プロフィール
松下 健一郎(まつした けんいちろう)

1992年3月慶応義塾大学理工学部卒業。同年4月千代田生命保険相互会社(現ジブラルタ生命保険株式会社)入社。
その後外資系生命保険会社の商品開発担当や香港勤務などを経て、現在はマニュライフ生命保険株式会社 常務執行役員チーフ・プロダクト・オフィサー。

マニュライフ生命保険株式会社は、「UCDAアワード2019・2020」の2年連続でアワードを受賞した。

「お客さまにこだわる」が特に大切な価値観

― UCDAアワード2020の受賞、おめでとうございます。2020年は新型コロナウイルスの影響で、いろいろとご苦労があったかと思います。まずは、貴社が保険事業をされるうえで大事にしていることをお話しください。

松下:マニュライフ生命は、カナダを本拠とする大手金融サービスグループ、マニュライフ・ファイナンシャル・コーポレーションのグループ企業で、グループ全体に共通の価値観があります。それは「お客さまにこだわる」「正しい行動を取る」「大きく考える」「共にやり遂げる」「責任感を持つ」「人としての思いやりを示す」の6つです。中でも「お客さまにこだわる」というのは、私たちが特に大切だと考えている価値観です。

― お客さまにこだわるという表現は興味深いですね。

松下:生命保険会社ですから、私たちはお客さまなしでは存在できません。だから、お客さまの声に耳を傾け、お客さまを理解し、お客さまに共感するということはとても重要です。お客さまにとって面倒なことをなくし、よりシンプルにして、お客さまの満足度を上げていく、そういうことを目指しています。ここがUCDAと非常に親和性があるところです。

― 「顧客本位の業務運営」が浸透する前から、お客さま第一を意識されていたのですね。

松下:保険は契約期間がとても長いですよね。買っておしまいではなく、ご加入いただいてからもお客さまに寄り添い、継続的なサービスをご提供することが求められます。当社では常にお客さまの目線で物事を考えることをお約束する「お客さまへの誓い」を策定して、取り組みを進めています。

― 今、いろいろな企業が高齢者対応を始めています。保険は契約期間が長いので、お客さまは契約中に年を重ねていく。保険業界は初めから高齢者対応に気を使っていた印象があります。

松下:そうですね、長い保険期間の間に変化していくお客さまのご家族の状況やライフスタイルに応じたフォローアップを心がけています。また、高齢でもご加入いただける商品も取り扱っているため、ご加入時の説明資料だけではなく親族の同席や必要な面談回数など加入プロセスも工夫しています。

お客さまの記憶に残りやすく作ることが必要だ

― UCDAアワード2020を受賞された「こだわり個人年金」は外貨建て保険のパンフレットです。外貨建て保険は非常に人気がありますが、その分トラブルも多いと聞いています。パンフレットを改善するうえで、特に気をつけたことはどのような点ですか。

松下:生命保険というのは、そもそも形のない、目に見えない商品です。けれども仕組みが複雑で、かつ契約期間が長期にわたるという特徴があります。そのため、加入時には理解していても、時間の経過とともに理解が十分でなくなることもあります。
その中でも外貨建て保険には、普通の保険にないリスクや費用があり、より複雑です。このような特徴をもつ商品のパンフレットなので、まずは難しい言葉、用語をなるべく簡単にする。それから一度に見せる情報量を減らす。そうして、複雑な仕組みを極力シンプルに説明できる形にしていく。頭に入りやすく、かつ記憶に残りやすくすることが必要だと思っています。

― わかりやすくするために工夫しなくてはいけないところがたくさんありますね。

松下:リスクや費用については、図やイラストを使って、視覚的にもわかりやすくしています。工夫をすることによって、忘れにくく、後で見直せばすぐに思い出せる、そのようなパンフレットを目指しています。

― 「ナゼ?ナニ?ガイカ」がUCDAアワード2019を受賞された時にも申し上げましたが、外貨建て保険を検討している人たちに対して丁寧に説明する。これを監督省庁や業界団体ではなく「マニュライフ生命という会社が解説動画を作ったこと」にものすごく意義があると思いました。

