわってもたもたしているよりも、とにかく社会に広めることが、一番競争力を強めると。

水野:UCDAは典型的にそうだと思います。特殊な仕事ですが。潜在的なニーズを引き出すことを一番最初にやった人が社会で認められるべきで、資本力や平等とは言えないルールの下で早々にひっくり返されることがあるのはよくないと思います。UCDAも提供する社会的な価値があるものをブラッシュアップして、色々なことをやっています。これをいかに邪魔が入らないようにするか。どこかの段階で、邪魔が入ってきて引っかき回されると、芽を摘まれる可能性があります。ニーズも社会的意義も曲げられてしまうかもしれません。

例えば、大企業に中小企業の良いアイデアが潰されている可能性がありますね。自分たちのシェアが取られてしまうと考えると、ぽつぽつと出てきたものを自らに取り込むことはあっても、自分のシェアを取らせることは許さない。徹底的につぶす。それが日本の停滞の一因かもしれません。

薬の発明などは、日本の会社よりアメリカやヨーロッパの会社の方が高く買い取ってくれるとも言われます。日本で開発しても海外へ持って行ってしまうということが、当り前のように起きています。そうしないと活力が出ませんし、実現しなければお金も入ってこないのです。

―知財は守るためのものだと思われがちですが、攻めるための考え方もありますね。

水野:これは両方ないといけません。攻める手を持っていると相手が怖がるので、守れます。攻めるためには単に権利を持つのではなくて、攻める能力が必要です。武器は持っているだけではなく、使い方を知っていないといけません。訴訟ができるかどうか、警告して交渉ができるか、どのくらい相手に脅しがきくかの能力が必要です。攻めも守りも力を集中させる。UCDAも認証、アワード、ソリューションなど基本マークを統一しました。同じマークなので守りやすいし、知名度が上がれば攻めやすくなります。

―先生のところに相談に来る方たちは、自分たちの技術やビジネスの考え方を分かっています。先生はその話を聞いて、客観的に、冷静に、質問をしたりアイデアを返したりしています。ものすごいエネルギーを使う仕事ですね。

水野:基本的にひとりが全部を表現するのは不可能です。話を全部は聞かず、この辺に何かありそうだと思ったら突っ込みます。ノウハウにしておく価値、秘密にしておく価値があるかは、「これが大事な情報」だというものをまず見つけないとわからない。実際にやってみるとわかりますが、特許で抜けが無いようにとか、特許の本当のエッセンスは何なのか、と突き詰めると大変な作業になります。バリエーションも考えなければならないし、具体的に目の前のシステムだけを考えて、良く見たら、こうすれば同じようなことができるんじゃないか、ということが多々あります。

その先の、特許出願も含めて、どういうところでプレゼンをして、プロモーションをかけて、どういう市場に出すのかを考えます。健康食品があったとして、医療機関だけに行くのか、一般市場に行くのか、インターネットなのか、薬にはしないのか、とか。

私はお手伝いしているだけですが、お客さまは、自ら認識していないことが多いです。大きい会社であれば、中にそういう部門の人がいて、ポリシーがあって、自分たちの考え方が決まっている場合もあります。それは歴史的に何十年もかけて構築してきたポリシーがあり、ルール化がされていて、それを伝承していることもあります。

―先生のところには、ITに詳しい方、薬に詳しい方など色々な専門分野の弁理士の方がいらっしゃるんですね。

水野:総合病院のような感じですね。だいたい全部をカバーできるように、それぞれの専門家がいます。
例えば、バイオを担当している人は、遺伝子のことだけやっていると狭いので、化学関係や食品関係など似たような分野を広めにやらせます。新しいものが入って来たときに対応できるようにしています。環境はぴったり繋がっているんです。

今だと、TPPですね。TPPの中にも知的財産テーマがあります。例えば、著作権が70年に延長されることが決まっています。日本の中ではそれまで合意されていませんでした。50年が70年になることは、50年経つと皆が自由に使えるはずだったものが70年になるまで使えないということです。20年の差はかなり大きいです。TPPが典型的な例ですけど、今色々な国際条約が結ばれています。日本の企業も国民も知らない間にどんどんスキームが変わっています。グローバル化の典型的な事例です。

なぜ、TPPの中に知的財産条項が入っていると思いますか?農業や関税の問題だけだと思っているのは日本人くらいです。アメリカも中国もヨーロッパもそういうビジネスをしている人たちは、当然、東南アジアを含めて知的財産制度をきちんと理解していて、それがどのようにビジネスに反映してくるのかを知っています。戦略上必要なことなのです。典型的なものが著作権70年ですが、要は、一本の国際契約を使い、70年でぴったり共通にOKにしたい。同じ契約をしても、ばらばらで50年の国があると条件が変わってしまいます。一本は来年切れるけど、一本は21年後まである。そんなことは堪らないと彼らは思っています。そこが大きな違いというか、日本にはあまり無い発想かもしれません。これが一番恐ろしいことです。

―土俵が一気に広くなっている訳ですね。今までと同じ相撲を取っていていいのか、といったことを感じます。

水野:メディア情報ではウルトラマンがそうでしたね。円谷プロダクションが、タイの人に権利を持っていかれてしまいました。日本以外は意識に入っていなかったのかもしれません。しかも、50年が70年になることによって、価値が、5分の7に増大する訳です。


―日本は、知財に関してはかなり遅れているのでしょうか?