松下:ありがとうございます。外貨建て保険だけでなく、変額保険もわかりにくいと言われる保険商品のひとつです。商品のことだけではなくて、変額保険というのはどういう仕組みで、どういうリスクがあるかということを説明するような募集用資料を作る会社は増えてきており、業界全体でお客さまへわかりやすい説明と丁寧かつ十分な説明を行えるように取り組み始めていると言えます。

アワード受賞にはたくさんの副次的効果がある

外貨建保険のパンフレット(UCDAアワード2020受賞)

― 「こだわり個人年金」のパンフレットはシンプルさが非常に評価されました。社内の反応や評価はいかがでしたか。

松下:まず6年連続してさまざまな賞を受賞し、かつ2年連続でアワードを受賞していることによって、制作を担当している社員のモチベーションは非常に上がっています。やはり社外の第三者機関から客観的に評価していただき、高いご評価を受けると、作っている側には自信にもなりますし、達成感もありますね。

― それは当協会としてもうれしいですね。

松下:それからいろいろと副次的な効果があって、例えばアワードにエントリーし、フィードバックを受けることで、社員のスキルも上がってきます。さらに、それによってエントリーしていない他のパンフレットの質も上がっていきます。制作物全体の質が上がるというのは、会社としては極めて大きな価値です。
また、パンフレットを作るときには、間違いや不適切な表現がないかチェックしなければいけません。何重にもチェックするのですが、お客さまにとってわかりやすいパンフレットは、チェックがとてもしやすいのです。結果的に制作物を審査するスタッフの負担も減って、業務効率化につながっています。

― それは素晴らしい副次的効果ですね。

業界一デジタル化されたお客さま中心主義の企業になる

― それでは次の質問ですが、貴社の今後の取り組み、目指す方向についてお聞かせください。

松下:マニュライフ・グループにはひとつの目標がありまして、それは業界でデジタルとお客さま分野でのリーディングカンパニーになることです。マニュライフ生命は、まさにそれに向かって変革の真っ最中です。これまで弊社の強みだった中小企業マーケット、外貨建ての資産形成マーケットでの存在感を、今後も持続可能なものにしていく。それだけではなく、お客さまに対する価値提案を多様化、高質化して、中小企業とその経営者に対する金融と保障、個人向けの資産形成のソリューションスペシャリストになる。そのようなことを目指しています。

― 素晴らしい目標ですね。

松下:そのためには、お客さまの変化するニーズを的確にとらえ、そのニーズに対して適切な商品を提供することが重要です。さらに、生命保険ではカバーできないニーズに対しては、例えば他業界とのコラボレーションによって付帯サービスを提供し、お客さまの課題解決に資することを考えています。また、それをお客さまにどうお届けするかも非常に重要ですね。

― そこにデジタル化が関わってくるのですね。

松下: UCDAの活動とも関わってきますが、お客さまの人生に寄り添ったコンサルテーションやアドバイスを、コールセンターやSNSなどを含め、いろいろなタッチポイントを使って提供していくことを目指しています。そのためには、もちろん商品も、サービスも、お客さまとのタッチポイントも今後より一層注力していこうと思っています。

あのアワードを連続で受賞しているの!と言われたい

― 最後に、UCDAに対してご意見・ご要望をお願いします。

松下:弊社は3年連続のアワード受賞を狙っています。アワードがもっと注目され知名度が上がって、「えっ!あのアワードを3年連続で獲っているのですか!!」と言われるぐらいになると非常にうれしいです。

― 多くの企業トップの方から、有名になってくれと言われています。私たちも、それを何とか努力して達成しなければいけないと思っています。

松下:私たちも宣伝します。私たちはビジネスを成長させたいですから、この取り組みがブランドの向上に直接効果があれば、会社にとってより価値のあるものになると思います。10年連続受賞を目指したいと思っています。

― 協会としては、認証マークを様々な業界に広げていきたいと考えています。今は保険・金融機関の各社様の制作物につくようになって生活者の目に触れる機会は増えました。さらに例えば食品のパッケージなどにもマークがつくようになれば、UCDAの認知度も上がっていくのではないかと思っています。

松下:期待しています。

― 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。