水野:そうだと思います。発想がまだまだ違いますし、知財というものが大事で、それによって利益を上げても当然という発想が無いです。殆どの方は、知財に関わる我々を、管理部門管轄のコストとしか思っていないでしょう。特許はビジネスを守るためのコストだと思っている会社が多いと思います。
技術の秘密部分を昔はちゃんとお弟子さんだけに伝えていたから守ることができたけれど、今は時代が変わって、ノウハウを持ったお弟子さん(技術者)が1千万円×3年とかで韓国とか中国に雇われていきますね。
今の60歳過ぎの人たちは、高度経済成長期に、現場で鍛えられているので、とても使い物になるそうです。現場に合わせた能力が発揮できるから。韓国や中国の会社としても3年雇う価値はあるし、周りの技術・技能も向上します。

―日本の金融商品は、細かく緻密に計算して作って、それを説明しようとするから買う側は非常に難しいものを買うような意識になってしまいます。

水野:よく国民が文句言わないと思いますが、例えば税も本当にわからないです。控除に該当するしないとか、ルールがたくさんあります。議論もそういう方にいきます。ルールを決めようと。これは場合分けしようとか。この場合とあの場合はルールが違うとか。緻密すぎて専門家でないとわからないことが多々あります。

教育もそうですよね。文部科学省と分けてあって。例えば我々の知財教育は、あるいは創造教育ですが、小中学校から勉強して、経済学部とか商学部でも教えろと言っている訳です。しかし、知財がどういう風にビジネスに関係するか。ビジネスをやる人が何も知らないのは良くありません。でも文科省は誰が教えるのか、と。実務家ではない、と。金融商品も、相続とか税金とかもそうですけど、こういうことはやってはいけないとか、こういうことで事故に遭う人がいるなど。実務家教員でないと本当に役立つように教えるのは難しいのでは。

―元々学問ではない分野ですよね。

水野:学問ではなくて、生活の知識なのでは。
小さいころから触れさせるのが大事だと思います。我々のような実務をしている人とコミュニケーションを取るってことです。別に教員免許が無くても、どうしたら一般の人にわかりやすい言葉になるかとか考えながら話している訳ですよね。現在、実務家教員は特例扱いなので、なかなか認めてもらえません。


―15年くらい前ですが、70歳の農家の方がTPPに備えて毎日、英語を勉強しているというニュースがありました。日本の米がこれから海外で売れるからインターネットと英語の勉強をしていると。その話を聞いて感動した子が、それから英語を勉強して、今アメリカに留学しています。英語の先生が入試に出るようなことを教えたところで、子供の向学心に火は付かない。普通に大学を出て先生になった人では教えられないことです。

水野:結局我々の仕事は企業・経済が元気でないと成り立たないので、次々新しいことを考えてくれたり、元気な人と言うか、未来を目指す人が出てこないとだめなのです。10年後も今と一緒の世界だと、我々の仕事が無くなってしまいます。

これからは、何がどうなるかわからないですね。ベースが変わってくるので。車の社会もそうですが。人工知能なんて最近ですよね。自動運転もトヨタは負けちゃいけないとやっていると思いますけど、もう変わっている訳です。自動運転にするとしたら、エンジンよりもそこが一番重要になります。人が運転していないのにどうやって安全に運行するのかと。全体のスキームと言うか知財ポートフォリオが、がらっと変わります。

私の仕事は、結果が出るのに時間が掛かります。そうすると、今の時点と3年後のUCDAとでは違ってくると思います。ブランドも、当面は同じマークを付けましょうと言っていても、数年後には変わるかもしれません。インターネットでサービスを提供できないと生き残れなくなるかもしれないし、教育の世界に入るべきだと言う話がでてきたり。今UCDAに一番重要なのは、ノウハウ、技術情報でしょう。これがトッププライオリティです。

技術と言ってもビックデータのようなものもあるので、技術情報と少し狭く言いましょう。技術情報を含んだ価値情報。今は、秘密だったら守りますということになっている。鋼板の製造技術みたいに。それじゃ狭い。ビックデータだって公開情報の集まりだったりする訳ですが、秘密とかではなくて、価値ある情報もあります。

その次が広い意味でのブランド。アイデンティティと言ってもいいですが。社会に繋がった、社会的存在価値みたいなものですね。その次が、先程のITのようなもの。システムデザインとも言います。ビジネスモデルはデザイン的なんです。色々な意味でデザインという言葉が使えます。これが三番目ですね。その後に、技術的な、先程のIT技術の中でもデザインのもう少し具体的なもの。IT技術だと実際には衝突防止システムだとか、実演するところの技術。これが著作権だったり特許だったりします。
今は情報をどのように取捨選択してどのようにデザインをするかという時代です。

―「おもてなし」という言葉がありましたけど、相手にわかりやすく伝えるというのは、そこに通じるものがありますね。

水野:UCDAもチャンスが来る可能性があります。私は弁理士として、UCDAのような社会的価値があって、それを事業化して、社会に浸透させて、最終的にはカルチャー化させる、を応援しますし、見やすく、わかりやすく、伝わりやすくは、日本人にぴったりなのだと思います。カルチャーとして定着するかどうか、その先駆者がUCDAなのではと考えています。

UCDが日本のカルチャーになって、外国の方が旅行で日本に来て、「日本はわかりやすいよね」「看板もわかりやすいよね」「町も動きやすいよね」と。日本語が出来なくても動きやすいと、地方に行ってもUCDという話になってくると、何故だって話になって、日本にはUCDという考え方があって、UCDAがあると。そうしたら中国や韓国も「うちも同じようなものを作れ」って言うかもしれません。その時には、権利というか、どう繋ぐか、どこと組むかわかりません。

そういう意味では、しかるべきタイミングで、ブランドや、基本的な価値を守るための仕組みを持つことになります。もしかすると、ジャパンブランドになるかもしれません。やってみないとわかりませんが、見よう見まねでも、出来ないようにしておくのが大事です。

―これからも社会的価値を高めて、社会に浸透させて参ります。本日はありがとうございました。